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バルベルデが作り込む新しい攻撃サッカー 〜アトレティック・クルブのスカウティングレポート〜

アトレティックを分析していこう。

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8/15 vsマジョルカ △0-0
8/21 vsバレンシア ○1-0
8/29 vsカディス ○4-0
9/4 vsエスパニョール ●0-1
9/11 vsエルチェ ○4-1
9/17 vsラージョ ○3-2
9/30 vsアルメリア ○4-0
10/8 vsセビージャ △1-1

5勝2分1敗で3位

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In
MFアンデル・エレーラ(パリSG)
FWゴルカ・グルセタ(アモレビエタ)
FWジョン・モルシーヨ(バジャドリード)

Out
GKホアン・エスキエタ(ラシン)
DFウナイ・ヌニェス(セルタ)
DFアレックス・ペチャロマン(アンドラ)※レンタル
FWニコ・セラーノ(ミランデス)※レンタル

アトレティックはご存じの通りバスク純血主義を貫く特殊クラブで、欲しいポジションの選手を獲得する、という動きを取る事はない。限りある手駒でどう戦うかを追求していくクラブである。それで2部に降格した事がないっていうのはどういうカラクリなのか。すごい。

ここ最近は2020-21シーズンの途中から就任したマルセリーノ・ガルシア・トラル監督の下、4-4-2のソリッド&コンパクトを突き詰めたサッカーで堅い守備組織を誇り、21-22シーズンも8位、コパデルレイはベスト4、スーペルコパも決勝に進むなど好成績を残した。
しかし今季は会長の交代に伴い監督交代。バルサの監督もやっていたエルネスト・バルベルデが3度目の監督就任となった。

何度か言っているが、個人的にマルセリーノのサッカーが好きだった。コンパクトな4-4-2がそもそも好きなのもあるが、説得力のあるサッカーをチームに仕込み好成績を残した。あとは"どう得点を取るのか"をどのように上積みするのかというチャレンジを見てみたかったので、あと一年見たかったというのが正直なところ。

それは一旦置いといて、バルベルデのサッカーは面白い。なかなかどうして。とても興味深いサッカーでアトレティックの戦いを大きく変えて今季の好スタートに繋げている。そんなバルベルデ監督のアトレティックを分析していく。

●基本布陣

基本布陣

今季のアトレティックは4-1-4-1で配置する。先季までの4-4-2との違いを簡単にまとめると
・FWをイニャキ1人にする
・2CHではなくアンカー+2IH
・SHのタスクがより攻撃に集中
という感じか。

各ポジションの配置を見ていく。


・GK
当然今季も代表レギュラーのウナイ・シモンが立ちはだかる。先季以上に自陣からの組み立ての要素が増えたチームでシモンの足下の技術、キックが必要な場面が増えている。今季はネガトラの場面でチーム全体で前向きに矢印を出してアタックする事も多いので1vs1にさらされる機会も多い。欠かす事の出来ない守護神である

・CB
イニゴ・マルティネス、ダニ・ビビアン、ジェライ・アルバレスと、かなり質の高いCBが3枚揃う。しかも全員保持タスクを十分にやれる。ここにウナイ・ヌニェス(現セルタ)まで出したというのはおろそしい。全員スペイン代表でもおかしくない。
なんだったらラージョ戦ではイニゴ・マルティネスが怪しい対応を連発。贅沢なポジション争いを展開している。ビビアンのクオリティも高いが、割と左専門のイニゴ、右専門のビビアンに対して左右兼用のジェライの重要度は高まっている印象がある。

・SB
右はデ・マルコスの状態が良く、ユーリもバレンシアガもしょっちゅう怪我する左に右利きのレクエが回っている。レクエは対人守備能力が高いので好きな選手。攻撃面でも一皮剥けてほしい。個人的には左は前のベレンゲルとの関係上、左利きの方が良いのかなとは思う。

・アンカー
先季は2CHだったが、今季はアンカーを置いている。この位置でスタメンしているのはミケル・ベスガである。大型のセントラルMFで、攻撃に特徴がある選手というよりはクローザーのような印象を持っていたが、今季はビルドアップも中心的存在として君臨している。チーム最大のサプライズと言っていい。バルベルデの見事な起用。
ライバルになるのは先季中盤の軸だったダニ・ガルシア。彼は今季一番タスクが変わってしまった選手だと思う。狭いエリアでの技術に特徴があるわけではないのであまり得意なポジションではないかもしれないが、新しいチャレンジを楽しんでほしい。好みの選手なので応援している。

