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Life is Strange

「かけがえのない愛する世界か、たった一人の煌めく君か」



幼い頃に父親に新しいゲームをねだる時は、必ず直近で買ってもらったゲームの感想文を見せることが約束だった。もう戻ることのできない幸せだった日々を思い出すかのように、塗り重ねるかのように大人になった今でも感想文をしたためようかと思っていたけどなかなか取り付けなかったのに、いよいよ重い筆をとる時が来た。どうやらそれほどにLife Is Starangeというゲームは私に響いたようだ。

このノートはどこかの誰かにゲームを紹介するような存在ではなく、自分がいつでも思い出せるように、主人公といっしょに息をした時間を忘れないためのものなので長ったらしい説明文は書かないつもり。だから人によっては突拍子もなくて吃驚するだろう。それでも気にせず、赤裸々に書いていきたいと思う。

LifeIsStranegeというゲームをクリアした。
久しぶり過ぎて姿の変わったクロエという大事な親友の命を何度も時間を巻き戻して救うことで、結果的に街や街に住む人々全員の命を奪う大災害を引き起こしてしまい、どちらかの未来を選ばなくてはいけないという話だった。The Butterfly Effectや天気の子、STEINS;GATEなどタイムープものの創作は今までにも観ていたが、映画ではなく、自分で選択しなくてはいけないゲームという媒体では驚くほど直に重くのしかかってきた。

最後の決断を迫られた時に私は親友の命を選べず、街の安寧を、元のあるべき姿の世界を選んだ。

実は、攻略を先に見ていたので最後の流れを何となく知っていて、"そんなの親友を選ぶに決まっている、街のこと、世界のことなんてどうでもいいだろう"と腹を括っていたのだが、いざ、何もかもを他人のせいにして甘えて一人よがりだったクロエが全てを悟った優しい表情で元の運命に戻して欲しいと頼まれた時、私は彼女の最期の願いを叶えたいと思った。それに、大好きだった父親と生きる糧だった親友を喪った彼女に、さらにアルカディア・ベイの全ての人間の命を背負わせることなんて出来るはずがなかった。彼女には重すぎると思ったのだ。

奇遇にもクロエと再会することとなった学校のトイレで撮った写真。この瞬間が後々、すべての物語に影響した。


いくら五年前に住んでいたとはいえど、親友の命をかけるほどでもなかったはずのアルカディア・ベイを救う選択をした時、当然だけれど未来を変えて自分の身を危険に晒してまで何度も助けてきた、何があっても傷つけたくないと思ってきたクロエは呆気なく死んでしまった。自分のせいだった。

小さくうずくまって、ただクロエが銃殺されるのをやり過ごすマックスを見て、とうとう私は自分の選んだ結末が良かったのかわからなくなってしまった。もし自分がクロエだったら同じように自分の命を差し出し、街を救って欲しいとせがむだろうと思ってクロエの願いを叶えたつもりだったが、そんなのは傲慢でたった一つの命より多くの人間の命を、本来あるべきだったアルカディア・ベイの終わりを背負うことが出来なかっただけかもしれない。そう思うと居た堪れない気持ちになってきた。かと言って、また同じ決断を何度も迫られたとしても、私はやっぱりクロエを守ることは出来ない、自分の無駄な正義感も無性に悲しかった。かけがえのない存在の他には何もいらない、世界なんて終わってしまってもいいと思える人の強さが本当に羨ましく思える。親友の命を引き換えに願い通り街を救った主人公は涙を流しながらも、誇らしげに笑ってみせていた。おそらくこれがトゥルーエンドなのだろうが、私はマックスと同じようにどうやら先には進めそうにはない。しばらくは自分の決断を引きずることになるだろう。

クロエの入った棺にクロエの髪と同じ綺麗なをした蝶が留まるシーン。


だいぶ感傷的になっていたので、少し落ち着こう。HEAVY RAINをやっていた時も思ったが、このゲームも最後まで展開が読めなかった。またしても力不足である。面白い。
誰からも愛されていたレイチェルというキーパーソンがどのように関わってくるのか掴めなくて、それでも真相に近づいてきていると感じ始めた時は何か見えない大きな闇に包まれているようで本当に怖かった。シーンでいえば、終盤に出てきた悪夢の演出がなかなかに不気味で面白かったな。苦手なハイドを強制的にさせられた時は詰まって怒りが出そうだったが、Layers Of Fearを思い起こさせるような薄ら気味の悪い映像が今までのLife Is Strangeとは違くて良い意味でドキッとさせられた。ポンピドゥーからSNSが届いていてちょっと笑ってしまったのは秘密。

あまりにも唐突なホラーすぎて思わず撮ってしまったマックスの日記。SNSもなかなかに怖かった。


私は実は良い人でしたという王道の展開にめちゃくちゃ弱いので、デイビッドやフランクの弱い所を見た時は涙腺がガバガバになってしまい一気に2人のことを好きになってしまった。(他にも良いキャラいっぱいいるのに…)クロエのことを我儘で傲慢だと揶揄するプレイヤーもどうやらいるみたいだが、過去を鑑みると強くあることを必要とされてしまった彼女をそんな風には全く思えないな。マックスは生粋のヲタクちゃんなのに健気すぎて、あとバリバリに能力を使って、パリピ達にも受け入れられるという人望があって平和な世界だと思った。ビクトリアも意外と好きだし、テイラーも好き。テイラーは完全に見た目が好きなだけだけれど。ウォーレンは普通にちょっと怖かった、マックスは好意を抱いているのはどうしてだろう…

クロエは自分の命を救うために時空を歪めたことが全ての原因で、死を受け入れる決断をしなくてはいけないとマックスに言っていたように、今までの旅はクロエとの別れの受容に辿り着くための2人の長い長い旅だったのかもしれない。マックスも私も、クロエのことを忘れることなんてない。最後の決断を引きずることになろうが、2人の楽しくて儚い旅を見送ることが出来て良かった。物語を終わらせることはいつだって悲しいけど、さようならクロエ。さようならマックス。

もう一つのクロエを守り何もなくなったアルカディア・ベイで二人で見た綺麗な夕日の写真。

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