その一本を止められるチーム CL Round16 1stLegアトレティコvsユナイテッド(H) 2022.2.23

いよいよ迎えたCL。死に物狂いでGLを突破し辿り着いた決勝トーナメント。

グループBの全マッチレビューはこちらのマガジンにまとめました



対戦相手は3年連続となるイングランド勢、マンチェスター・ユナイテッドである。まずはホーム、マドリードはワンダ・メトロポリターノでの1stレグとなる。


ラングニック・ユナイテッドのレポートはこちら

順位的にもアトレティコと似たような感じ。違うところはあっちは監督を変えたところ。チーム状況はあまりよろしくない。
ロナウドに勝ちたいという一点だけ考えても、アトレティコは絶対に勝ちたい相手だ。


●スタメン
・アトレティコ

オブラク
ヴルサリコ / サヴィッチ / ヒメネス / ヘイニウド / ロディ
コンドグビア / エレーラ / ジョレンテ
コレア / フェリックス

カラスコが例のアレで3試合の出場停止。名誉のアレである。
クーニャが欠場。直前にコケがメンバー外になり欠場となった。週末オサスナ戦からベンチに復帰したグリーズマンがこの日もベンチ入り。濃厚接触者となりメンバー外だったルマルがベンチ入り復帰している。
個人的には予想通りの5バック。最近4バックが多かったアトレティコにとっては1/16のスーペルコパのアトレティック戦以来のシステム変更となる。
ジョレンテはWBではなく一つ前で。ヴルサリコ&ジョレンテの縦関係はシステムを変えても継続する意志だ。トップはスアレスではなくコレアとフェリックス。


・ユナイテッド
デヘア
リンデレフ / ヴァラン / マグワイア / ショー
フレッジ / ポグバ
ブルーノ・フェルナンデス / サンチョ / ラッシュフォード / ロナウド

こちらは直前にマクトミネイが外れた。右SBはなぜかリンデレフをチョイス。結論から言うと最後まで理由はわからん
前4枚はいつも通り。

スタメン


●前半
アトレティコが優勢だった前半。保持は33.2%。しかし、アトレティコのペースとなった。非常に良い時間を過ごした。ハマっていた非保持から、前プレと撤退のフェーズに分けて見ていく。

・前プレ
ボールを持つのはユナイテッド。後方保持に対してアトレティコは積極的に前プレ。

非保持1

ユナイテッドは国内での戦い同様、最終ラインの4枚が並列に広がって保持する。アトレティコは相手左SBショーにはジョレンテ、右SBのリンデレフにはロディがプッシュする。そのため、上の図だと"SBが前に出れば?"と見えるがちゃんとそれを牽制している。

非保持2

右に出た時
ロディが後方、ラッシュフォードへのパスコースをカットしながら激しくプッシュ。ポグバの足下以外の選択肢をカットし、ここで捕まえる。それにしてもロナウドは裏抜けを狙って縦に引っ張る狙いをあまり持たなかった。これはアトレティコの最終ラインにとっては楽だったね。

非保持3

左側
ジョレンテが正面から寄せる。ヴルサリコはサンチョに背後を使われないように警戒しながら距離を詰める。
ここではフレッジに戻るボールが狙えた。彼はターンが不安定で、ここにCHがプッシュして背後から奪う。スカウティングレポートで書いた、"フレッジとマクトミネイへの圧力を強めてボール奪取→速攻を狙う"を実践。強気だったアトレティコ。

