【雑記】物は永遠にあるわけじゃなんだから

「ちゃんと保存しないのが悪い」
 それが口癖の父親がいた。父親はたくさんのCD-ROMをケースに入れて積み重ねている。自分の持っているデータの複製の複製もあるだろう。
「物は永遠にあるわけじゃなんだから」
 父親は家族がアクセスできるフォルダのネットワークを用意していた。しかし、あるときそのハードディスクが壊れた。壊れて困ることを言ったら、そう言った。
 それが正しいかわからない。わからないけど、わかることは「物は永遠ではない」ということと、「なくなったら嫌な物は保存すべきだ」ということだ。

 ゲームいきもの研究所準備時代に、所長があるソフトを持ってきた。『Earthpedia』という3DSのソフトだった。使えなくなってしまったということだった。
 ソフトを受け取って下部の基盤部分を見てみると、緑色をしている。普通はオレンジっぽい色をしている。おそらく青錆だ。所長にどうしたらこうなったのか聞いたけれど、原因はわからなかった。できる限りのクリーニングをしたが、復活することはできず、新しいのを買うことになった。
「あれ、初めて買ったソフトだったんだよね」
 所長が寂しそうに言っていたが、しょうがないことだった。そう言おうとして、自分でその後に続く言葉に驚いた。「物は永遠にあるわけじゃなんだから」と言おうとしていた。
 同時期に、研究員が昔遊んでいたパソコンソフトのCD-ROMを実家から持ってきたが、そのソフトのどれもソフトを認識することができなかった。CD-ROMの使用期限が過ぎていたのだろう。
「物は永遠にあるわけじゃなんだから」
 その言葉がぐるぐると回る。不安になる。落ち着かない。落ち着かない。3DSはまだ流通があるから今回のように買えばいいが、古いゲームになればなるほど買い戻すことが難しくなる。急がなければ、急がなければ。

 と言っても、できることは限られている。湿気を避けることとか、できるだけ基盤を傷つけないように保管するとか。
 デジタルアーカイブのように、いつでもアクセスできる・購入できるものがあればそれが一番だが、今はまだその制度が整っていない。3DSのアーカイブも終わった。PS3のアーカイブもいつ終わるかわからない。プレステやゲームボーイのゲームが、倒産した会社のものも含めて、いつでもできるという状況になるまでにまだまだ時間がかかるだろう。
 自分たちで現状できることは、悔いの出ないようにゲームを保存できる活動をするのと、危うそうなものについては取っておかずに早めにプレイをすることだ。
 個人的にはゲームのアーカイブもそうだが、パソコン系子ども向けソフトもアーカイブ保管がどこかでされればいいな(アメリカのものであればインターネットアーカイブがあるが……)と思うけれども、もう遅いかもしれないと、データがなにも入っていないCD-ROMを見ながら思うのだった。


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