ラリーガ21-22 27節全マッチレビュー

お久しぶりの全マッチレビュー。
冬の移籍市場が終わり、カップ戦も終盤。欧州コンペティションを進むチームなどなど、年末からバランスが変わっている箇所などをまとめてチェック!


①アラベス 0-0 セビージャ

●メンディリバルが仕込む残留への手立て

アラベスセビージャ

首位マドリーを追うセビージャはアウェーで降格圏アラベスとの試合。
ジエゴ・カルロスとフェルナンドがお休み。ミッドウィークにはELウエストハム戦もあり難しい時期になる。シンプルな3トップのセビージャは久しぶりに見る気がする。前節のダービーで負傷したパプ・ゴメスはどのくらい休むのでしょう。

アラベスは冬に加入したアルゼンチン人、ナウエル・テナグリアが右SBに定着。ラリーガで一番かっこいい名前のマルティン・アギーレガビリアをベンチに追いやっている。奮起してほしい。ちなみに二位はサンティ・コメサニャ(ラージョ)だ

メンディリバルの風味が各所に出ているアラベスは勇敢に前プレする。セビージャを困らせていた。ホセルは意外と限定守備が上手い。
僕は中盤の構成が”とにかく頑張る”に設定されているチームが好きなので、今のアラベスはとても好み。2年連続でシーズン終盤の粘り腰を見せてほしい。
中盤ではこちらも冬に補強したアルゼンチン人、エスカランテが色々バランスが良かった。我らがアトレティコ出身のトニ・モヤ君も良いミドルシュートを打つなど張り切っていた。

同数でプレスをかけてオカンポスとエン=ネシリに裏抜けされたらどうすんねん、と思ったがシンプルに気合と根性で耐えていた。このチームは気合根性を発揮しやすい環境を作ってあげた方がいいのかもね。その意味では上位勢とのホームゲームは得意なのかもしれない。知らんけど

セビージャは中央にフェルナンドがいない、前にパプ・ゴメスがいない、などでビルドアップに苦労。主にアクーニャがどうにかしていた。
もっとラキティッチがやればいいのに、と思っていたがたぶん中盤ラインを抜けてトップに近づくタスクだったと思われる。マイナスのクロスに合わせるしか仕事がなかったが。セビージャはこういうのが多いイメージだ。特定のメリットを優先した配置に拘ってどこかぎこちなくなる。

トランジションはどちらのチームも先頭を走れる選手がいるが、リオハがクンデを振り切れる様子は全くなかった。そして君はいつ点を取るんだ。
ただ、持ち前の謎運動量で右WGの外側を駆け上がるなどわけわからん動きをしていて非常に良かった。いなくなるとペレ・ポンスがちゃんと埋めていたのでたぶん本当に逆サイドまで行っていいよ、という設定になっている。アラベスは右からのクロスでクンデの向こう側に2,3人突っ込む形でチャンスを演出。右大外のエドガル・メンデスが良いボールを送れている。3ポイントへ色気が出る前半となった。

後半も決定機を作ったのはアラベスの方。エドガル・メンデス、ペレ・ポンスに決定機が来た。終盤にはホセルにも。

セビージャは選手交代もこの試合のためではないものが多く、最後は合わせるだけの決定機がムニルに来たが決めきれずドロー。首位を狙う立場としては不満が残るが、CL圏で良いなら悪くないターンオーバー。これで優勝が消える可能性もあるが、まあそれはそれ
アラベスはホームでポジティブな試合ができた。どれか一つでも決まっていれば、という試合で、気分良くプレーできた時間帯も多かった。最後投入されたバジェホあたりがラッキーボーイになれれば残留が近づく。

●ピックアップ選手
ヤシン・ブヌ(セビージャ)
セビージャの守護神は3ポイントを目指すアラベスの前に立ちはだかった。得意なはずのビルドアップはアラベスの迫力に押された。