ユナイテッドは普段、真ん中にマクトミネイが立ってCBからのパスを引き出すが、この日は不在のためフレッジがアンカーポジションでボールを引き出そうとしたが明らかに不慣れ。CB間に落ちなければボールを引き受けられず、前進をサポートできない。落ちるなら落ちればいいのに。とは思った。たまに落ちてた。
アンカーが不安定だとどうなるかというと、対戦相手はアンカーにくっついて守る必要がない。ブスケツ相手だったら密着マークでボールが入らないように警戒しなければならず、そこにトップの1枚or中盤の1枚を割かなければならない。
だがフレッジは後方から出てくるボールの扱いが不得手、ターンも精度が低く、正直ボールが出てから寄せても取れた。25分にも結果ファールにはなったがコンドグビアが寄せて簡単に取り切った。笛が鳴らなければ一点ものだった。
また、右SBのリンデレフも配球に長けている様子は全くなく、ロディのプレッシャーを受けながら前向きのプレーは出来なかった。

アトレティコは最終ラインから前方に付けるボールを狙ってエレーラ、コンドグビアのところでインターセプトを連発。ラリーガでも最近見た事ないレベルで前プレがハマった。奪ったらとにかく大外を使ってクロス。ヴルサリコの低いクロスもこの日は精度がよく効果的だった。また、ロディも前プレ中の奪取ならスタートポジションが高く、リンデレフ相手ならスピードの優位もあった。フェリックスの先制シーンはCKの二次攻撃だったが、正確なアーリークロスをピタリと合わせてみせた。さらに45分にもFKの流れからクロスを送ってヴルサリコのポストに当たるヘディングを引き出した。前半の彼は今季ベストの出来だったと言っていい。


・撤退
ハーフウェー付近までボールを進められたら撤退。ロディは最終ラインに戻って5バックを揃え、大外を最大限に警戒。

撤退

この日のシメオネの設定はロナウドとブルーノよりもWGをリスペクトするというものだった。というかWGを塞げばブルーノとロナウドは勝手に持ち場を離れた。そのための5バック。まずは大外を使わせない。ライン間に速いボールみたいなパスが通せる出し手がいないのか、勇気がないのか。全く出てこなかった。
こうなるとアトレティコの狙い通り、ユナイテッドはブルーノがボールをもらいに後方を落ちてくる。

ブルーノ落ち

この試合は主に右SBリンデレフ付近に。ここならロディが出てくるのを抑制する事もできるので選択したと思われる。抑制できてなかったけど
落ちてくるのは良いのだが、その時にフレッジ&ポグバのCH2人がどのような位置で何をするのか。そこが定まらないままロナウドまでボールを触りに落ちてくる。そしてラッシュフォードがWGポジションからいなくなる。

ロナウドまで

これではアトレティコにとっては何も怖くない。というか楽だった。サンチョとラッシュフォードの大外のドリブルを警戒しようと思ったら勝手にウイングポジションからいなくなるんだから楽にきまっている。

18分頃からはラッシュフォードとサンチョの位置を入れ替えていたが、右に動いたサンチョがワイドに張り続け、ラッシュフォードに逆サイドでアイソレーションしてほしかったのかと想像する。
ただ、アトレティコは大外のアイソレーションを警戒するための5バックであり、サイドチェンジされる事もなく。45分通じて簡単に守った。


・アトレティコ攻撃の手立て
保持の平均ポジション

保持基本


この日のアトレティコの攻撃は前プレで奪って高い位置にいる両ワイドを使って一気に攻める形と、セットプレー。この2つだけでチャンスメイク。そして得点に繋げた。45分のヴルサリコのヘディングが決まっていれば、という感じ。

後方からの構築でも選択肢は2つ。
・ヴルサリコへのハイボール
・エレーラからの配球
を狙った。
ユナイテッドが前方から捕まえに来るため基本的にビルドアップはしないで蹴っていく。

保持1

狙いはここ
最近リーグ戦でも使っている、ヴルサリコ目掛けて蹴って、ジョレンテが隣にいる形。この日はさらにコレア、エレーラの2人も近い位置でサポートし、それとなく進める。