・IH
インサイドの2枚には、このチームでライン間で特徴が出せる2人を配置する。イケル・ムニアインとオイアン・サンセのコンビである。この2人がいないとこのチームのサッカーは基本的に成り立たない。ボールを引き出し大外まで走り回り、ボールを引き取りに最終ライン付近まで出張する無尽蔵コンビが、チームを動かす。問題は現状替えが効かない事だが、パリから帰還したアンデル・エレーラはこのポジションでやれる選手。フィットしてくると面白そうだ

・アタッカー
アタッカー3枚も固定。真ん中のイニャキ・ウィリアムズ、右ニコ・ウィリアムズの兄弟と、左はアレックス・ベレンゲル。
ウィリアムズ兄弟のスピード、切れ味はご存知の通りだが、左に入ったベレンゲルも今季のサプライズである。元々右サイドでプレーしているイメージだったが、今季は左サイドで大外、内側どちらにも高速にタイミング良くランニングする。PA内でも精度の高いプレーを見せてすでに3ゴールを奪い大暴れだ。開幕はビジャリブレを中央で使ったが、いまいちだった様子。


●保持
・ビルドアップ
ビルドアップ魔神、GKウナイ・シモンの能力を最大化する。CBも3枚誰が出ても本当に質が高い。すごいなビルバオ。縦パスの質が高いのはやはりイニゴ・マルティネスかなと思う。さすがスペイン代表。

このチームは両SBとIH2枚の運動量を思いっきり活かす。本当に良く動く選手達だ。サンセはベスガと並列からスタートしてラストサードにはトップと並列まで入り込む。3ポジション分くらいをハイレベルにこなしてチームを前進させている。
SBはビルドアップ優先。GKからのロブパスと、アンカーのベスガの真横ポジションを意識してビルドアップに効果的に参加する。よく準備されている。デ・マルコスはこの仕事が抜群に上手く、逆に他の選手は実はそんなに上手くない。配置が良いので問題ないが。

基本的にはアンカー(ベスガ)に前を向かせるイメージでボールを持つが、このチームはライン間を取りに行く仕事を与えられているIHの2人、ムニアイン&サンセが余裕で持ち場を離れて降りてくる。

彼らが近づく事でベスガへのプレッシャーを分散させたり、レイオフを使ってベスガに前を向かせる事も出来るので相手チームの前プレを無力化させる事が可能。2人ともボールを受け取ってドリブルで運べる選手という点も良い。特にサンセは重戦車のような前進を見せてついに本格化の予感。喧嘩っ早そうなキャラも含めてめちゃくちゃ好みだ。そしてイニゴ・マルティネスからベレンゲルへ一発でタッチダウンパスを狙う形もある。ファンミみたいな。

サンセがベスガと並列からスタートするパターン。この場合はムニアインがライン間を幅広く横移動して、イニャキは真ん中を捨てて両サイドへ流れる。

IHの2人は当然ビルドアップをサポートする必要がなければライン間ポジションでFWに近づく。そしてムニアインは先季同様、大外までポジションしてボールを呼び込んでいる。

ムニアインの横移動

これを許してあげる仕組みをちゃんと準備したのはバルベルデのファインプレーだと思う。彼は縛っちゃいけない。標榜する枠組みにエースの自由を保証したのは素晴らしいチーム構築だ。バルベルデは名将なんだなとあらためて思う。
これにはWGポジションの2人の能力も役立っている。ニコとベレンゲルは共に大外配置だけでなく内側でも効果的にプレー出来る選手だ。大外張り付きWGだとムニアインの可動域を狭めてしまうが、このチームにはそれがない。ムニアインを解放出来る選手が揃っているスカッドである。

この両WGは2人とも内側に飛び込んでスルーパスを引き出すのが上手い。そして速い。相手チームが前プレの圧力を強めれば一気に背後を取りに行けるランナーが揃っているのが常に危険。
このWGが背後を取りに行く動きがSBのハイポジションを引き出すと同時に、主にトランジションにおいてトップのイニャキの大外ランを引き出している。