②オサスナ 1-0 ビジャレアル

●目標達成へ向けて
【オサスナ】’63 チミー・アビラ

オサスナビジャレアル

今季は上位勢との試合が固まる厳しいカレンダーのオサスナ。ここも上位4連戦の3つ目。踏ん張りたいホームゲームだ。誰が点取るねん状態をいかに解決するか、という課題を上位勢との試合で問われるのも厳しいが、トップ10フィニッシュへ意地を見せたい。

ビジャレアルはエースのジェラール・モレノがスタメン復帰した17節以降、11試合で8勝2分1敗と絶好調。なお、本人は24節からまた離脱。
ダンジュマも復帰してハットトリック、前節ではジェレミー・ピノが一試合4発の大暴れ。バランスさえ見つければもしかするかも、という状況になった。

オサスナは最近ルーカス・トロがアンカーポジションになる4-1-4-1が多かった印象だがこの日は4-4-2で。ハビ・マルティネスに注目。左のルベン・ガルシアのところからそれとなく前進できるが、PA内に説得力がない。
一方のビジャレアルはトップ下のような配置のロ・チェルソが積極的に右側、カプエの隣まで降りてくる。ジェレミー・ピノをトップまで押し上げ、オーリエが高い位置を取るがオーリエの出来がかなり酷い。良い連携もないしイージーなミスも多かった。アルベルト・モレノは相変わらず至る箇所に顔を出してチャンスメイク。ダンジュマ、エストゥピニャンを邪魔せずいつも良い位置にいる。神ポジション。

ボールを握りながらもスコアを動かせないビジャレアル。センター線の守備が堅いオサスナからすると、真ん中あたりを押してくるこの日のビジャレアルはそんなに危険ではなかった感。
オサスナも放り込んでもPA内で違いを作れていなかったが63分、中盤でのボール奪取から左サイドのルベン・ガルシアとマヌ・サンチェスがめちゃくちゃ走ってクロス。最後はファーでフリーになっていたチミー・アビラが頭で合わせてホームチームが待望の先制点。

この日はビジャレアルの日ではなかった。ダンジュマは抑え込まれ、ジェレミー・ピノもプレーエリアを確保できず。最後までゴールを割れなかった。アルベルト・モレノの負傷は心配だが。
オサスナはよく守ってビジャレアル相手にシーズンダブルをやってのけた。
この敗戦でビジャレアルはCL圏内がやや遠のく事に。そしてオサスナは10位以内フィニッシュへ貴重な勝利となった。

●ピックアップ選手

チミー・アビラ(オサスナ)
前線で違いを作る事に苦労した試合だったがクロスに飛び込んで値千金の決勝点をゲット。相手CBにストレスをかけ続けたファイトも見事だった。


③ エスパニョール 2-0 ヘタフェ

●先制すれば強いエスパニョール、先制されると弱いヘタフェ
【エスパニョール】’18 カブレラ ’27 OG

エスパニョールヘタフェ

勝てば安全圏入りできそうな2チームの試合。
徐々にだが確実に降下している昇格組のエスパニョール。意外と年明けから未勝利。ただ、その間も無得点の試合はなく、どうにかなりそう感が漂う。そのどうにかなりそう感が危険な気もしている。ラウル・デ・トーマスの当たりも止まっていない。きっかけがほしいホームゲーム。

対するはキケ・サンチェス・フローレスの下、異常に守備が改善したヘタフェ。開幕7連敗した頃とは完全に別のチームになっている。同時にエネス・ウナルが謎覚醒し余裕で降格圏を脱出している。一つ上の順位のエスパニョール相手に鼻息の荒い試合。得点ランキング2位同士のストライカー対決にも注目。

エスパニョールはフェルナンド・カレロというあまり見ないCBが先発。あとは冬にクラスノダールからレンタルしたトニー・ヴィリェナも先発している。
ヘタフェはダミアン・スアレスがいない。エネス・ウナルとボルハ・マジョラルの2トップはこの日も爆発できるか。

