歯医者に行ってみる
野生においては歯の健康=寿命だという話を聞いたことがある。
歯が抜ける→モノが食べられなくなる→ご臨終 ということらしい。
幸いにして入れ歯や差し歯といった歯科技術が発達したお陰で、現代社会においては歯が無くなる=死という等式は成り立たなくなった。
とはいえ、食が楽しめなくなることは大変ショックなことだし、おいしいご飯を自分の歯で食べたいという気持ちは大多数の人に賛同してもらえると思う。
私の父もそのうちの一人で、最近奥歯がぐらぐらになってきたので悲しい、という話を聞かされた。親の老いを感じるこちらもまた少し寂しい気持ちになった。どうか長生きしてほしい。
--
そんな父に触発されたわけではないのだけれど、最近冷たいものが歯に染みることがやけに多くなってきており、少し心配に感じている。いわゆる知覚過敏の症状である。
冬になって水道水が冷たくなったこともあり、歯磨き後のうがいもお湯でないとつらいレベルで、歯と歯の間に舌を当てると若干の空洞も感じられた。
(ああこれは虫歯かもしれんなぁ、でも歯医者行きたくないなあ)とうじうじ呟いていたら友人から「行け」と言われてしまったので、勇気を出して渋々行くことにした。
--
虫歯だった。それはもう完璧な虫歯で。神経に到達している可能性があると言われた。
「神経に到達していたらどうなるんですか」と先生に訊ねてみると「痛みで夜も眠れない状態になるので神経を抜きます」と言われた。
「神経を抜くとどうなるんですか」と訊ねると「歯の寿命が短くなります。歯が割れやすくなって、最悪差し歯を入れることになります。正直良いことはないです。」と言われた。はぁあん。
レントゲンではその判断・決定ができないということだったので、麻酔を注射した後ドリルでゴリゴリし、患部を確認、虫歯を除去してもらった。
先生が言うには、視認できる限りは幸いにして神経に到達していないようで、プラスチックの被せ物をしてその日の施術は終了した。
症状が改善したかちょっと様子を見ながら、10日後くらいに再診して、問題なければ、金属の詰め物に変えるということだった。
ひとまずは安心だと思って、その日は寿司を買って帰った。
食べ終わって、ふぅそろそろ寝るかと歯磨きをした。
やれやれ、ようやく冷水でうがいできるや、と思って冷たい汲みたての水道水を口に含んだ。
……ズキズキ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?