見出し画像

リスクの負い方 17節 アトレティコvsアルメリア(A) 2023.1.15

17節はアルメリア戦。
16節バルサ戦はボリスタでした。よろしくです。

記事で書いた通りですが、最近の試合でのチャレンジを踏襲した試合内容だったという部分はポジティブ。あとは局所でどうやって強みを出すかがポイントかな。それと、逆にバリオスがいない試合で同じことできる?っていう不安はある。いつの間にかそんな存在に。


さてと、アルメリア。先季セグンダで優勝し、14-15シーズン以来のプリメーラ復帰。個人的にはリージョがペップバルサにボコボコにされて解任されたチームとして記憶されている。近年はサウジマネーが入って金満化しているとのこと。

今季の開幕当初は5-3で守ってラマザニとサディークでどうにかするサッカーで結構どうにかなっていたがサディークがソシエダに引き抜かれシステム変更(サディークはその後今季絶望の大怪我)。1月になって先季までグラナダにいたルイス・スアレスじゃない方のルイス・スアレスを補強。今季はマルセイユに行って7試合3ゴールだったそうです。レンタル加入。
ここのところは勝ったり負けたりを繰り返しているが、エルチェを除いてどこもそんな感じなのでまあまあ勝てていても降格圏はすぐそこ、という厳しいシーズンである。昇格組はよくやっているんだけどな。ということでアルメリアも、アトレティコ相手とはいえホームでポイントが欲しい立場である。

●スタメン
・アトレティコ
オブラク
モリーナ / エルモソ / ヴィツェル / ヘイニウド
コケ / コンドグビア / ジョレンテ / ルマル
グリーズマン / コレア

前節フェラン・トーレスと取っ組み合いをしたサヴィッチ出場停止(2試合)、ヒメネスが怪我で休みなのでCBがいない。Bチームのマルコ・モレノを召集するなどしている。フェリペはこの環境でもベンチ。
コケとコンドグビアが揃ってスタメンなのは意外と久しぶりで、9節のアトレティック戦以来。バリオスは外れることに少し驚いてしまうくらいには定着している。コレアはラリーガに限れば12節カディス戦以来のスタメン。結果が欲しい。

・アルメリア
フェルナンド
ポソ / エリー / チュミ / アキエメ
メレーロ / ロベルトーネ / サム・コスタ
エンバルバ / バチストン / トゥーレ

CBはバビッチではなくチュミがスタメン。
前線はラマザニをベンチに置いてバチストンとトゥーレを使ってきた




●前半

■アルメリアが仕掛けた配置の罠〜バチストンの質とエンバルバが握った主導権〜

ホームチームのアルメリアは主導権を握るべく、攻守ともにアトレティコ対策を仕掛けてきた。まずはボール保持の局面。

アトレティコが前3枚でプレスに来ることは事前に予想できていただろう。おれもできていた。アルメリアは前節と異なり、中盤にサム・コスタを入れているが、彼がビルドアップで重要なタスクを任された。

アルメリアは2CBでボールを持つと、両SBはアトレティコの前線プレスの背後まで消える。代わりにサム・コスタが最終ラインに落ちてくる形でボールを保持した。
アトレティコとしてはアルメリアが前節と同じ形であるなら4バックに対して3枚でプレス、アンカーポジションをCHが後方から潰しにいってロングボールを蹴らせる、というシンプルな狙いがあったと思われるが、まずこれを外される。
ジョレンテ&ルマルは両SBについていってズルズルと位置が下がり、コケ&コンドグビアの2枚の中盤は周囲をメレーロ、ロベルトーネに加えてバチストン、エンバルバにまでうろちょろされ、数的不利になる。それに最終ラインは色々心配なメンツである。この日の中盤2人が能動的なポジションを取るのが難しかったのは想像に難くない。

結果的にバチストン、エンバルバの2人を自由にしてしまった前半戦だった。特にバチストン側から侵入されることが多く、これはアルメリアにエンバルバ側、ジョレンテ&モリーナ付近でボールロストしたくないという狙いがあったのではないかと想像する。と同時にそもそもバチストンのクオリティが凄かった。好き放題ボールを引き出され、ロングボールも収められた。ヘイニウドが簡単にターンされてしまった場面は嫌な予感の塊である。

続いてアルメリアの非保持、アトレティコのボール保持局面。

まずアルメリアは3トップがアトレティコの最終ラインに圧力をかける。けっこう強めに。アトレティコは御多分に洩れず右のモリーナは大外の仕事、左のヘイニウドは最終ラインの仕事を担当する。

3-1ビルドへ移行。
ここがエンバルバがスタメンに起用された理由になってくる。モリーナについてそのまま中盤へ吸収されていくことを厭わない。
アトレティコは左のルマルが何をしたいのかよくわからない位置をフラフラしており特に怖くもないのである程度放置される。この辺の対応は"カラスコ不在"を念頭に置いて準備されている感じがある。大外に固定するつもりなら最初からルマルでなくレギロンを置けばよかったのではないか。