エスパニョールは後方2-2で安定して前進。両SBがヘタフェ3CHの脇に立って効果的にボールを回した。トップがWBと HVの間を背後へランニングしてそこにロングボール、といった明確な狙いもあった。ヘタフェはネガトラが割と良く、一発狙えそうな雰囲気。であったが18分、CKからカブレラに決められた。高かったな。ヘタフェはセットプレーでやられてはダメな人員のはずだが。ボールも良くて防げなかった。27分にはダルデルの突破がオウンゴールを誘ってエスパニョールが2点目。エスパニョールの良いところばかり目立つ前半となった。

ヘタフェは選手交代の選択肢を持つ事もできず、やはり現状は無失点で耐えてこそのチーム、という感じ。耐えられるチームは作れているので、こういう試合はノーカンと割り切りたいところ。あとはエネス・ウナルの爆発待ち。何とか残留圏で踏ん張れるか、正念場となる。
エスパニョールはようやく年明け後の初勝利となった。狙った攻撃ができていた雰囲気もあったし、何をそんなに苦しんでいたのだろう、という試合だった。まあその狙った形が出せる相手なら、という感じなんでしょうか。あとは11月28日のソシエダ戦以来、12試合ぶりのクリーンシートとなった。

●ピックアップ選手
レアンドロ・カブレラ(エスパニョール)
古巣相手に手痛い一撃。守備においても空中戦で無敵の強度。久々のクリーンシート勝利をもたらした。


④バレンシア 3-1 グラナダ

●飛び道具が物を言う
【バレンシア】’48 ゲデス ’51 マキシ・ゴメス ’62 ソレール(PK)
【グラナダ】’56 OG

バレンシアグラナダ

コパデルレイ決勝進出が決まったバレンシア。おめでとう。ただ、プリメーラでは大晦日のエスパニョール戦から7戦勝ち無し。前節マジョルカ戦でようやく新年初勝利となった。イライシュ・モリバ、ブライアン・ヒルをレンタルで借りたがどう組み込むか。ヴァス(アトレティコへ完全移籍)が抜けた中盤のフィルターにも注目したい

ジェットコースターのようなシーズンを送るグラナダは開幕からの7戦勝ち無しが嘘のように勝ち点を重ねたが、新年からまた急降下。5連敗もあり、まだ新年から勝ち無しだ。年明けてから連敗してるチーム多すぎないか
ハットトリック含む5戦6発で沸いたモリーナおじさんもその後1点も取っていなかった。ルイス・スアレスも点取る試合だいたい負けてるのが悲しい

お互い冬の新加入をスタメンで使っている。バレンシアはCBのキュマルト、グラナダは中盤のペトロビッチと左サイドのウズニ。全員初見。

開始3分でバレンシアのトニ・ラトが負傷してヘスス・バスケス投入。アトレティコ戦でも出てたな。
そのバレンシアは4-1-2-3のような4-1-4-1のような。ゲデスは何でもできるから大外に置かれがちだがおれは真ん中に置いてほしい。中盤はプレッシャーがかかっているようなかかっていないような。かけられないから4-4-2に出来ないんです、というか。
グラナダはバレンシアSBの背後を積極的に狙うランニングでチャンスを演出。なるほどバレンシアは良くない時期を過ごしているんだなとわかる前半。やりたい事がやれている様子はなかった。

グラナダはCBにラウル・トレンテが定着した事で後方がようやく安定。健康なシーズンを過ごすルイス・ミジャも含めバランスがある。あとみんな良く走る。新加入のウズニも裏抜けとアクロバティックなフィニッシュを持っていて一発ありそうな雰囲気を感じる。

それでも先制したのはホームチーム。48分にソレールの必殺のFKにゲデスが合わせて先制。これもまた、このチームの強み。相手チームには防げない質のボールが出てきた。仕方ない。ゲデスはこれでついに今季10点目。
さらに51分にはコーナーフラッグ付近からのFKで追加点。マキシ・ゴメスが点取るの久しぶりに見た(今季3点目)。ゴールパフォは手慣れていたが。

