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2023/1/24-2/7 合宿免許in鳥取 #5

鳥取県の倉吉にぼっちで免許を取りに行ったときの話。遠ざかりゆく記憶をすこしでもつなぎ止めるために書く。



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前回までのあらすじ

いろいろありつつもなんだかんだ鳥取ライフを適度に満喫していたなか、とある二つのイベントが迫ってきていた。

二つのややビッグイベント

鳥取にきてから一週間くらい経った頃だろうか。すっかり鳥取ライフに順応しきっていた僕に、二つの転機が訪れた。ひとつは「宿の引越し」、もうひとつは「公道運転」である。
それぞれ、そこまで取り立てて騒ぐほどではないけれど、地味にライフスタイルの変化を伴うものであった。

さらばこんにち館

エモな看板。めっちゃ好き

当初の宿である「こんにち館」は、車校併設の男子寮のかわりに宿泊していた、いわば仮の宿であったことは(その2)で触れた通りである。それがこのたび、ついに寮への移動と相成った次第だ。
やっと希望通りのところに泊まれるのだから、本来は喜ぶべきである。しかし、手放しで喜べない理由もあった。

ひとつは、「文明」、「自由」と隔絶されてしまうから。倉吉の市街地のど真ん中に位置するこんにち館と比較して、車校は街からはやや離れた場所にある。寮での宿泊は、すなわち生活が車校内で完結してしまうことを意味する。いままでは教習が終わるとスクールバスに乗ってシャバの世界へと戻ることができたが、今後はそうはいかない。コンビニですらも距離があるため気軽には行けなくなる。
さらに、寮というのは車校によって完全に「管理された」空間である。門限の管理は厳格に行われるし(しかも10時とかなり早い)、飲酒などいうまでもなく禁止。シャバのこんにち館で「自由」の蜜の味を知ってしまった僕にとっては、それらは息苦しく感じられた。

もうひとつは、友人といられる時間が短くなるから。スクールバスという密室は、時間こそ消費するものの、仲良くなった2人以外にもいろいろな人と接する(必ずしも喋るという意味ではない)貴重な機会として機能していた。それが失われるのは何気に大きい。

以前にいわく付き的なニュアンスで紹介したこんにち館での生活も、一週間も経てば随分と愛着が湧いてしまっていたのである。

もちろんいいことだってある。バスでの移動時間がなくなるため、その分自由な時間は増えるし、朝早く起きる必要もなくなる。空きコマ時間に自室に戻って休んだり寝たりすることもできるようになった。単純な利便性だって段違いである。たとえば、こんにち館は夜しか入浴できないのに対し、寮では原則いつでもシャワーを浴びることができる。朝シャン派の僕にとってはうれしいことだった。

そんな複雑な感情をもって寮に移り住むことになったわけだが、ここで寮の様子をすこし紹介しておこう。

窓口。外出の際は名簿に名前を書く。
談話室には漫画やオセロなんかもあった
一人部屋

寮にはいわゆる相部屋タイプ個室タイプがあり、僕は後者があてがわれた。もともと二人用として使われていたのか、とても広く快適で、よさげなホテルに泊まる友人2人もしきりに羨ましがってくれた。僕が彼らに勝利した唯一の瞬間だった。
窓を開けて寒い空気が入ってくるなか布団にくるまる、みたいなのが好きだった覚えがある。それでテレビをぼーっと眺めるのが本当に最高だった。これは自分用のメモだが、「メイクもヘアセットも全部あなたのためッ」という当時TikTokでよく聞いた曲がずっと脳内ループしてた。肝心の曲名と歌手は知らない。
そんなこんなで、こちらでの生活もしばらくするとすっかり慣れきってしまっていた。喉元過ぎれば熱さ忘れるとはまさにこのことか。まあ人間そんなもんだよね。

シャバに放たれしイキリ暴走教習車

ところで、車校のカリキュラムというのは第一段階第二段階に分けられる。運転教習については前者は教習場内のみ走行だが、後者は仮免許を取得したうえで公道を走ることになる。

仮免許取得の試験に合格した我々は第二段階へと入り、ついに公道を走ることになったのだが、初めての公道というのはなかなか緊張するものだった。

とある日の教習場。
大山が一望でき、景色も抜群。

教習場内で走っていた頃は「公道なんざ80キロでぶっ飛ばすぜベイベー!(マサオくん風)」とか思っていたし、無線教習(場内を教官の添乗なしに運転する教習)の終盤など、教官がいないのをいいことにイキって前の車に煽り運転&大きく開いた後続車との車間距離を見て喜ぶくらいの威勢の良さだったが、いざ公道に出てみると、社会的責任はもとより、誰か人を轢いたりしないかとビクビクしてせいぜい4,50キロ出すのが関の山だった。
感覚としては、動物園の温室でぬくぬく育てられていた動物が、突如野生の世界へと放り出されたのと同じような感じか。井の中の蛙ともいうと思う。ちなみに無線教習の件はしっかり教官に注意された。

