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「私の好きなアーティスト」day5ローレンス・オリヴィエの「演技について」

ハムレット 役者ローレンス・オリヴィエが著した「演技について」。新品同様の美品で、糊付けされたパラフィン紙のカバーは今でも外さないまま。なので、せっかくのお顔が不鮮明のため中の同じ写真もアップしておきます。神保町の古書店を演劇好きの友人と回った時、買いました。
「三番目の槍持ちには三番目の槍持ちの人生がある」は、私が大好きな言葉です。以下、2008年5月20日に書いたブログの再録です。

友人に連れられていろいろまわった神保町でふらっと入った1軒の本屋さんでみつけたこの本。

世界の名優・ローレンス・オリヴィエが語る「演技について」

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買ってから、1年の「つんどく」状態から1歩抜け出し、手にとったらものすごく面白くて、すぐに読み終えてしまいました。

彼が語るシェイクスピアの作品の数々。そこにどんな思いをこめ、いかに演じたかを知るのは、本当に楽しいことだ。

「ハムレット」にリアリティーを持たせたかったこと。
若いときに「リア王」をやった時のこと。
「ヴェニスの商人」シャイロックの造形について。
イギリスが戦時体制の時に演じた「ヘンリー5世」にこめられたもの。
自分の前に「ハムレット役者」と言われ、語り継がれてきた名優たちのこと。
彼らの演技をリスペクトし、その演技プランの核心を理解するとともに、
「この系譜につながってやる」という野心と、
自分ならではのオリジナリティに対する飽くなき探究心。

映画に進出したときのこと。
映画と舞台とのちがい。
映画でなくてはできないこと。

役作りのために日々どんなものを見、読んでいるか。
ある時は場末の芸人。ある時は美術館の一枚の絵。

古いものにも新しいものにも、拒否反応を示さず、受け入れ、おもしろがり、しかし自分らしさは絶対にぶれない。その懐の深さと芯の強さの共存が魅力だ。

一番感銘を受けたのは、前にもちょっと書いたけど
「3番目の槍持ちは、3番目の槍持ちとして」その舞台の主人公であると信じなければならない、というくだり。
舞台の板に上がれば、登場人物の数だけ人生があり、
全員が生きるように演じて初めて舞台が成功する。

もう一つが、
「体力がある時には若すぎるし、その年齢になった時には年をとりすぎている」のがリア王、というセリフ。
平幹二郎がやったのを見ていたから心に残った。すごーく体力のいるお芝居のようです。
逆であり、また同じでもあるのが「ハムレット」。
見た目の年齢で配役は決まることが多いけど、若者には決して理解できない老人のような哲学がある。
藤原竜也のハムレットが若い肉体に老人の精神、と思った私は正しかった!
そして、市村正親のハムレットが50歳のハムレットながら、演じるほどに若くなり違和感がなくなっていったあの感触も。

市村正親がやる「キーン」についても書いてあります。
ハムレット役者の系譜としての、バーベッジ→ギャリック→キーン→アーヴィングの話はとても面白かった。長い歴史の中で、彼らは直接の師匠と弟子ではないけれど、前の名優を「見たことがある」人が、それを自分なりに後世に伝えている、というくだりは特に。次の名優は、前の名優とまったく個性を異にするけれど、前の名優のよさ、演技の精神は、きちんと受け継いでいる。その上での、オリジナリティであり時代性なのだ、と。名優は同時に有能な評論家であり、分析家であり、だからこそ、多くの名優は演出もやるんだなー、と、思いました。

演劇が好きな人は必読。
同時代の役者たちとの裏話もあり。

あと、
大好きな「ハムレット」の映画だが、やっぱりたくさんカットしてるのねー。フィルムだけでも残っていれば、今なら「特典映像」でDVD2枚組みで発売されるのにー。

彼の「リチャード3世」観てみたい~。
「ヘンリー5世」も観たい~。(2008年5月20日)

「ハムレット」については、こちらもどうぞ。

「読んではいけないシェイクスピア 第一編 ハムレット」


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