こうなると能動的に点が取れないグラナダは終戦となる、と思っていたら56分、バレンシアの右サイドが淡白な対応をして突破を許す。1点差。ここもバレンシアの甘さ。
そしてバレンシアは乗っているマキシ・ゴメス目掛けて放り込んだボールでPKゲット。グダグダしてきた。ソレールが決める。

グラナダはモリーナを入れて前線の枚数を増やすなどしたが、まああまり効果がない事は自分達でもわかっているレベルの話。悪くない前半を過ごしたがセットプレー2発は仕方ない。日が悪かった。
バレンシアは全然良くなかったがセットプレーで試合を決められるのは大きい。おれに言えた事ではないがヴァスがいなくなって明らかに中盤のバランスが悪い。イライシュ・モリバあたりがバランサーになれるといいね。ボルダラスはもしかするとムサにその立場を期待しているのかなと思うがどうなんだろうか。

●ピックアップ選手
カルロス・ソレール(バレンシア)
FKからアシスト2つにPKでチームの3点目。
チャンスメイクに苦しんだ試合で飛び道具を披露した。


⑤マドリー 4-1 ソシエダ

●タイトルへ、そしてCLパリ戦へ突き進む
【マドリー】’40 カマヴィンガ ’43 モドリッチ ’76 ベンゼマ(PK) ’79 アセンシオ
【ソシエダ】’10 オヤルサバル(PK)

マドリーソシエダ

トップ7直接対決一つ目。
ここを勝てば2位のセビージャと8ポイント差の独走となるマドリーはクロースが負傷欠場。カマヴィンガがスタメン。
ウクライナ代表のGK、アンドニー・ルニンがベンチにいる。

年末に気が狂うほど負けたソシエダは年明けから8試合でクリーンシート6回と安定。冬加入のラフィーニャが良い異物感を出しているのもいい。飛び道具になれる存在。苦手な上位対決でどんな試合が出来るか。

この試合で特徴的だったのはお互いの非保持で、ソシエダは4-4-2のブロックで構え、マドリーは珍しく積極的に前プレした。カマヴィンガ、カルバハルも前に飛び出す良い配置で同数プレスを敢行。必要条件なのでしょう。特にパリに勝つためには。

スコアは10分に動いた。ダビド・シルバが得たPKを職人オヤルサバルがゲット。マドリーの前プレはSBの裏へのロングボールでひっくり返される場面を連発していた。

マドリーの保持はカマヴィンガがカギになりそう。ブロックの外側で受けるモドリッチと、内側へ入っていくカマヴィンガ。徐々に侵入していくマドリーは40分、ブロックの外からカマヴィンガのゴラッソ。とんでもない左足を持っている。さらに43分にはモドリッチのゴラッソ。球際の優位を得たマドリーが、個の能力で試合をひっくり返した。

ソシエダは後半からラフィーニャ、ジュアハを投入。推進力が欲しい。
マドリーはこの日プレスバックが良い。相手PA付近まで運んでしまえばボールを取られても結局良い追い返しでもう一回ボールが取れる。なんだかいつもとは違う感じだ。
保持を失ったソシエダはマドリーのカウンターも止められなくなる。終盤にはヴィニシウスにPKを取られて万事休す。ベンゼマが今季20点到達。さらにアセンシオにも決められ4失点。また上位勢相手にプランを遂行できない試合になってしまった。
マドリーはCLパリ戦に向けてのチューニングが進んでいる様子。逆転勝利へ期待が高まる。

●ピックアップ選手
ルカ・モドリッチ(マドリー)
ポジトラでも敵陣深くでも、超抜テクニックを披露。一段階上のプレーでゲームを支配した。あそこで逆転ゴールを決められる胆力は見事としか言いようがない。


