【雑記】箱舟にはなにをのせる?ーーゲームのいきものの選び方を考える

 聖書の中に「箱舟」の話がある。洪水のときにいろいろな動物をのせたという舟のことだ。
 ゲームを作る人にとって、現実世界からゲーム世界へ、いきものを送り込むのは箱舟にのせる作業に似ている。

 例えば、ゲームに昆虫採集を入れると考える。だいたい20種くらいにしよう。じゃあなにを入れよう。メジャーどころで考えるとカブトムシ、クワガタムシ、アゲハチョウ、モンシロチョウ……と考える。だいたい10種類くらいはすらすら出てくるのではないだろうか。
 詰まったらどうするか。昆虫図鑑を開く。そこで目についた昆虫を入れる。
 するとどうだろう。
 他のゲームとちがったラインナップになっていくのではないだろうか。
 釣りでも昆虫採集でも、「これが絶対メジャー」というセットは、実はないのである。

 例を挙げよう。『妖怪ウォッチ1』に出てくるいきものは以下のとおりだ。
(釣り)
ブラックバス、ホタルイカ、ライギョ、アジ、アユ、イシダイ、イトウ、カサゴ、カジキ、カメ、クラゲ、コンゴウフグ、タイ、チョウチンアンコウ、ナマズ、フナ
(昆虫採集)
ホタル、ミンミンゼミ、アゲハチョウ、アブラゼミ、オオクワガタ、カブトムシ、カマキリ、ゴマダラカミキリ、ショウリョウバッタ、テントウムシ、トノサマバッタ、ノコギリクワガタ、ハナムグリ、ヒグラシ

ライギョ

 ものすごく珍しいいきものがいる!というわけではない。しかし、なぜか「ホタルイカ」がいる。「ハナムグリ」がいる。「ライギョ」がいる。そのひとつひとつに「なんでこのいきものを選んだんだろう」という気持ちが湧いて出てくる。
 普段見ないようないきものに出会うこと。そういうことがゲーム世界で多くある。
 『アクアノートの休日』で「ナメクジウオ」といういきものについて出会う。『NieR Replicant』で「リゾドゥス」といういきものに出会う。『なつもん』で「サラサリンガ」に出会う。『AFRIKA』で「ハーテビースト」に出会う。
 こうした出会いは日常生活でなかなか味わうことができない。ゲーム世界に赴くからこそ、味わえるものだ。

ナメクジウオ

 いきものコレクトゲームを考えると、ポケモンがよぎることがある。ポケモンは最近出たシリーズで1000種類を超えており、そのすべてのポケモンを載せた図鑑を作ると、魚図鑑や昆虫図鑑並みの収録数になろうとしている。
 いきものコレクトゲームとポケモンの違いは「レア度のセオリーの有無」だ。例えば、ポケモンでは「さいしょの草むら」というものがあり、そこで出会うポケモン(コラッタやポッポ、ケムッソなど)はある程度決まっており、強いポケモンは中盤~後半に出会う。
 いきものゲームをしていると、このようなレア度のセオリーが存在しない。あるゲームではモンシロチョウが「もういらないです」というくらい捕まるのに、あるゲームでは「いいかげん出てください」と祈るくらい捕まらない。
 地方によって出やすいいきものが違うという点ではポケモンも、現実世界も、ゲーム世界も同じかもしれない。ひとつひとつのいきものを調査し、図鑑を埋めていく楽しさはポケモンもいきものゲームも同じだ。

 ゲームは図鑑と違って、出会いがある。ゲーム開発者が図鑑を開いてピックアップしたいきものたちに、プレイヤーが出会う。その出会いこそが、ゲームの醍醐味であり、本の図鑑ではなかなかできないことだ。
 図鑑に載っていないいきものや、「こんないきものいたんだ!」と意識の埒外から紹介されるいきものなど、その出会いをゲームを通して出会ってほしい。

 この研究所がその一助になればと思う。これからもよろしくお願いします。

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