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落とす、落とせぬ君が好き

「ルシファーさまっ!今日という今日こそは私と寝てください!」
「嫌だ。」
「もーっ!!なんでですかーー!!」

とある孤島の古びた城。人間界とは似て異なる作りをした魔界のその地に彼らはいた。堕天使ルシファーと淫魔サキュバス。

ルシファーの見た目は生きてる年数とは裏腹にとても若々しく長く艶やかな黒髪を持ち、背中に生えた天使の名残りである2つの羽は黒く染まっている。ローブのような服を身に纏った彼から発せられるオーラは妖しくも眩いアメジストのような雰囲気である。かたや、サキュバスの方はというとピンクとシルバーが混ざったようなグラデーションの長い髪をツインテールにし、ボンキュッボンという言葉がぴったり当てはまるメリハリのある女性らしい体型を強調するような黒のゴシックなワンピースに赤いコルセットをはめ網タイツにハイヒールのロングブーツというセクシーな格好である。

サキュバスがこの城にやってきたのはつい最近のことである。サキュバスは100歳になると、人間界に赴きサキュバスとして人間の男を誘惑し精を奪うのだが、彼女は大層な方向音痴で人間界に行くはずがなぜかルシファーの城があるこの島まで辿り着いてしまい帰るに帰れずルシファーの元に置いてもらっているというわけだ。


「初めてお前を拾った時も思ったが、サキュバスのくせに不器用だな」
「あっ!!ルシファーさま、そういうこと言っちゃいます〜??サキュバスがみんなエッチで器用で誘惑上手だと思ったら大間違いなんですからね!!こちとらサキュバス処女ですよ!へーんだ!!」
「サキュバス処女ってなんだ」
「魔界には種族ごとに学校のようなものがあるでしょう?オークにはオークの、ガーゴイルにはガーゴイルの、サキュバスにも立派なサキュバスになるための育成機関があるわけです。私たちの場合は人間の男についての座学、誘惑の仕方、実際の精の取り方などを勉強して訓練するわけですが、訓練といってももちろん相手は人間や他の種族ではなく、インキュバス、私たちサキュバスと対になる存在で練習するわけです。ませてる子だとそこで学んだことをすぐにオークや他の種族で試して練習するんですが、私は学校でしかした事がなくて、実践経験がないというか。その…いわゆる耳年増みたいな、知ってるけど実際の相手にしてないことをサキュバス処女と言うんです!!!!」
「ほう、じゃあお前まだ抱かれたことないのか」
「だっ…!!ルシファー様のばかっ!!!!セクハラ!!!!」
「お前が俺を誘惑するのはセクハラじゃないのか?」
「ぐぬっ…!それとこれとは別というかですね…」
急に歯切れの悪くなったサキュバスを見てクックッと意地悪にルシファーが笑う。
「今、この城にいるのはお前と俺の2人だけだ。お前の誘惑ごっこにせっかくだから付き合ってやる。まあ、誘い方に色気のかけらもないおまえじゃ難しいだろうがな」
「はあああ〜??カチーンときちゃいました私!決めましたよ、ルシファーさま!!サキュバスの意地にかけてあなたを絶対落として精を奪ってみせますから!」
「ほう。やれるもんならやってみろ、お子さまサキュバス」
ルシファーはふくれっ面のサキュバスのおでこにデコピンを食らわせるとまたクックッと楽しそうに笑った。

作・中神真智子


2020/3/30の夜中にTwitterで募集したリプライのお題を小説にするシリーズ第3弾です。今回は橋爪先生からいただいたお題『ルシファー×サキュバス』です。ラノベのようなポップな作品にしてみました。

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