昨今は鉄人のイメージが先行するイニャキだが、そのスピードを再発見するシーズンになっている。とんでもなく速い。ニコとベレンゲルの突破を警戒していたはずなのにイニャキが大外を取りに来て、下手したら2人より速い。これは対処が厄介だ。イニャキのランニングは突発的であると同時に献身的である。守りにくい事この上ない。決定力は永遠の課題の選手だが、イイニャキにはイニャキの長所を生かしてもらって得点はチーム全体で改善しようとしている姿が見られるのも今季のアトレティックの魅力だろう。補強が出来ないクラブだからこそチームメイトをリスペクト出来ているように見える。大ファンのようなベタ褒めが続くが、本当に良いチームだ。
それでも試合を決める決定力を持つ選手に欠けるチームである事は事実。ただ、このチームはクロスのタイミングでムニアイン&サンセがFWのように飛び込む事が出来るので、チーム全体で最後の最後で辻褄を合わせる事が可能。この飛び込みが出来るIHは貴重である。さらに右のニコからのクロスに対してはイニャキの頭を狙ったボールでその向こうにベレンゲルまで飛び込んでくるので、速いボールが斜めに刺さってくると迫力がある。実は狙いがイニャキの頭一点なのがバレ始めそうだが、セカンドボールにラッシュ出来るメンバーなので波状攻撃が止まらない現状。セカンドボールのネガトラについては後述。

・右のトライアングル
引いた相手を破壊する手段は主に右サイドのトライアングルに活路を見出す。

デ・マルコスはこのシステムが彼に合っているのか、かなり状態が良い。足下の技術があって大外のポジションを取った時のクロスも相手チームを怖がらせる事が出来る。
ニコはとにかくサイドの1vs1。スピードと切れ味を活かして縦突破を狙う。サンセはどの角度からボールを受けてもワンタッチで前を向ける能力があり、ハーフスペースにいると対応が厄介になる。ボディバランスが良く無理やり身体を捩じ込んでくる突破はDFのファールを誘う。カウンターシチュエーションで絶妙に球離れが悪いのが欠点か

このトライアングルを、アンカーのベスガが効果的にサポートし、常に逆サイドへの大きな展開をチラつかせる。そしてニコが内側へランニングする動きに合わせてトップのイニャキが外側へ抜ける動きを見せる。これは対応が面倒で厄介。

●非保持
非保持は先季までの積み重ねを全面的に支持しているように見える。先季同様の4-4-2ブロックを作るのが基本となる。

主にムニアインが1トップと並列になる。サンセはCHポジションの守備にどれくらい経験があるのかわからないが良くやっていると思う。両翼もSHポジションで守備ブロックに参加する事になんの抵抗もない。彼らはロングカウンターで刺せる自信もあるだろう。2,3人の速攻でフィニッシュまでいけてしまうのがこのアタッカー陣の魅力である。たぶん今ラリーガで一番速い。これだけカウンターが使えるチームにビルドアップを仕込んでいるのは面白いなと思う。

また、相手最終ラインに圧力を掛ける場合はそのままサンセが張り出して来て4-1-4-1を作る。

SHが縦挙動をサボらないので効果的に選択肢を消す事が出来るのが特徴。この時は後述のネガトラと同様、両SBも前を捕まえに行く意識が高く、ビルドアップを阻害する。最悪の場合、SBの背後を使われる事は許容し、最後はクロスをPA内で止めればいいよという往年のアトレティコ・マドリーのような約束事を持って、前プレを躊躇わない仕組みがある。今季のラリーガではちょっと珍しいくらいに前向きの矢印が強い守備だ。

ネガトラ。ネガトラは再奪回を狙ってロスト地点でボールにラッシュする。ここでも矢印は前。特にウィリアムズ兄弟とムニアインはここの切り替えが非常に速く、3人で囲み込んで前を向かせず、最低でもスローインに逃げさせる事が出来る。

前向きのネガトラはアンカーポジションに入るベスガのカバーエリアが重要になる箇所だが、両SB、特に右のデ・マルコスが最終ラインに収まらずにフィルターになる事でカウンターを止めに行く。もちろん抜け出されて速攻を使われる事があるが、CBの戻りの速さと最後はシモンのシュートストップに頼ってCB2枚残しでの再奪回を準備している。

ネガトラでも撤退守備でも、最終ラインの強度が問題になるシーンはほとんどないが、割と対人に頼りがちな対応も多く、一枚剥がされるとピンチを招く場面もある。まあバスク人向きの守備メンタルだと思うので、これは今後も継続していくと思う。対戦相手は一枚剥がしてそこから素早いコンビネーションで侵入、を目指したい。SBをドリブルで抜いてCBを引っ張り出すとか。言うのは簡単だが、レクエを抜くのはなかなか難しいので現実的にはSH辺りを一枚剥がして内側にドリブルしながら相手を釣り出すような狙いを持ちたい

