スターオーシャン6 THE DIVINE FORCE 宇宙を舞台に描かれた進化の物語

スターオーシャン6 THE DIVINE FORCEを前日クリアしたので、レビューを書こうと思う。ちなみに、レイモンド編のみクリア・クリア後のエンドコンテンツには手つかずの状態なので、その辺は留意していただきたい。


概要 シリーズのおさらい

レビューを始める前に、スターオーシャンシリーズについて軽くまとめておきたい。スターオーシャンシリーズは、1996年にスーパーファミコンで発売された第一作を皮切りに、最新作である本作までの計6作と、いくつかの派生作品のある、RPGシリーズである。特徴は、アクション要素の強い戦闘システムと、アイテムクリエイションを始めとした自由度の高いシステム、そしてSFをテーマとしたストーリーである。発売元はスクウェア・エニックスで、開発はトライエース。このトライエースは、テイルズオブファンタジアを開発したウルフチームから、何人かのスタッフが退職して設立した会社であり、テイルズとはある意味兄弟のような関係と言えるかもしれない。前置きはこの辺にして、本題に移りたいと思う。

ストーリー:悪くはないが、演出に課題がある

今作には、主人公が二人存在する。ゲームを開始したプレイヤーはまず、男性主人公のレイモンド・ローレンスと、女性主人公のレティシア・オーシディアスの二人から、操作するキャラクターを選ぶ。レイモンドは、高度な文明を持つ「惑星ベグアルド」にて、宇宙の運送業に従事している青年であり、レティシアは、中世文明レベルの惑星「アスター星系第4惑星(以下、アスター4号星)」に存在する国家、オーシディアス王国の王女である。このように、全く生まれの異なる二人の男女が、とあるきっかけで出会い、やがて宇宙全土を巻き込む大いなる脅威に立ち向かう、というのが基本的なストーリーとなる。

自分がプレイしたレイモンド編をもう少し詳しく説明する。一族にて運送業を営むレイモンドは、輸送艦イーダスを率い、ある貨物を輸送していた。航海の途中、突如として銀河連邦に所属している戦闘専用艦アストリアから襲撃を受ける。命からがらイーダスから脱出したレイモンドは、クルーのクロエとともに、未開惑星「アスター4号星」へと退避するも、着陸前にクロエとはぐれてしまう。なんとかアスター4号星に着陸したレイモンドは、そこでレティシアと彼女の従者であるアベラルドと出会う。クロエを探すため、レティシアを行動を共にするレイモンドは、ある遺跡でイーダスに積み込んでいた積み荷を発見。それは自らを「DUMA」と名乗る自立型の支援ポッドであり、DUMAとの出会いをきっかけに、やがて銀河を舞台とした壮大な戦いに身を投じることとなる、というもの。

序盤はアスター4号星の二大国家、オーシディアス王国とヴァイル帝国の微妙な関係を中心にストーリが展開していくが、中盤以降はさらにDUMAを中心に銀河連邦の思惑も絡み、部隊が宇宙へと移りスケールも大きくなっていく。とは言え、序盤から伏線はしっかりと張ってあり、唐突感はなくスムーズに状況が変化していくので、プレイヤーを置いてけぼりにするような印象はない。ストーリーの内容も、テーマとしてはありきたりだが、矛盾点や未消化の伏線などは特に見られず、場面ごとにキャラの見せ場もしっかりと用意されている等、ストーリー自体のレベルは決して悪いものではない。

惜しいのは、演出面が弱いこと。全体的にキャラの動きが少なく、派手なアクションシーンや感情表現などがみられず、どうにも物語に没入しにくい。大げさな表現が常に素晴らしいというわけではないが、リアルなキャラクターで物語を創るなら、ある程度の動きがないと逆に不自然に感じるものだ。
自分はプレイ中、「もう少し頑張ればもっとよくなるのに!」というもどかしい思いを多くの場面で感じていた。また、主人公を二人にした弊害として、レイモンドとレティシアが別々に行動する際には、片方の視点からしか情報を把握できないのも気になる。ストーリーの理解を妨げるほどではないが、合流した際にキャラクター同士の関係がいつの間にか変化していることもあり、戸惑いを感じることがあった。