同時に、公道に出ることで、クルマを動かすという行為が、教習場内での「操作」から道路での「運転」へと、社会との結びつきをもって感じられたのは新鮮な体験だった。また、「俺は実際の移動手段としてこのでっかいクルマをうごかしてるんだ!」という妙な厨二心も刺激された(いつも通り)。
まあ、オートマのくせに何抜かしてんだという感じだが。

雪はこんな感じ。
路上は除雪されているが、積雪がちょいちょいはみ出している。

公道で運転するにあたっての懸案事項のうちの一つにがあるが、その頃には当初のドカ雪も除雪&だいぶ溶けており、スリップやスタックの心配はそこまでなかった。
ただし、交差点を含めた路肩にはいまだに積雪が多く、道幅が狭くなっているため、信号待ちのための停車時などには対向車の通行を考慮したうえで停止場所を決める必要があり、その間合いのようなものの習得には苦労した。これは豪雪地帯特有のスキルだが、東京でも役に立つところはあると思う。

また、路上を初めて走ったことで、運転者視点で道路交通をみることができるようになった。気付いたことをいくつか挙げてみようと思う。

自転車クッソ邪魔
法令で路肩を走るように指定されているのはわかるが、それでも邪魔。今後自転車に乗るときは、せめて蛇行運転だけはしないように気をつけようと思った。

恐怖のジジババミサイル
彼らは車道上に突如出没したり、車道にはみ出してなにやら作業をしたりする。とある教官が「気温10℃以上の曇りの日は奴らの出没確率がアップする」とか言ってた。ゴ○ブリかよ。

・車線変更がムズイ。
車線変更は交差点を右左折する際に多用されるのはご存知だと思うが、これが思っていたよりも難しい。手順としては、
ミラー確認→後方目視確認→ハンドル操作
というものなのだが、これらに加え、隣車線の車間距離と交差点までの距離を確認し、適切なタイミングでハンドル操作を行わなければいけない。いわばマルチタスクである。
道路が比較的単純な倉吉でさえ難しいと感じたのに、東京などの大都市は言うまでもない。これが理由で、都会の運転はいまだに苦手だ。

免許持ってる人超すごい
運転操作自体が簡単ではないのはもちろん、事故はいつ起こるかわからないという意味で、つねに社会的死亡と隣り合わせなのに平然と運転できるのはすごい。特に僕の友人知人はスピード狂が多いので尚更。いざ自分が運転してみると交通法規を遵守して運転するのだけで精一杯なので、他人の運転の乗り心地を偉そうに論評(そこまでではないが)していた過去の自分が恥ずかしくなった。

ざっとこんなところだろうか。本当に冗談抜きで、運転し始めの頃は一般車の運転手が全知全能の万能者のように見えた。

どうでもいいが博士の車はマニュアル車だった。

ちなみに、第二段階の教習内容には「経路設計」「高速教習」「方向転換」「縦列駐車」も含まれる。
前者二つは自分で調べてもらうとして、後者二つについてすこし解説しておこう。
二つとも、簡単にいえば駐車のようなもの。以下の動画を観てもらえばどんなものかわかるだろうか。

これらのうちの一つをランダムで卒業検定で課されるため、どちらも必ずマスターしなければいけない。まだ車の免許を取ったことがない人は、難しそうと思う人も多いだろう。
しかし、教習場内に限っては意外とそんなことはない。なぜなら、操作方法は完全にマニュアル化されているからだ。

親切な教官がこのように書いてくれた

あらかじめ決められた手順をしっかり踏めば、よほどのことがない限り失敗することはない。器用さに自信がない人も、ぜひ安心してほしいと思う。

それより問題なのが、実際の駐車場での駐車。
こちらは教習場とは異なり、失敗したら他人の車を破損することになり、取り返しがつかない。とくに、事故った老人が言いがちな「ブレーキとアクセルを踏み間違えた」をやると確実に豚箱行きである。しかし、教習では一切やらない。
個人的には、もうすこし駐車のカリキュラムを増やしてほしいな、と思ったりもした。

(余談。近くに高速道路がない倉吉では、高速教習はこれまたシミュレーターで済ませるのだが、インターチェンジからの合流の際に友人の2車線先のトラックに激突していたのは流石に笑ってしまった。本人が割とガチで凹んでいるのも面白かった。それもあり、僕はいまだに高速に乗ったことがない。本人見てたらすまん。でもシミュレーターでよかったよ、ほんとに。)

まあこんなところだろうか。第二段階は第一段階と比べるとよりタイトな時間割になるが、流れるように時間が過ぎ去っていった。

気付けば3900文字。今回は教習内容についていろいろ熱く語ってしまった。次回は日曜の全休日に砂丘に行った話とその他楽しい思い出について。

ここまで読んでくれてありがとうございました。

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