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不適切にもほどがあった? 30年前のゲームデバッグ

こんにちは、スゴロックスです!
皆さんは、いまどんなゲームを楽しんでいますか?
いま楽しんでいるそのゲームが、皆さんの手に届くまでにさまざまな人たちの苦労がたくさん詰まっているってことをご存じでしょうか?

以前、スゴロックスはゲーム業界のベテラン(オジサン)集団とご紹介しましたが、中には30年近い強者(つわもの)もおります。今回は、そんな強者が、若輩デバッカーだったころのお話です。
まさに、昭和の体育教師が現在の令和にタイムスリップし、セクハラNGの今と、なんでもOKだった昭和のギャップを描いた人気ドラマ『不適切にもほどがある』(”ふてほど”)みたいな世界でした。

そしてちょうどいま、デバッガー視点で物語が描かれている左藤真通氏の人気コミックこの世界は不完全すぎるのアニメ放映もやっていますので、そちらとあわせてお楽しみください。

◆「デバッグ」とは、砂漠の中から砂金を探すようなもの

デバッカーとは、ゲームの不具合、バグなどがないか、発売前のゲームをプレイしてチェックする人を指します。

意図した挙動をしているか? フリーズしないか(画面が固まってしまい、動かない)?進行不能にならないか?
表示が崩れていないか? 不適切な表現はないか? 誤字脱字がないか?などをチェックしていきます。

デバッカーの作業で一番重要な作業は、バグを見つける事はもちろん、見つけたバグの「再現性を見つける事」が何より重要。
なぜ重要かというと、再現を見つける事でバグの原因、バグの対応法が分かるからです。

誤字脱字やグラフィックの不具合は、一見すれば分かりますが、タチが悪いのが、画面がフリーズし、操作不能になってしまう事象で、かつ、毎回起こる訳ではないというもの。
例えば、レースゲームで、ある特定の橋を渡った時にフリーズしてしまう。
それが毎回ではなく、しかもいろいろな車種で起こって状況が限定できない‼

デバッカーは、バグを発見したらデバックシートに、その時の状況をこと細かくメモします。
車種、何キロくらいだったか、近くに他の車がいたか、起動してからの経過時間、どういう改造をしていたのか、敵車は何台だったのか、天気は?などなど…。
そして、このデバックシートを参考にプログラマやデザイナー、プランナーが修正をしていきます。
その時、その再現性がないと原因究明に途方もない時間を費やしてしまいます。

一方、デバッカーはこのバグの再現性を見つけ、確定させるため、繰り返し繰り返し、状況などを少し変えながらプレイし続けます。時には、条件、状況は関係なく、コントローラの操作が原因で、決定ボタンを押しながら、スティックを右に入れるだけなどといったときは本当に凹みます

◆”ふてほど”な(⁉) デバッグ報告儀式

精魂込めて記入し、提出したデバックシート。
時に担当者から「呼び出し」がかかり、担当者へ説明することがあります。
これが非常にドキドキです。

「よく見つけてくれた!ありがとう‼」なんて言葉をかけれらることは本当にまれで、バグが自分の担当箇所ならまだしも、担当外でしかも残業続きの業務過多状態となったらチョー最悪!
記載内容が分からない! 情報が足りない‼ などなど、”不適切にもほどがある”激ツメが待ち受けています。
運よく、バグが再現できれば天国で、何度も繰り返しても再現できないときはまさに地獄です。

そんなデバッグ作業に革命をもたらせたのがテレビビデオの導入でした。
30年前では、プレイ中の画面をキャプチャーする術もなく、テレビデオをひとり一台ずつ割り当てられている予算もなく、記憶を頼りにうまく伝えるしか手段がなかった…という訳です。
このテレビビデオにテストプレイを録画することで、バグの前後の挙動も一目瞭然、デバッグ修正も格段にスピードアップしていきました。

◆さらにスマートになっていくゲームデバッグ

30年近い月日が経ち、現在のゲームデバッグは、デバック報告専用ソフトやプロジェクト管理ソフトで行われ、効率よく作業をする事ができるようになっています。
数年前のCEDECで、Cygamesが2700人分のカードゲームにおけるデバッグ作業をエンジニア1人で運用できるようになったと発表したことなど、AIによるデバッグの自動化がいまゲーム制作の現場で急加速しています。

例えば、

Epic Gamesの開発者コミュニティサイト「Epic Developer Community」において、AIデバッグツールを使ったさまざまなデバッグ方法を解説しています(上級者向け)
https://dev.epicgames.com/documentation/ja-jp/unreal-engine/ai-debugging-in-unreal-engine?application_version=5.4

国内ゲームAIの先駆者でもあるモリカトロンAIQVE ONEベリサーブが共同開発した『Playable!』は、コリジョン抜け、奈落落ちなどを感知し、ゲーム内のアイテム回収チェックなどをサポート(上級者向け)
https://playable.qa/

そして、この8月に開催予定の「CEDEC2024」でも、AIによるデバッグの自動化のアップデート情報が発表になるかと思うので、こちらも注目ですね。

30年前にコツコツとやってきたゲームデバッグが、AI活用によって激変していくのは、ゲーム業界的には非常にウエルカムですが、恐怖とドキドキを併せ持った”ふてほど”な「呼び出し」も、いま考えればひとつの大切なコミュニケーションで、そこでの仕事ぶりや人柄を知ってもらうことが、次へのステップアップにつながっていたなぁと、思い出し感慨深いです。

ゲームデバッグの古今を振り返って(西P評)
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デバッグ、DEBUG(英語表現おしゃれだな)…。
プロデューサーという仕事をさせていただいておりますが、自分の新卒配属は品質保証部でした。その経験があって、製品を出荷することの責任感やリスクを感じることが、今のプロデュースの原点にもなっています。
はや27,8年。独立した現在、前職大手のレベルまでそのクオリティーで出来るのか。周りの皆さんとAIなどのTECHに頼りつつ、製品を正しい状態で出荷できる会社を目指さないとなって感じます。
製品がクオリティーが高い状態で出荷できることは日本のお家芸なのかなとも思っております。
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ベテラン(オジサン)集団のぼくたちスゴロックスですが、持ち前の「好感度」&「高感度」の精神で、ゲームにおけるAI活用にも貪欲です!

AIはゲーム業界においても注目銘柄ですので、今後も定期的に情報をアップデートしていきます!
また次回から、スゴロックス・メンバー紹介にフォーカスしたインタビュー企画も展開予定なので、どうぞお楽しみに!

またこのnoteで取り上げて欲しいトピックやキーワードがありましたらこちらまで‼

スゴロックスでは、ゲーム企画・制作・運営のほかにも、ゲームに関わる
マーケティングやリサーチ業務も行っています。
お気軽にこちらまでお問い合わせください!


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