もう一つは中盤の底のエレーラからの配球。彼が足下でボールを持つと、必ずと言っていいほどフェリックスが顔を出してボールを引き出す。直近のオサスナ戦でも書いた箇所だが、エレーラからはボールが出てくる確信がフェリックスにはある。この2人は相性が良い。というかエレーラはフェリックスのような選手に気分良くボールを触らせるのが上手い。おもちゃ貸してくれるお兄ちゃんみたいな。

保持2

前半13分には顔を出したフェリックスが引き取って一気に前進。PA付近で止められたが、再奪回してヴルサリコの際どいクロスまでつながった。

保持3

亜種。近づくフェリックスに視線が集まったが大外で1対1になっていたロディ。ロディがエンバペだったら得点になっていただろう。ネイマールでもよかった


・ユナイテッドCBの持ち上がり
アトレティコの2トップは相手CBからやや距離を置いて守った。流れの中でヴァランに1回、マグワイアに1回、自分でボールを持ち出して侵入する場面があった。

画像10

ヴァランが自分で持って上がる。パスコースが消されに消され仕方なく、という感じ。
アトレティコとしては許容していた部分。そのまま持ち上がられていいとまでは思っていなかっただろうが、CBをフリーにしても何も起きない。特にマグワイア。もしかしたら持ち上がっていただいてロストしてくれる事を期待していた可能性まであるほど無警戒で前進を許容した。
アトレティコにとってはSBから斜めにボールを刺されるような形の方がよっぽど危険で、アトレティコ2トップの警戒もそちらが優先。ユナイテッドのCBは前に出ようと思えば出られた。特に何も起きなかったが。

画像11

フレッジがCB間サリーでSBを押し出し。ショーがハイポジションを取り、ジョレンテが対応に走る。これは"右WBが相手WG(この時はヴルサリコがラッシュフォード)を見る形を崩したくなかった"ため。ヴルサリコが相手SB(ショー)の対応をすると前プレの構成上ロディが大外まで戻るのが間に合わなくなるためと思われる。左SB(ショー)の大外駆け上がりにはIH(ジョレンテ)が頑張る約束があった様子。ちなみに逆サイドの右SB(リンデレフ)が駆け上がったら多分ロディがマークしてヘイニウドがWG(ここではサンチョ)を担当すると思われる。普通に右SBでダロットorワンビサカが先発していたらここの対応はどうなっていただろう。リンデレフでよかった。

画像12

などと言っている間にマグワイアは大きく前進。これがアラバやピケだったら放置するのは危険で、対応を迫られて別のところに穴ができるがこの試合は大丈夫。マグワイアも何をしたら良いかわからなかった模様。後半も特にこの形を使われる事はなく終わった。


●前半終了
1-0でアトレティコリードで折り返し。
セットプレーの流れから先制。前プレがハマり前線での奪回を連発。撤退すれば相手アタッカーに勝負するスペースを与えず正しく守った。中盤の機動力で上回り、押し気味で試合を進めた。
上手く守れてはいたものの、正直大外でドリブル突破を仕掛けられたらどうなっていたのかはわからない。その場面がなかったから確認できないまま終わった。ただ、サポートの距離や角度によっては変な穴ができる可能性もあるし、この11人の組み合わせで試合をするのがそもそも初めてなアトレティコとしてはわからない箇所はあった。だからこそユナイテッドは全然チャンスにならなそうでも大外をWGとSBで仕掛けてみるべきだったと思う。少なくとも一回は。それすら試さなかったのはよくわからない。ラングニックが試合後、前半の選手の姿勢に結構怒っていたがそりゃそうだろう。

アトレティコの保持についてもだ。当社比になるがエレーラとコンドグビアのコンビではラリーガ降格候補相手でも効果的に前進できる自信がない。この試合ではできてしまった。ユナイテッドの中盤守備はクソが付くほど緩慢だったと言っていいでしょう。そういう意味では1-0で終えた前半のアトレティコに、合格点をあげられないという意見もあっていいと思う。もっと点取れたよねという。結果論だが。わたしは甘々の緩々なので余裕で合格点です。幸せな45分間だった。
どこかで取れればいい、と思っていた得点を開始7分で取れたのは何より大きい。これならもう一点、どこかで追加できそうな気がする。アウェーゴールルールのない戦いにおいて、先制点はあまりに大きいアドバンテージになる。

