機動戦士Vガンダム
🔴機動戦士Vガンダム
『機動戦士Vガンダム』(ヴィクトリーガンダム)は、1993年4月2日からテレビ朝日系列で放送されたテレビアニメ。「Vガンダム」「Vガン」と略される。
💚スタッフ
◆原作:矢立肇、富野由悠季
◆総監督:富野由悠季
◆キャラクターデザイン:逢坂浩司
◆メカニックデザイン:大河原邦男他
◆音楽:千住明
◆アニメーション制作:サンライズ
◆製作:テレビ朝日、サンライズ
◆放送局:テレビ朝日他
◆放送期間:1993年4月2日 - 1994年3月
◆話数:全51話
💚制作
『機動戦士ガンダムΖΖ』以来となるテレビシリーズ第4作目。SDガンダム世代の小学生に受け入れやすくするため、主人公の年齢は13歳と従来のシリーズから引き下げられ、同じ理由から旧作ガンダムを知らない世代でも理解できるよう、旧作とはほとんど関連を持たない作品として作られた。
これまでのテレビシリーズでは、物語の出発点がスペースコロニー(宇宙)であったのに対して本作では地球となっているが、これは「ガンダム=宇宙」というイメージを払拭するためである。また『機動戦士ガンダム』より始まる「宇宙世紀」シリーズ作品としては最後年にあたる。
監督の富野由悠季は放映当時のインタビューにおいて、本作はテレビアニメの原点に戻って、楽しいロボットアニメ、かつ当時の子供に流行のRPGを意識し、主人公が中心のシンプルかつマンガチックな作品を目指していたと答えている。このため、物語序盤は明朗活発な主人公「ウッソ・エヴィン」が幼なじみの「シャクティ・カリン」や憧れの女性「カテジナ・ルース」を守るためにガンダムに乗り込み、トリッキーな戦法で敵を打ち負かすというシンプルな活劇としての方向付けがなされていた。
しかし、物語が進むにつれ、宗教を背景とした民族主義など重いテーマに比重が置かれるようになっていく。序盤に部下をガンダムに殺され復讐に燃えていた敵の部隊長が、ガンダムのパイロットがまだ子供であることにひどく驚き「子供が戦争をしてると、みんなおかしくなってしまう」と言い残して自決するが、ストーリーが進むにつれ、その言葉の通りに登場人物の多くは戦争という特異な環境にさらされ続けた結果、精神的に追いつめられていく。
たとえば、捕虜にした主人公に拷問と称して手錠をかけたまま2人で入浴し、自分たちの仲間になるように強要する女性や、女性の上司が主人公を惑わすために女性部隊に裸に近い格好でガンダムと生身で戦うように強要するなど、奇怪な行動をとるようになっていく。また、ギロチンで主人公の仲間の首がはねられたり、敵のパイロットが非武装の民間人の虐殺を楽しむような描写や、戦闘の際に機体を破壊するのではなく、コクピットを潰したりビームサーベルで中のパイロットを焼き殺すなどの残酷描写がある。
◆音楽
音楽は千住明が担当し、本作のサウンドトラックは、アニメとしては当時珍しいフルオーケストラを起用した。スタッフはもちろん作曲家を褒めることもほとんどない富野は、曲の収録風景を見学に行って「幸せだ」と感じたという。千住は「Vガンダムを担当するに当たって、自分のもつ引き出しをすべて出し切るつもりで臨んだ」と語っている。
また千住はアルバム「機動戦士Vガンダム〜交響組曲第二番 THOUSAND NESTS」を自身の代表作として語っている。オリジナルサウンドトラックはCDで3枚が発売されており、千住の手がけたサウンドトラック以外にも、オープニングテーマ「STAND UP TO THE VICTORY〜トゥ・ザ・ヴィクトリー〜」のアレンジ版や、挿入歌「ひなげしの旅のむこうに」「いくつもの愛をかさねて」などが収録されている。
◆商業的事情
当初は『勇者エクスカイザー』の後番組として『機動戦士ガンダムF91』のテレビシリーズ化が予定されていたが、同作の興行不振により頓挫し、企画を練り直した上で本作が制作された。本作はSDガンダムを支持する小学生などの新しいファン層を開拓することによって、当時マニア化、高年齢化していたガンダムファン層の活性化を図る目的があった。
しかし難解な内容のため、本来の対象であるはずの小学生からは支持されず、結局旧来のガンダムファンがファンの中心となり、関連商品の購買層も高齢化した。本作のビデオソフトの当時のアンケートによると当時の購買層は20歳代前半の男性で、ちょうど中学生の頃に『機動戦士Ζガンダム』『機動戦士ガンダムΖΖ』を見ていた世代に当たるという。
本作が放映された1993年はリアルガンダムのプラモの売上が倍増しており、落ち込み気味だったSDガンダムの不振を補い、バンダイ模型部門の売上を伸ばした。しかし販売個数としては1000万に満たず、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』が公開された1988年と同程度に留まり、さらに本来取り込みを狙っていた小学生層の支持獲得にも失敗した。