⑥カディス 2-0 ラージョ

●新生カディスは降格圏脱出へ虎視眈々
【カディス】’55 アルカラス ’63 イドリシ

カディスラージョ

降格街道まっしぐらのカディスはホームにラージョを迎える。

そのラージョも序盤の勢いはどこへやら。年明けからは勝ち点1しか取れていない。こちらも2022年未勝利のクラブだ。しかも2得点しか取っていない。特にホームでは開幕から10戦無敗と突き抜けたが、ここで3つ落とした。なかなかに厳しい。そんな中でミッドウィークにはコパデルレイも戦ってきた(ベティス相手に1-1で惜しくも準決勝敗退)。キツい日程を跳ね除けられるか

さて、全く違うチームになってしまったカディス。中盤コンビは先季降格したバジャドリードのコンビ(2人とも冬にレンタルで借りた)。イドリシ、ルイス・エルナンデスも含めて冬に獲得した選手が4人スタメン。監督も代わって良い方向に向いているのかチェック。
まあ中盤の2人は保持は上手いのでそれとなく。主に右から進んで放り込んでどうにか、という感じ。イドリシは対人でバケモノのような突破をしているがこの構成だと宝の持ち腐れ感はある。放り込みがファーに流れた時要員。非保持はちゃんと両サイドも引き切ってそこにロサーノも参加する守備。この辺はこれまでのイメージに近い。

ラージョはこの相手ならボールを握れそうかと思ったがそうもならず。CBはボールを持ててもSB、CHに入れたところで激しく圧力がかかるプレスに四苦八苦。ミドルプレスに弱いって感じ。ただ、徐々にアルバロ・ガルシアのところに蹴っ飛ばせば突破してくれる確信を得て、ここを狙いまくる。ここのフラン・ガルシアとのコンビは、止められないチームには止められない。セルジ・グアルディオラに触るだけ、というクロスを送るなどチャンス演出。(ふかした)

後半からラージョはイシに変えてベベ。左から放り込む形を強化する狙いかと。
先制点はカディスに入る。セットプレーからアルカラスがゲット。さらに63分にはなんて事ないクロスをルカ・ジダンがファンブルして2点目を献上。開幕戦でもやってたけど彼は色々問題ありかも

何はともあれカディスはこれで4戦負け無し。ここ6試合で2勝3分1敗と登り調子でアラベスを抜いて18位浮上。ようやく残留圏が見えた。ただし、ここから地獄の7連戦。アトレティコ、ビジャレアル、バレンシア、ベティス、バルサ、アトレティック、セビージャ戦と続く。本当にキツい。ここで得意の上位相手の粘り腰で勝ち点を積めるか。
ラージョはここから降格って事はさすがにないだろうが、コパデルレイも準決勝で負けてモチベーションの置き所が難しくなった。このままダラダラいって来季も改善されず、なんて未来は見たくない。イラオラ監督の舵取りに期待したい。

●ピックアップ選手
ウサマ・イドリシ(カディス)
冬にセビージャからレンタルしたアタッカー。加入後初ゴールもゲット。ゴールシーンはラッキーなものだったがこのレベルだと無双できる突破力を見せた。チームを残留に導く得点パターンを作れるか


⑦エルチェ 1-2 バルサ

●悪いなりに勝ち切るバルサの狙い
【エルチェ】’45 フィデル
【バルサ】’60 フェラン・トーレス ’84 デパイ(PK)

バルサエルチェ

一試合未消化でCL圏へ浮上した絶好調バルサはエルチェ戦。

一方のエルチェも好調だ。降格圏をうろちょろしていた序盤戦から一転、特にホームゲームではここ5戦で4勝1分、9得点3失点とハイレベルに安定する。好調のビジャレアルに年明け以降では唯一の黒星を付けた。ボイェも7ゴールで先季の自分に並んだ。2桁得点を取ってアトレティコに移籍してほしい