これで中盤の3枚がライン間ポジションのコケ&グリーズマンへの縦パスを警戒することに集中し、アトレティコの攻撃を堰き止めた。コンドグビアにはなりふり構わずプレッシャーに行くという形も約束されていた。バレてる。

■何故継続しなかったのか
対策は練られていたとはいえ、アトレティコ側にも疑問はある。"何故継続しなかったのか"だ。

攻撃の話?守備の話?両方である。

・非保持では
バルサ戦の良かったところで挙げたのは(ボリスタ読んでください)、マンツーマンの対応に固執せず配置を意識して対応できたことだ。
この日はジョレンテがアキエメのポジションに終始引っ張られ、モリーナ周辺があまりにも忙しく、それでいて右側はバチストンにフリーでボールを引き出された。最初からジョレンテはアキエメとランデヴー、4+1の最終ラインを置く。中盤はコケ、コンドグビア、ルマルでスライドと決めることができなかった要因は何か。

おれの考えではアルメリアの両SBのポジションがあまりにも中途半端だったことだ。バルサは明確に3-2-5配置だったが、アルメリアは違う。両SBは何をしたいのかよくわからず、実際攻撃に関与できたかというとできていない。アキエメがPAまで突っ込んでくるのが何回かあったがあれはデザインというより流れの中でそうなったに過ぎない。ジョレンテを連れ去るために積極的にいこうぜ、の副産物だろう。

ただ、この2人は中途半端な位置にいることこそが与えられたタスクだったように思う。

正確な3-2-5配置
こうなると、アトレティコは最終ラインを5枚揃えることになり、バチストンとエンバルバに前を向かれた時のリスクが減る。だから中途半端な位置に立たせておき、アトレティコに5バック化させなかった、のかもしれない。
アトレティコとしても中途半端に浮いている大外2枚を放置して後ろに5枚並べるとズルズル押し込まれる気がして最近の取り組みと異なる展開になりそうだ。結果論だが先制した後は異なる展開でもなんでもいいから撤退して引き込みカウンターでも良かった気がするが、この両CB(ヴィツェル&エルモソ)でそれをやるリスクと天秤に掛けたと考えるのが自然だろう。そしてシメオネはやらなかったということ。じゃあ後半の頭からフェリペだったんじゃないかなとも思いつつ、フェリペの去就も関係して選択しなかったのかもしれない。エクスキューズが多いが、どうでしょうね。

・保持では
こちらの疑問はシンプルだ。
"何故コケはコンドグビアの隣を取らなかったんだろう"である。
ここ数戦のアトレティコの取り組みは3-1のビルドアップにIHがアンカー横に降りてきてボールを引き取り前進、グリーズマンの前向きを作る、というもの。

最近の取り組みがこの日は見られず

この日のコケはライン間ポジションのような微妙な位置に固執し、なかなか中盤ラインに降りては来なかった。最近のバリオスとは異なるタスクを与えられていたことは確かだろうが、この45分では判断できなかった。

・ジョレンテの背後を狙うためにコケが相手最終ラインから圧力を受ける位置に置きたかった
・コレアを最前線に置いた形で脅威を押し付ける自信がなかったのでグリーズマンの隣に選手を置きたかった

の2つを想像したが、どちらにしても"一度普段通りチャレンジしてから変化を加えるべき"と何度も言っている。この考えは変わらない。前半の保持配置は間違いであったと断言する。采配ミスだ。それ以上にこの程度の圧力で進めなくなるのは勘弁してほしい。

途中から、ジョレンテの質を押し付けるためにモリーナがあえて低い位置に留まり、エンバルバを中盤に降りさせない形を模索していた。

しかし結局ジョレンテにどうやってボールを届けるのかは改善されなかったし、どれだけジョレンテの負担を増やすつもりなのか。結局後半からコケ→バリオスを交代し、仕組みよりもクオリティで解決を図り一定の成果を得ることになるが、ここは疑問だった。前節までの取り組みを継続してほしかった。そもそもヴィツェル+エルモソって、一番縦パスが刺せる組み合わせだろう。

●後半

後半はコケ→バリオスを交代。上で少し触れた通り、これで仕組みも配置も無関係にバリオスの質で無理やり保持パターンを改善させる。すごいな。50分には早速バリオスがジョレンテの裏抜けを引き出した。前半終盤のモリーナが低い位置にいることによってジョレンテを生かす形を継続。ここにバリオスが絡むことで効果的に攻撃を展開した。この環境でルマルを引っ張る理由はなんだったのか。