このゾーンに侵入するのはロスト時に高速カウンターに晒される可能性は覚悟した方がいい

ここ数戦はイニゴ・マルティネスの背後がやや狙われている。スペイン代表のCBらしい後方の対応の甘さが見られるが、たぶんどっか怪我してると思われる

あとは、2CBを釣り出されない事を前提に守るパターンが多いので、どうにか大外までボールを進めてニアマイナスに進入する、とか

ニアマイナス。シモンが触れないくらい強烈なシュートが打てれば

全体的に、非保持の考え方として後方の注意よりも目の前でプレーされる事を拒否する。相手CHに前を向かせない、ライン間は絶対阻止。ど真ん中の強度を保つ事が出来ていればSBの背後は使われても大丈夫、という態度で意思統一している。クロスではやられない自信があり、ミドルシュートならシモンが止める。そしてボールを奪ったら再奪回に来られても裏一発でひっくり返せるスピードを持ったアタッカーが揃っている事も強い。相手もボールロストを恐れ、不用意にライン間の縦パスを狙いにくい。


●課題
このチームの難点は代替選手がいない事だ。そりゃそう。別にそれはバルベルデのサッカーに限った話ではなく、アトレティック・クルブが未来永劫向き合っていく永遠の問題であり課題だ。例えばムニアインが大怪我したらその瞬間、このチームはピンチだと思う。

先季までのマルセリーノの4-4-2は、今思うと"誰が出てもある程度出来る"という方向性を目指したサッカーだったのではないかと思う。その分、型にはめ込んだ。それで非保持が上手く機能していた一方、攻撃の選択肢の少なさという問題を生んでいた要因だったと見ている。そもそも点を取れる選手が少ないチームで、マルセリーノの用意した型の中で100%の能力を出せる選手でないと得点するのが難しい、という環境であったと思う。しつこいようだが、だからこそもう一シーズン見たかったんだけどね

それにたいして今季のバルベルデのチームは、マルセリーノのチームよりも人への依存を強めている感はある。ムニアインとサンセのライン間のタスクも、ウィリアムズ兄弟のスピードも他の選手に真似出来る類のものではない。ベンチメンバーに真似しろとも言ってないだろう。そもそもニコはスペイン代表に選ばれている特異なクオリティを持ったWGだ。真似出来るものではない。
4-1-4-1の配置を基本とし、各ポジションの約束事も規定されているが、特にボールを持った時の振る舞いは各選手の能力を発揮する事を期待している。あれをやれこれをやれとあんまり細かく指示していないと思われる。この辺の匙加減は上手いなと思う。規定するけど縛らない。選手個々のクオリティに依存すると同時に、各選手の自由度が高いのも特徴である。ざっくり言うと、"4-1-4-1の枠組みの中で起用するから、そこで自分の魅力を出せ"という仕組みのように思う。別にいいよ内側に立っても。その代わり後方の選手が大外のサポートが出来るのかはお前が確認しろよ?みたいな。ていうかポジショナルプレーってそういうものだよね
ムニアインとサンセの代わりをやれる選手がいないなんて事はわかっている。同じ事をやれとは言わないが、お前そこで使ったら何が出来る?と選手に問うているような気がする。選手達もそれにワクワクしながらチャレンジしているように見えている。概ね上手くいっているのではないか。特に自由度の高さに救われているのはベレンゲルではないか。左WGとはいえ右利きであり、自分がシュートを打つならこの角度で、という意識もあるだろう。ちゃんとそのエリアに侵入する方法を模索して近くの選手とも共有出来てこその活躍に見える。こういう覚醒は見ていてワクワクするし面白い。

一方、ベンチから試合の展開を攻撃方向にシフト出来るゲームチェンジャーがいない。これは明確に課題。あくまでもスタメンがベストメンバーで、"さあ点を取りに行こう"というスイッチを入れる選手がベンチにいないのが現状。先季はニコがそんな感じだったがスタメンになったので。前半で2点くらい取られちゃった試合とか、終盤に疲れた相手を翻弄するスピードがある選手とか、もう一枚ベンチに置けるといいんだけどね。だからこそまずは失点しない形を模索したのが、先季のマルセリーノだったのかな、という考え方も出来そうだ。"もう同点に追いつけないよ"っていう環境をなるべく作らない、みたいな。
ベンチに仕組み・ペースを変える選手がいないなら、スタイルと心中する覚悟が必要で、その意味ではバルベルデはベストのチョイスでしょう。まさにスタイルの人。それをチームにはやくも植え付けているのも見事。魅力的で面白い、毎週見たいと思えるサッカーをしている。