ボールを持つのはやはりバルサ。エルチェは4-4-2で撤退する。ピケのところにプレッシャーが行きにくく、高精度のロングボールがデンベレ目がけて飛んでくる。モヒカは大変な仕事。
奪うと手数をかけずに攻め込むエルチェ。まずはボイェのところにボールが収まるのでポイントにする。あとはモヒカの駆け上がり。攻守に忙しいが、このクロスからチャンスメイクする。テテ・モレンテがあわやの場面を作った。
バルサは丁寧に、そして背後を勢いよく突く攻撃で何度もエルチェゴールに迫るが、運もなく前半は無得点。さらに運が悪い事にペドリがクリアしようと蹴ったボールがフィデルへのナイスパスになり、先制点を献上。ホームのエルチェは願ってもいない点が入って、前半終了。

バルサは後半頭からフェラン・トーレスを入れて、ペドリとフレンキーの配置を入れ替え。あれこれやったがエルチェがコンパクトにブロックを作って1対1でやられない守り方をすれば意外とどうにかなる。IHが有効にボールに関われていないところがこの試合のバルサの特徴。エルチェのCHがマンツーマンで張り付いていた。
60分にようやくバルサが同点。右ワイドでデンベレの1対1を用意してクロス。最後はフェラン・トーレスが決めた。追いついたものの、機能性はあまり説得力がないこの日のバルサ。逆にエルチェは固く守る事を継続しながらあくまでも2点目を狙った。ペレ・ミジャに決定機が来たがテアシュテーゲンに阻まれる。

その後はフェラン・トーレスが何度も何度も決定機を迎えるが外し続け、勝ち越し点は84分のPK。メンフィス・デパイの久しぶりのゴールでようやく勝ち越し。とんでもないところに蹴り込んだ。エルチェは良く守っていた分残念。

エルチェは最後まで勇敢にプレス。3点目を恐れるよりも同点ゴールを奪いに行った姿勢は非常によかった。さすがのグッドチーム。私の推しチームです(とアピールしておく)

バルサは正直全然良くなかった。その中で逆転勝ちした事が今の充実度なのかなと。あとは裏抜けを狙ってそこにロングボールが出てくる、という共通理解が良い印象だった。狙うゾーンが明確な分、変な焦りのようなものはなかったように思う。こういう試合で勝てた事は自信にも繋がる。1試合未消化ながら、これで3位浮上。セビージャの背中が見えた。

●ピックアップ選手
フェラン・トーレス(バルサ)
後半からの出場で同点ゴールをゲット。良い動き出しでシュートに直結する動きを連発して後半の展開を作った。と同時に、4,5回の決定機を逃していた事もまた事実。本人が一番わかっている事だろう。



⑧セルタ 4-3 マジョルカ

●セルタ主催の花火大会 尻に火が付くマジョルカ
【セルタ】’13 ガリャルド ’25 デニス・スアレス ’61 ’90+6 アスパス(2点目はPK)
【マジョルカ】’17 ジオバンニ・ゴンサレス ’49 OG ’87 サルバ・セビージャ(PK)

セルタマジョルカ


さてセルタのホームゲーム。前節アトレティコ相手に躓いたが引き続き好調だ。この日はトップにサンティ・ミナではなくチアゴ・ガリャルドを使う。不思議なメンツ。

マジョルカは冬にラツィオから獲得した電柱、ヴェダト・ムリキの質が高いらしい。194cmとのこと。年末から離脱していたイドリス・ババがようやくスタメン復帰。

マジョルカがまあまあボールを持っていたが13分、スタメン抜擢のガリャルドが決めてセルタが先制。マジョルカは横パスの対応もセカンドボールの反応も緩かった。しかし17分にすぐ同点。ハウメ・コスタの再奪回から大外のジオバンニ・ゴンザレスが合わせて同点。グダグダしてきた。2人ともこのチームでの初ゴール。

マジョルカはトップ下の久保が前に出る4-4-2で非保持。なんとなく前プレしたい雰囲気があるが設計されている様子はあまりなく。電柱を使い始めて突然オールコート前プレしようというのはよくわからない。ベルトランとデニス・スアレスのビルド配置を意識して守れているわけでもなく、素直に撤退した方がいいんじゃないかなという印象。まあPA内も緩いんだが
特にセルタの右サイドはただ追いかけるだけでは止められず、簡単に突破される。2点目はそこから。最後はデニス・スアレス。
ライン間もまったく警戒できておらず、セルタは自由にボールが回る。