その後もジョレンテとコレアのチャンスメイクで何度か決定機を作りながら徐々に収拾がつかないカウンター合戦が始まる。

66分にアルメリアは良い仕事をしていたトゥーレとバチストンを下げてラマザニとルイス・スアレスじゃない方のルイス・スアレスを入れ、前線を駆けっこ上等のメンバーに替える。
アトレティコは最終ラインの枚数を減らしにくいなと思ったら直後にヘイニウド→レギロン。躊躇なく替えた。同時にルマル→モラタ。

この交代でより走力を生かせるようになったアトレティコ。特にモラタが前線で相手DFを引き連れて超スピードで走ってくれるとカウンターが非常に打ちやすくなる。モラタ自身も2つ決定機を得たがGKフェルナンド・マルティネスの好セーブ連発もあり決めきれなかった。ところでモラタはお子さんが9日に産まれたばかりとのことで。よく試合の準備をしてくれたなと驚いた。おめでとう。

さらに75分にはグリーズマン→コレアで決定機。これも止められてしまった。見放されていたな。

ここでアトレティコはコレアを下げてフェリペ。後ろを3枚にしてレギロンを高い位置に出して押し込みを狙った。この日に限ってはグリーズマンよりコレアのスピードを残した方が良かった気はするが。

なかなかボールが回らず攻撃が単発になっていくと同時にネガトラのバランスもクソもないオープンバトルが続く中、89分にレギロンが空中戦で肘を相手の顔面にスパイクしてしまい2枚目のイエローで退場。1枚目は喧嘩が起因しているんだが、2枚目はトランジションの空中戦が続いている時間帯で、強めにいったこと自体は別に責められる部分ではない。本人もそれはわかっていただろう。1枚目はいらなかったが、同時に相手のサイドバックからもカードを引き出していたのも事実。上手く転べばよかったが最低な結果になった。残念。
ここでアトレティコはジョレンテを下げてサウルで中央補完。残念ながら3ポイントを諦める結果となった。


●試合結果

1-1の引き分け。昇格組とのアウェーゲーム。この結果はまたしても糾弾されるものだろう。以下、総括。

まずは前半、アルメリアのアトレティコ対策が光った。モリーナ&ジョレンテの右サイドに攻守ともにうまく対応し、カウンターに晒されるリスクを完璧にコントロールしてみせた。この強気の対応がアルメリアの再奪回の質を高め、優位性を生み同点ゴールに繋がっている。
左サイドにカラスコがいないアトレティコとしては前進の選択肢を大幅に制限され、自信を持って圧力をかけられる環境を作ったアルメリアはコケ&コンドグビアに強く寄せ、常に自信を持って試合を進めた。

それでも、グリーズマンとコレアの機転で奪った先制点は素晴らしいものだった。良くない時間に前線のタレント力で先制点を取り切り、そこから非保持を修正。
これまでのアトレティコの歴史で幾度となく見てきた試合である。そしてそれが、アトレティコが2強に迫る勝ち点を上げるための必要条件でもあるだろう。

しかしこの日は修正が進まない。特にネガトラと相手のロングボールの対応で、右ハーフスペースのアバウトなエリアでバチストンにクオリティを出されて後手に回る。バチストン、上手かったな。悔しいくらいにボールを引き出された。再奪回に怯えて逃げ腰になりながら主導権を奪われ、そのまま前半の内に同点にされる。

後半はアルメリアにもさすがに疲労が出たこともありトランジションが増え、そこで大量のチャンスといくつかのピンチが生まれた。シメオネらしくないリスク多めの戦い方を選び、収支はプラスだったように見えたが望んだ結果を得るには多少の運が足らなかった。
あえてリスクを負った理由はサヴィッチとヒメネスがいない試合で、手堅く勝つというエンディングが望み薄だったことも理由になるだろう。上手くいかないながら、ジョレンテの質を押し付けることでゴールに迫った。2点目が取れていればね。

さて、結果は結果だ。またしても勝てず3位ソシエダに7ポイント離された。
一つ一つ積み重ねていきましょうね。


1/15
パワーホース・スタジアム
アルメリア 1-1 アトレティコ
得点者
【アルメリア】'37 トゥーレ
【アトレティコ】'18 コレア


●ピックアップ選手
ジョレンテ
流石に無理があるんじゃないかと思ってしまうような距離のランニングと運動量。ギラついたプレーで結果を変えようとファイトした。

コレア
スタメン起用に応える今季4点目。ポジトラで単独で前を向いて局面を解決してしまう突破が何度もチャンスを作った。
後半に更なる決定機もあったが運に見放された。

バリオス
後半から出場。とにかく最終ラインからの信頼が厚く、ビルドアップは常にバリオスを経由した。プレス回避もとんでもない質。

モラタ
試合を決めに登場し、2,3回の決定機を迎えたがその度フェルナンド・マルティネスが立ちはだかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?