もう一つの課題は、ここまでの話と共通するが、やはりストライカーがいない事だ。イニャキだけに依存するのはやはり難しい。だからこそチーム全体で点を取ろう。という形に取り組み、どこからでも点を取れるチームを作ろうというサッカーは驚きもたくさんあり、そして面白い。
ここまではバルサ、マドリーに続く17得点を奪い、その内訳も
イニャキ、ニコ、ベレンゲル、サンセが3点
グルセタ、ベスガが2点
とまさにどこからでも、という内容。ここまではバルベルデの計画通りのサッカーが出来ているようだ。点が取れない時期が来た時に、チームがどういうアクションをするか。それが欧州圏に届くかどうかを分けるポイントになりそう。

・イニャキ・ウィリアムズという存在
そして最後に、おれはイニャキ・ウィリアムズという選手が大好きだ。ガーナ人の父とリベリア人の母を持つ彼は、移民の子としてバスクに産まれた。
おれはビルバオという街の事は知らないが、もちろん批判的な扱いを受けた事もあるだろう。産まれ育った街のクラブなのにだ。世界中どこでもある話かもしれないが、やはりこのクラブは特別だし、ここでプレーしたいと願った彼の気持ちに胸が熱くなる。
アトレティックという独自文化を持つクラブに育ち、トップチームデビューを果たした。彼は、このクラブで初めてゴールを決めた黒人選手である。背番号9を付け、ピッチに立ち続ける。なんと彼はラリーガの連続試合出場記録を打ち立て、今なお更新中だ。赤白のユニフォームを着る、見慣れない肌の色の選手はクラブのレジェンドになったのだ。
そして彼は、父の母国であるガーナの代表チームを選んだ。これも、バスクという地方に根付くクラブに固執した彼からすれば決して簡単ではない決断だっただろう。おじいちゃんに"ガーナのためにプレーするなんて素晴らしい夢だ"と言われて決断したとか。彼はW杯にも出場する。楽しみだね

彼に追加で指摘しておくと、先季くらいからニア上を狙うシュートが目立つ。ファーに流し込むシュートが枠に飛ばないならニアに思いっきり蹴ってしまえ、という潔さが見えるし、この精度がなかなか高くて厄介だ。左足でも強烈なシュートが打てる。彼はあくまでもストライカー。殻を破るキッカケはそこかしこにあるように感じる。
そして彼はワンタッチのポストプレーが、70〜80%くらいの確率でめちゃくちゃ上手い。残る20〜30%くらいの頻度で初めてやるんですかくらい下手。今季は両IHと内側に入ってくるWGがイニャキからのレイオフを受ける形が前進の重要な役割を担っているのでこの動きは非常に重要だ。同時に、圧倒的なスピードを持つイニャキがダイレクトでボールを正確に離せる選手になると対面するDFの対応がかなり難しくなる。このプレーの精度は今後も大切な箇所だ。


●まとめ
以上です。良いチームですよ、アトレティック。対戦が楽しみ。ボールを持てるチームなのでアトレティコがどのように対応するのか楽しみ。
とはいえアトレティコの最終ラインもニコやベレンゲルにそう簡単に突破されるような代物ではないと思いたいところ。ここも楽しみ。多少不安。

アトレティコ目線で言えば、ストライカーを中心にクオリティを問うような戦いを見せてほしい。ここから先、ヨーロッパで勝ち上がりたかったら個の質だぜ。みたいな
例えばサンパオリ体制に変わったばかりのセビージャは普通の配置で普通にアトレティックの前進を止めていたのが印象的だった。今季一番ボールを進められなかったんじゃないか。アトレティコも同様に、対人で負けない事を軸にシンプルに相手を上回ってほしい。こちらのボール保持でも、対人で当たってくるプレスを対人で外していきたい。ボール取りに行ったら抜かれるぞ、って環境を作りにいきたい。そんな試合が今季出来ていないアトレティコだからこそ、チームとして一皮剥けるところが見たい。その試金石に最適な相手だろう。現状CL圏内を争う直接のライバルでもある。気持ちの良い勝利を期待する。



10/15 28:00
サン・マメス
アトレティックvsアトレティコ

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