ゲームの思い出:でるでるでるじゃん

でるでるでるじゃんというアーケードゲームがあった。

 当時プラモデルに飢えていた僕は休日買い物についていってこのゲームをプレイするのが常だった。
このゲームはハイパーバズーカをもったガンダムのトリガーを左右に動かし、ランプが付いた敵を撃っていくもぐら叩きのようなゲームだ。
反射神経と連打力が全てのゲームで30点以上を出せば景品が貰える。最高ランクのニュータイプまでいければ景品が3個貰える。しかし僕は一度もニュータイプまでいけたことはなかった。

僕はこれでしか貰えない限定のプラモデル目当てに毎週の様にやり続けた。

景品は大きく分けて3種類あった。
でるでるでるじゃんの景品は、カード状のケースで排出される。

まずはラバーカード。
カード状になったケースを開けると中に消しゴムが入っている。
これが一番ハズレ。

次にコミックカード
漫画である。この景品で位しか展開されていない、レインボー大陸戦記という漫画で、G-ARMSという、戦争映画みたいなSDガンダムシリーズに似た、三つ巴の戦争を描いた物だった。けっこう好きだったのだが、完結まで漫画はなかったはずだ。前述の消しゴムもこのレインボー大陸戦記の絵が書かれたもので、当時ハズレ扱いにしていたが、今となってはあんなに持っていた消しゴムをどうして無くしてしまったのか。惜しいものである。

そして目玉の限定プラモデル。
白のランナーのガンダムF91、銀メッキランナーのバーサル騎士ガンダム。そして金メッキランナーのキングガンダム2世だ。
各プラモデルは3つのパーツカードにわかれていて、それを組み合わせることで完成する方式だった。

各パーツカード単体でも一応はそのガンダムが出来るようになっていたが、簡易版のパーツなので不恰好。

やはりちゃんとしたものが欲しくなる。

しかし、プラモデルのカードはなかなか出なかった。殆どが消しゴム。たまに漫画だった。


 お正月。お年玉を貰った僕はその中から5000円を使い、全てこのゲームに注ぎ込んだ。

この時僕はF91、キングガンダム2世はコンプリートしていたがバーサル騎士ガンダムの手足のパーツだけはまだ手に入れたことがなかった。バーサル騎士ガンダムの手足が欲しい。

正直な話、当時の食玩レベルのキットである。注ぎ込むくらいならBB戦士でF91、キングガンダム2世、バーサル騎士ガンダムを買ったほうが遥かに出来が良く、安上がり。何ならバーサル騎士ガンダムは豪華版の方を買ったとしても3体で5000円以下で買えた。

それでもどうしても欲しかった。

ずっとやっていただけあって、やれば景品はほぼ確実に取れるようにはなっていた。注ぎ込む傍ら、ニュータイプを目指して攻略したが、やればやるほど人間には無理なんじゃないかと思った。

数多くの景品を手に入れたが、キングガンダム2世の手足パーツがやたらとかぶったのを覚えている。

それからしばらくして、景品が無くなり、“景品切れ”の貼り紙が貼られてプレイする事が出来なくなった。

半年ほど経って筐体は撤去されてしまった。

中学生になって、プラモデルを買いに行った際、家に帰るまで我慢できなくなった僕たちがデパートの屋上に通じる階段の踊り場でパッケージを開けて説明書を読んでいると、僕は懐かしいものを見つけた。

屋上への扉の横の部屋にもう使わなくなったゲーム筐体がいくつか置かれていた。

その中に、あの頃夢中になったでるでるでるじゃんの筐体を見つけた。シートも被せず、ホコリまみれで、もう絶対に表には出てこないであろう筐体。少し寂しくなって泣きそうになった。

友達が訝しげに僕の方を見ていたが、僕は「じゃあ、帰ろっか」と友達を促し、そのまま帰路についた。

家に帰って、久しぶりにでるでるでるじゃんのキットを探す。
入れてあった箱を見つけ、箱を開けた。
そこにはキングガンダム2世の金メッキの手足をつけたバーサル騎士ガンダムが1体だけ入っていた。

あんなに持っていたはずの他の消しゴムや、コミックカードはどこに行ってしまったのかはわからない。このバーサル騎士ガンダムもどきもこの少し後に不良によって粉々に破壊されてしまい、もう僕の手の中にはこの時手に入れたものは何一つとして残っていない。

ただ、僕の中にはあのゲームに夢中になった思い出だけが残っている。



でるでるでるじゃん

1993年頃稼働。

ハード:アーケード

販売:多分バンプレスト

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