戦闘:DUMAを使ったスピード感のあるバトル

次に戦闘システムについて。個人的に今作で最も出来が良いと思える部分だ。まず今作は、シンボルエンカウント方式であり、広いフィールドに敵モンスターがうろついている。敵モンスターに近づき気付かれる、あるいはこちらから奇襲をかけることにより戦闘開始となり、フィールドが切り替わることなく、シームレスに戦闘へ移行する。戦闘はアクションバトルであり、四人の戦闘参加メンバーのうち一人を操作する。操作キャラクターはいつでも切り替えられる。操作キャラクターは、各ボタンに割り振ら得た技を繰り出したりアイテムを使用することで、有利な戦況を作り出し、最終的には敵を全滅させることで勝利となる。技を使用するには技ごとに決められたAPが必要で、使用したAPは時間経過で回復する。基本のAP値は5と少なめだが、戦闘の行動次第で上下し最大で15となり、次の戦闘にも持ち越されるが、一度リセットすると最低値の5に戻る。と、APの仕様を除けばオーソドックスなシステムであり、特にアクションゲーム経験者なら、すんなりと入り込めるものとなっている。無論、それだけと言うわけではなく、今作独自のシステムも存在する。それが先に紹介した自立型支援ポッド「DUMA」を使用した高速アクションである。

物語序盤でDUMAと合流して以降、いくつかのシステムが解禁されるが、その最たるものがDUMAを使用した高速接近攻撃「VAアタック(以下VAA)」と、そこから派生する「ブラインドサイド」である。まずVAAはボタンを長押しすることで、DUMAが操作キャラを空中に浮遊させつつシールドを張る。そしてボタンを離すことで、ロックした敵に向かって高速で接近し攻撃する。ブラインドサイドは、VAAの途中、敵が操作キャラクターを視認している状態で急激に方向転換することで発生する。こちらを見失った敵はしばらく硬直し、受けるダメージが1.5倍となり、さらに最大APが増加するため、一気にダメージを与える大チャンスというわけである。このシステムの優れているところは、リターンが大きい代わりにリスクが少ないところ。仮に方向転換に失敗しても、そのまま突撃して敵にダメージを与えられるために、気軽に試すことができる。また、一度増加したAPは次の戦闘にも持ち越されるため、ボス戦に備える意味でも、普段から積極的に試した方が良い。
また、操作キャラクターからDUMAを切り離し、味方全体のバフを与える「エステリーケージ」というシステムもある。敵の中には視界が広く、ブラインドサイドを狙えないこともあるので、そういった場合には有効な選択肢となる。
他にも、弱点部位を攻撃し破壊することで弱体化する敵や、普段は視界が広いが、特定の攻撃時は視界が狭くなりブラインドサイドを狙える敵(ボスに多い)など、敵の行動パターンも豊富であり、DUMAが合流する再序盤こそやや退屈に感じるかもしれないが、DUMAと合流してからは終始スリリングなバトルを楽しむことができる。あえて欠点を言うなら、難易度がやや低いことぐらいか。筆者はノーマル難易度でプレイしたが、ゲーム中苦戦した記憶がほとんどなく、ラスボスを含めてあっさりとクリアできた印象がある。もっとも、クリア後のコンテンツはプレイしていないので、あくまで本編のみの印象であることは断っておきたい。

その他システム:微妙に痒いところに手が届かない

戦闘以外のシステムについて解説していきたいと思う。

まずは成長システムについて。基本的にはオーソドックスなレベルアップ制とスキルツリー性を採用している。戦闘に勝利するとキャラクターごとに経験値が手に入り、経験値が一定の値に達するとレベルが上がる。レベルが上がることで各種パラメータが上がりスキルポイント(SP)が手に入る。SPを使用しスキルを入手・強化していくことでキャラクターが強化され、より強い敵と戦えるようになり、多くの経験値を入手でき、さらにキャラクターを強化していく、というサイクルとなる。SPは様々なスキルの入手や強化、アイテムクリエーションレベル(IC)の強化など多くの用途で使用するため、初見だとカツカツに思えるかもしれないが、クリアまでの印象では意外と余裕があり、少なくとも適当に振ったことで積むということはなさそうである。ただ、効率を求めるなら、少なくともクリアまでは優秀なバトルスキルを中心に振ったほうが有利なように思う。

次に、シリーズお馴染みのICについて。素材から有用なアイテムを作り出すシリーズお馴染みかつ、毎回微妙にシステムを変更するICだが、今作は比較的シンプルなシステムとなっており、素材となるアイテムを各キャラクターが加工することで、有用なアイテムを新たに作り出す、というものになっている。特別な操作も必要なく、素材とキャラクターを選べば、あとは勝手に実行してくれる。もっとも、クリアまでには特別必要となる場面はなく、主にエンドコンテンツ用のシステムと言える。自分もほとんど手を出していないが、やり方次第では相当無茶なアイテムを作り出せるようである。

