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ポリコレアレルギーについて(主に映画から)

主に最近映画関係のニュースやその反応を受けて、自分の意見を残しておきたいと思います。

ざっくり言うと最近のアカデミー賞関連で、ツイッター上で見かける意見に辟易としていまして。

きっかけは、今年のアカデミー作品賞及び助演男優賞を受賞した「コーダ あいのうた」について、下記の記事が出たことにあります。

この記事はSNSでしばしば話題になりますが、そのたびに、役者を馬鹿にしている、オーディション受けろ、死体役は死体にやらせるのか、宇宙人役は…といった、的外れなコメントが出てきます。

なぜこんなコメントが出てくるかというと、一つは「知らない」ことが問題です。
私達がろう者のことを知らない、ろう者にも俳優として活躍している人がいることを知らない、聴者の手話演技はろう者からすると、とても下手な事が多いことを知らない、ろう者役のオーディションに、ろう者の俳優の参加はサポート体制の問題などで難しい……、などなど。

そもそも映画やTVドラマにろう者が出演する意味は何でしょう?
多くは、それが現実の世界を反映しているから、と私は思います。決して、障がい者を出演させてお涙頂戴させよう、という趣旨ではない、と信じたい。
であるならば、その演技は実際現実に存在しているろう者が見て違和感を覚えない演技であることは、最低限クリアすべき条件であるはずです。しかし実際、聴者の役者がどんなに演技が旨いと評価される方でも、残念ながら手話を交えた演技は稚拙に見えるそうです。
その点が上記の、宇宙人役は宇宙人に~といった主張が全く的外れな理由です。
それゆえ、ろう者役にはろう者の俳優を、という主張に意味があると感じます。
実際私が映画館で鑑賞した「コーダ あいのうた」でのトロイ・コッツァーはじめ主人公の家族や全員ろう者の俳優で固められており、その演技は聴者から見てもリアリティ(というかリアル)に感じられました。

そして何よりろう者の観客が見て、違和感を覚えない演技を劇場で見れるというのが、大事だと思いました。

別作品ですが、MCUの「エターナルズ」でも、ろう者のヒーロー(マッカリ)が登場し話題になっています。

神に近い力を持つヒーローがろう者である、という設定でかつ、その役を演じているのがろう者である、という事実は、同じ境遇を持つ人達へ、大きなメッセージを与えることになるのでは、と感じます。

こういう話が別の属性の人達へも広がっていくと、次はアカデミー作品賞の基準の話になるわけです。

こちらも定期的にネガティブな方向で盛り上がるニュースで、
多くの人が「これで映画は面白くなくなる」と決めつけて嘆いています。
どうしてこういう流れになるのか、が表題の「ポリコレアレルギー」に繋がるのです。

個人的にこれは、「ポリコレ棒」と呼ばれる、既存の作品を「ポリコレ的に正しくない」と非難し、挙句の果ては改変、公開禁止を訴える人への反発が大きな原因では、と考えています。
私も自分が楽しんでいる作品がそのような対象になると反発しますし、いくら差別的な表現が含まれていても、批判はともかく、既に発表されている作品を修正、撤回させるべきではないと思います。
実際、これを持ち出す人の論理も破綻している場合が多く、また修正を求められている表現(日本だとセクシャルな表現がやり玉にあがりやすい)についても、逆にその表現を必要としている人もいるわけで、これを許容することも多様性の一つだとも言えるわけです。

話をアカデミー作品賞のルール変更に戻しますと、上記の記事にもある通り、これは意外と自由度が高く、変更されたルールを遵守しつつ、白人健常者だけが出演する作品でアカデミー作品賞を目指すことも可能なのです。
勿論多様性を意識した作品の方が、おそらく評価されやすい流れは今後も変わらないでしょうが、それはアカデミー賞の性質上、当然の流れかと思います。ここ数年は特に白人男性偏重を批判されていますので、これからも人種、性別、LGBTQといったマイノリティ当事者を大切にする作品を意識的に製作していくことでしょう。

実際、コーダやエターナルズのみならず、先月配信された「プレデター:ザ・プレイ」でも、ネイティブアメリカンの世界を可能な限りネイティブアメリカン、もしくは血を引くキャストで構成し、実際物凄く面白いエンタメ作品として成立していました。

日本でも少しずつこの流れが入ってきているのか、深田晃司監督の新作「LOVE LIFE」では、主人公の元夫(ろう者)を、ろう者俳優の砂田アトムさんが演じられるようです。

つらつらと書いてきましたが、私は過去はともかく(削除も無しよ)、今後作られる映画やTVドラマは、できるだけ当事者が演じる流れ(当然当事者の俳優ですよ)が広がってくれるといいな、と思いますし、それが可能になるためのサポート体制を充実させていってほしいと思っています。

うん、大体思っていること吐き出せたかな。

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