後半。マジョルカは右SHのジオバンニ・ゴンザレスが明確に最終ラインに落ちて5バック。49分にいきなりセットプレーからマジョルカが同点に。記録はオウンゴールだがセルタはゆるふわな対応。61分にまたセルタが勝ち越し。マジョルカは5-4-1でペナライン付近でライン設定しておいて大裏のロングボールを使われた。かなり嫌な失点。正直5バックの意味もあまりわからない
ここでセルタはようやくタピアとサンティ・ミナが出てくる。ベルトランとタピアの使い分けは、可動範囲的な問題なのかなと。ベルトランはボールを引き出しに広く移動できるので、このチームの中盤の底に向いてると思う。

87分に三度目の同点。ウーゴ・マージョのかわいそうなハンドでPK。しかも退場。
一人多くなっても全くボールを持てないマジョルカ。なぜかここで突然元気になるデニス・スアレスが何度も真ん中を突き破り、ハンドを誘ってPK。もうめちゃくちゃ。アスパスが決めて4-3で決着。

セルタは終始印象は良かった。3失点ともそれぞれ運もなく対応も微妙、4得点は全て悪くない形、というどう評価したら良いのかわからない試合。セルタっぽい。
マジョルカはスコア的には何度も追い縋ったが4局面どこを切り取っても全然良くない。システム的にも、そして交代策も正直何がしたいのかよくわからない。残留争いに参戦決定。

●ピックアップ選手
デニス・スアレス(セルタ)
1ゴールとPK奪取。広く動き回ってボールを引き出し、毎回形が変わる大変なネガトラに毎回ちゃんと対応。かなり走っていた気がしたが、一人少なくなったロスタイムにもうひと頑張り。PK奪取で最終的に勝利に貢献した。



⑨ベティス 1-3 アトレティコ

●CL圏を争う死闘の行方は
【ベティス】'45+5 テージョ
【アトレティコ】’2 '61 フェリックス '80 ルマル

スタメン

トップ7対決の2つ目!レビューはこちらだ!


●ピックアップ選手
ジョアン・フェリックス(アトレティコ)
今季初のドブレーテで決戦勝利の立役者に。
好調をキープできるか。



⑩ アトレティック 3-1 レバンテ

●修復不可能なレバンテ。アトレティックはEL圏へ挑戦
【アトレティック】’63 ベスガ ’76 イニャキ・ウィリアムズ ’88 サラガ(PK)
【レバンテ】’90+1 デ・フルートス

アトレティックレバンテ

しっかりと勝ち点を積んで気づけばEL圏も見えそうなグッドチーム、アトレティック。コパデルレイはバレンシア相手に準決勝敗退となった。
絶望のレバンテはここ3戦で7ポイント。アトレティコとエルチェに勝つ、というアンチがーすけを発揮してカムバック目前。ここを勝てばついに19位を捕まえるが、さて

レバンテは”前の3人でどうにかなる、なんて事ありますか?”という配置。ならないけど。5バックもいつも通り緩く、簡単に裏抜けされる。さらに前半ロスタイムにはモラレスが負傷交代する絶望。お祓い行った方がいい。
アトレティックはイニャキ、サンセの2トップが積極的に背後を取る。サンセはまじで速い。この日は右大外からの侵入を意識してしつこくクロスを放り込んだ。結構ネガトラを気にしていた様子。カウンターだけ止めれば点はどこかで入る、という設定に見えた。