探索要素について。今作のマップは全体的に広めだがシームレスというわけではなく、街やフィールド、ダンジョンごとに独立して存在している。マップの探索でも活躍するのがDUMAであり、VAを使って飛び回ることができ、なかなかの爽快感がある。探索要素としては宝箱の他にDUMAを強化するための晶紋石、シリーズお馴染みのうさぎのような生物「バーニィ」などがある。このうち晶紋石はともかく、宝箱やバーニィは視認性が悪く、フィールドスキャンという、いわゆるソナー機能を使って探すことになる。個人的には、わざわざ探索の手間を増やすこのシステムは好きになれず、オブジェクトの視認性を上げる方向で解決してほしかった。
この点、例えばゼノブレイド3は割り切ったつくりをしており、宝箱から光が立ち上っているため、遠くからでも非常に分かりやすく、一見取れそうにない宝箱も「どうやってあそこまでたどり着くのか?」と、プレイヤーの探索意欲を自然な形で上げてくれる。冷静に考えて宝箱から光が立ち上るほうがおかしいのだが、あくまでプレイしやすさを優先したゼノブレイド3のほうが個人的には好感をもてたし、ゲームデザインとしても正しいと思う。
また、ファストトラベルの仕様も微妙に不便で、マップの入り口にしか移動できないため、マップ中央付近を目指す場合はわざわざ移動しなければならない。全体的に広めのマップなのだから、マップ中ほどにもチェックポイントが欲しかった。

ミニゲーム「ソーア」について。作中で流行している盤上ゲームであり、囲碁とカードバトルを合わせたようなゲームとなっている。対決は一対一で行われ、盤上でポーン(駒)を交互に配置し、囲碁のように陣取りをしていく。また、ポーンには攻撃力が設定してあり、盤上に置いてある駒の総攻撃力で相手に攻撃、先にライフを0にした方が勝利となる。ほかにも細かいルールが存在し一見複雑そうだが、実際は取っつきやすく奥が深いゲームとなっており、ミニゲームとしてはかなりレベルが高い。世界中で流行するのもうなずける。というか、ゲーム中のモブキャラはサブイベントに関連するキャラを除けば、ほぼ全員ソーアとの対戦のためのキャラである。ポケモンバトルも真っ青なくらいの流行っぷりである。ただ、ここまでやるなら仲間やメインシナリオに関連するキャラとも対戦出来てもよかったと思う。

気になった点:メニュー画面の使いづらさ

次に気になった点を。最も気になった点としては、メニュー画面が使いづらいことである。今作はメニューを開くと、「パーティ」「アイテム」「設定」といったメニューコマンドが横並びに表示され、L2R2ボタンでコマンドを選び〇ボタンで決定するのだが、その後新たに出現したコマンドは、上下ボタンで選択しなければならない。例えば、「パーティ」コマンドを選択すると、「装備」「リンクコマンド」「パッシブスキル」などさらにコマンドが表示されるが、これらは上下ボタンで選択しなければならない。さらにキャラクターの選択などはL1R1ボタンで操作する。これが非常に使いづらく、ゲームクリアまで慣れることができなかった。多くのRPGでは、上下・左右の違いこそあるが、メニュー画面での操作方法は統一されており、プレイして戸惑うことはほとんどない。今作にはどうにもプレイヤー目線が欠けているような気がする。
また、マップ切り替え時のロード時間がやや長い。特にメインストーリーでは場面の切り替えが頻繁に発生するため、どうしてもこの点が気にある。また、サブイベント攻略時にもマップを移動する機会が多いため、やはり気になる。

総評:良作だが名作と言い切るには一歩足りない。

最後に総評を。総合的な出来は良作レベルにあると思う。戦闘システムは非常に爽快感が高く、メインシナリオも決して悪くない。シリーズお馴染みの要素もきっちりと抑えており、シリーズファンなら安心して楽しめる出来になっている。
ただ、それだけに微妙に痒いところに手が届いていないシステムや、演出の弱さが引っかかり、どうにも一流になりきれない印象がある。あまり比較するのも良くないと思うが、自分はテイルズシリーズ最新作のテイルズオブアライズ(ARISE)は非常に楽しめたが、今作はARISEほどにははまれなかった。理由はまさに演出の弱さと基本的なシステムのUIにあると感じ、ARISEプレイ中はその二点でストレスに感じる部分がほとんどなかった。
その点では非常に惜しいと感じる、なんとも勿体ないゲームである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?