特に後者が大きな要因となり、次作として企画されていた『ポルカガンダム』は製作中止。結果としてそれまでの宇宙世紀シリーズとは全く異なる新シリーズである『機動武闘伝Gガンダム』への制作につながっていくことになる。
💚あらすじ
宇宙世紀0153年、地球圏を統治している地球連邦政府は形骸化し、宇宙に存在する各サイドは連邦政府の統制を離れた独自の道を歩み始め、各地で紛争が勃発する宇宙戦国時代に突入していた。
そのなかでもサイド2のコロニーの一つ、アメリアではギロチンによる恐怖政治と、女王マリア・ピァ・アーモニアによる救済を基調とするマリア主義が急激に民衆の支持を獲得し、ザンスカール帝国として政府から独立を宣言していた。ザンスカール帝国はサイド2のほとんどのコロニーを併合した後、地球に向けてベスパ(帝国軍)の地上部隊イエロージャケットを派遣。ヨーロッパの都市ラゲーンを制圧することで地球侵攻のための拠点とし、その影響力を高めていく。
だが、弱体化した政府が手をこまねき戦火が広がっていくことに業を煮やした人々は、民間抵抗組織リガ・ミリティアを結成。独自の高性能MS(モビルスーツ)を開発するまでに至っていた。
戦火が忍び寄るヨーロッパ地区ポイント・カサレリアでパラグライダーを操っていた13歳の少年「ウッソ・エヴィン」は、イエロージャケットのMSシャッコーとリガ・ミリティアの小型戦闘機との戦闘に巻き込まれる。生き延びるため必死の行動に出たウッソは、シャッコーのパイロットクロノクル・アシャーを引き摺り落としてMSを奪取し、生還。
その後、初恋の少女カテジナ・ルースを救助するためにイエロージャケットとMS戦を繰り広げ、勝利を収める。かつてのニュータイプパイロットを彷彿とさせるその活躍を目の当たりにしたリガ・ミリティアの面々は、反攻のシンボルとして作り上げたヴィクトリーガンダムのパイロットとしてウッソを迎え入れ、ウッソもまた幼馴染の少女シャクティ・カリンらを守り、帝国の侵攻を阻むために戦いに身を投じていく。
カテジナを誘拐され、増援として合流したシュラク隊を幾人も失っていく過酷な戦場にあっても、天才的なセンスによって生き抜いていくウッソは、やがて行方不明の両親がリガ・ミリティアの中枢で活動していることを知り、戦線の移動に伴い仲間たちと共に宇宙へと上がる。
更に苛烈さを増す戦いの中、運命のいたずらか、シャクティが政争によって生き別れとなった女王マリアの娘であったことを知るウッソたち。更にクロノクルに自分の居場所を見出したカテジナが、ベスパのMSに乗り込んで襲い掛かる。それでもなお、仲間を守るために戦い続けるウッソは、母の作った最新鋭MSV2ガンダムを受け取り、その光の翼でリガ・ミリティアを勝利へと導いていく。
そしてリガ・ミリティアの指導者であったウッソの父ハンゲルグ・エヴィンの尽力もあり、ついに地球連邦軍の有志艦隊の参戦を取り付けたのと時を同じくして、ザンスカール帝国もまた最終兵器であるサイコミュ要塞エンジェル・ハイロゥを稼働させ、全人類の衰退に向けて動き出す。いくつもの思惑が絡み合い混迷を極める戦場で、エンジェル・ハイロゥのキーとなる使命を受け入れたシャクティは、その秘めたる力をもってしてザンスカール戦争に終結をもたらそうとする。
エンジェル・ハイロゥが連邦、リガ・ミリティア、ザンスカール帝国全ての兵士を帰るべき場所へと昇天させていく中でウッソは、なおもそれぞれの妄執に突き動かされるクロノクルとカテジナを退け、全てを終えたシャクティと共に故郷のカサレリアへと帰るのであった。
💚主題歌
◆オープニングテーマ
「STAND UP TO THE VICTORY 〜トゥ・ザ・ヴィクトリー〜」
作詞 - 井荻麟、みかみ麗緒
作曲 - 川添智久
編曲 - 神長弘一、川添智久、井上龍仁
歌 - 川添智久
コーラス - 田村直美
「Don't Stop! Carry On!」
作詞 - 西脇唯
作曲 - 小泉誠司
編曲 - 福田裕彦
歌 - RD
◆エンディングテーマ
「WINNERS FOREVER〜勝利者よ〜」
作詞・作曲 - 長友仍世
編曲 - 板倉雅一、infix
歌 - infix
「もう一度TENDERNESS」
作詞 - 浜口司
作曲 - 安宅美春
編曲 - 葉山たけし
歌 - KIX-S
◆挿入歌
「ひなげしの旅のむこうに」
作詞 - 井荻麟
作曲・編曲 - 千住明
歌 - 小峰公子、黒田由美
「いつかまた生まれた時のために」
作詞 - 小峰公子、井荻麟
作曲 - 保刈久明
編曲・歌 - karak
「生まれてくるものへ」
作詞 - 井荻麟
作曲・編曲 - 千住明
歌 - ACEILUX
「いくつもの愛をかさねて」
作詞 - 井荻麟
作曲・編曲・歌 - 岩崎元是