こういう試合に早めに点を取れずに楽できないのがアトレティック、という感じはするがこの日も63分、丁寧に放り込み続けてようやくゲット。突っ込んできたベスガが決めた。今季初ゴール。76分にイニャキが裏抜けで追加点。レバンテのクロスを跳ね返したところがぽっかり空いて誰もいなかった。レバンテのDFは3枚もセンターサークルに残ってるのに。こういうチームが降格するんだなとついに感じてしまった瞬間。たぶんここで終戦でしょう。今後のカレンダーもキツいし浮上の予感は全くない。

コパデルレイもあったアトレティックはこの日バレンシアガ、レクエ、ダニ・ガルシア、ラウル・ガルシアを休ませる事もできた。イニゴ・マルティネスの怪我だけ心配だが。これで勝ち点40到達。EL圏を狙う資格を十分に有している。マルセリーノ監督の関係も永遠に続きそうなほどマッチしている。

●ピックアップ選手
アレックス・ベレンゲル(アトレティック)
右SHで躍動。ベスガの先制点をアシストし、2点目のイニャキへのスルーパスも共有。それ以外にも危険なボールを送り続けた。前半には左足で強烈なミドルシュート。


●まとめ

ラリーガは27節が終了。いよいよ終盤戦に入る。
・上位
3強はそれぞれ勝ち。ちなみに今節アウェーで勝ったのはバルサとアトレティコの2チームだけ。
マドリーは2位セビージャとの勝ち点差を8として独走体制に入る。ソシエダ相手にCLパリ戦への試運転ができた事もプラスだ。目標の置き所が他のチームとは異なる。首位は揺るがない。
バルサは厳しい日程の中、狙った形がなかなか出ない難しい試合を逆転で勝利。後で振り返ったら”大きかった”となりそうな勝利になった。
アトレティコは怪我人多発で苦しみながらもベティスとの直接対決を制した。バルサと共にCL圏に復帰(バルサは一試合未消化)

セビージャ、アトレティコとの連戦に敗れたベティスが一気に5位まで転落。コパデルレイとELを挟む大変なカレンダーだった。
そしてこちらも共に敗戦となったビジャレアルとソシエダ。特にソシエダは上位直接対決の成績が絶望的で、上より下が気になり始める。

追いかけるのは安定感のあるアトレティックと破壊的なバレンシアの2チーム。この辺りのチームは明確な目標を持つ終盤戦となる。

・降格争い

監督も変わり、スタメンも変わったカディスが4戦負け無しで浮上。残留圏まで1ポイントまで来た。19位のアラベスもメンディリバルの下、2位セビージャに引き分けた。"みんなで前線から追い込もう"というスタイルを短期間で突き詰めたのは見事。さすがの手腕だ。頑張るしかないチーム状況にフィットした頑張るサッカーができており、悪くない雰囲気が漂う。


降格候補にあげるのは3チーム。

レバンテ
最下位独走のレバンテはここ3試合で7ポイントと復調気配だったが、またも崩壊。アラベス、カディスが説得力を持った取り組みを積み重ねる中、どこか他人事のような試合をしてしまった。モラレスの怪我次第だがカムバックには手遅れと見る

グラナダ
良い波に乗れば余裕で連勝しそうなグラナダだが、年明けから未勝利で波が来ない。やや淡白に見える守備が気になる。今季もセビージャ、アトレティコに勝っているように"当たり"を引けば上位にも勝つ能力はある。ここからエルチェ、アラベス、ラージョと続く3試合でポイントを積めないと、いよいよ降格圏が見えてくる

マジョルカ
20チームで一番説得力を感じない状況にある。
撤退守備と遅攻、という偶発を求めるのが難しいスタイルだが、攻撃陣のコンビネーション炸裂待ちの攻撃ではなかなか確実な勝利とはいかない。個の質もそこまで高くなく、別の方法で、という様子もない。良い組み合わせを探しているうちにここまで来てしまった感。そして良い組み合わせなんてこのメンバーにはない、という結末になりそう。久保の魔法の杖は残留に値するのか。


残り2ヶ月弱となるシーズン。最後まで楽しみましょう。
では次は週末、ホームのカディス戦のレビューで。

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