では、戦況が変わっていった後半戦の戦いを見ていく。


●後半
さて後半。双方選手交代は無し。リードされたユナイテッドがやり方を弄る。
具体的にはこの2つ
・ポグバのポジション
・ビルドではなくロングボール

ポグバの位置が高くなった。というか正確には中盤の配置がそもそも変わってSBのタスクも定義した。

後半配置

4-1-4-1の風味が強くなったユナイテッド。ポグバを右、ブルーノを左に配置してタスクを整理。というかよくあんな無法地帯のままやってたな前半は。
“WGのサポートを誰がするんですか?”をやっと規定した形。ポグバとブルーノがするよ。という。

で、ポグバのスタートポジションが高くなるとさらにビルドが心許ない。じゃあ蹴ろうか。

ショー

蹴る。
まず背後を狙って、アトレティコに整理された前プレそのものをやらせない。別のゾーンで勝負しましょう、という形に変えた。
まず背後へ蹴って押し込む事。

サイド

ボールサイドのSBも近づき、3人。ロナウドがボールサイドに来る場合(主に左側)は4人。逆サイドにも2人張る。フレッジと後方3枚はネガトラ要因。やっとタスクが見えたユナイテッド。

これ、SBが前向きになったら最初に背後へのランニングを使う、っていうのも事前にスカウティングできていた事で、おれでわかるんだから当然アトレティコもわかっていた。というより、前半からこういう試合になると思って準備していたと思う。シメオネは。だからアトレティコが焦った、とかはない。やっと思ってた試合になったねという感じ。

ただ、思っていた形と望ましい形はイコールではない。わかりやすく変わった事はボールの奪取位置が変わった

奪取位置

宇宙一わかりやすい図
中盤のコンドグビア&エレーラが前向きにボールを取れていた前半。攻撃も効果的になったし、リスポーンしたらもう目の前に敵!を繰り返していた前半だった。
後半は奪取位置が低くなり、攻撃を繰り出す前にやる作業が極端に増えた(プレス回避)し、その作業が得意な選手があまりいない構成が晒された。オサスナ戦もビルドが良かったわけではないし。後半開始から目に見えてフェリックスが単独でプレスを剥がしに行ってファールをもらう場面が増えた。もちろんよくやれていたが単純に”それ以外選択肢がない”場面があまりに多くなり、危うかったのは事実。ユナイテッドの前線の連携が合い始める前に手を打ちたい穴が見え始めてきた。


・動き出す試合
先に交代はユナイテッド。66分に3枚替え
リンデレフ、ショーの両SBを替えて、ワンビサカとアレックス・テレス。高い位置を取るのが得意コンビを入れたので、上記の両サイドの攻撃をさらに強める狙い。
もう一枚はポグバ→マティッチ。ここは意外だったが、ポグバよりもフレッジを優先して残した。

マティッチ

マティッチがCB間落ちして明確に両サイドを押し出す形。それと両SBが高い位置を取ると配球する人が必要になるので、それもマティッチがやる。こうなるとアトレティコは前半のように中盤のデュエルでボールを刈る場面がなくなり、CBが3枚揃っているよりも大外の対応をしたい。ここがスカウティングレポートで4-4-2がいいね、と言っていた箇所であるが、アトレティコはここで人員の問題があり、走力を担保できる交代策がない。具体的には両ワイドを残り15分上下動させる選択肢が欲しかった。

75分の交代はロディ、フェリックス→ルマル、グリーズマン。
ロディは怪我もありここで交代。ルマルしか選択肢がないのがこの日の現状。ヘイニウドをWBにしてCBを入れる事も考えられたが、ここで出番が来なかったフェリペ、エルモソはその理由を重く受け止めてほしい。
フェリックスは良くやっていたしまだ動けそうだったが。グリーズマンでトドメを刺す狙いがあった交代。

・唯一の隙
80分、ユナイテッドが追いつく。
スローインにアトレティコは前プレ。フレッジのギリギリのフリックでブルーノが前向きになる嫌な形。中盤ラインを抜けられて最後はエランガへラストパス。ヘイニウドの対応が少しギャンブルだったが、抜け出されて冷静なフィニッシュ。やはり警戒すべきはエランガだった。同点に。このシーンは後ほどピックアップする。


この試合のたった一つのカウンター裏抜け。この一本を止められるアトレティコをよく知っているだけに。”そうだった。今は止められないアトレティコなんだった”という感想。残念だ。良いフィニッシュだった。


終盤はセットプレーでグリーズマンが決定機を迎えるなどしたが、あくまでも2点目を失う事を警戒してそのまま終了。



●試合結果
1-1のドロー。最低限を成し遂げたとも言えるが、守り切りたかったという欲もある。何より、危険な場面は90分を通じて失点シーンのみだった。ここさえ守り切れば、という場面を守れなかったのはここ最近見せている弱さのツケか。
全体的にアトレティコは良かった。主に前半の、ユナイテッドが保持してくれる時間帯は特に危険もなく守れた。ユナイテッドがアトレティコの5バックに対してどこを攻略したいのかわからないまま進む時間は楽だったし、開始7分に早々に先制していた事もあって相手を見ながらのんびりと。セットプレーから追加点も狙えそうで、コレアとフェリックスがファールを受けたりCKを獲得してくれたりするのも、さらに優位になるきっかけに。

後半はユナイテッドはようやく狙いを整理。マクトミネイがいれば自然とこんな感じの攻撃になったのかもな、とも思うので2ndレグはどうしましょうかね。アトレティコは相手SBの背後を突くカウンターのような武器をチラつかせる事ができれば牽制できたかもしれないが、素直に守備に回るしかなかった後半は現状をよく反映していた。守りきれなかった事も含めて、これも文脈と言えば文脈だ。

スコアを見れば"2点目が取れそうだった"事と、"無失点で終われそうだった"事の両面があり、本当に1-1の結果は最低限だ。個人的には勝つなら先制し、終盤にカウンターで追加点を取っての2-0、最低でも同点でこの90分を終えたい、と予想していたので、最低限。何度も言うが、合格点ではある。カウンターに強みのあるユナイテッド相手に、スコアを追いかける時間は作りたくない。この前提は2ndレグも変わらない。追いつかれたが、まだ何も失っていない。アウェーでも勇敢に戦いたいし、戦える実感を選手は、シメオネは掴んだのではないだろうか。

多くを望むのなら、この経験値と自信をラリーガの試合にも反映させたいところ。それができていないのが最近のアトレティコなのだ。その場限りの良いプレー、その場限りの良い試合ではなく、継続。

その意味で、良い文脈がいくつかあった。
・ヴルサリコとジョレンテの関係
・エレーラとフェリックス
・ヘイニウドのHV起用

の3点。

ヴルサリコが大外の高い位置を取ってハイボールを蹴り込む。ジョレンテが隣でサポートし、ビルドアップする事なくロングボール一本で陣地を奪回する形。最近の試合でしきりにチャレンジしていた形がこの試合でも生きた。サヴィッチからの高精度のボールでジョレンテが背後を取る、という直接的な決定機は作れなかったが、右サイドで相手にプレッシャーをかけ、ビルドアップできなくてもどうにかなる形を持てたのは最近のラリーガでの取り組みの結果だ。
また、前半の箇所で書いたエレーラとフェリックスの関係。週末のオサスナ戦でもやっていた事をここでもやったにすぎない。これも文脈。
そしてヘイニウド。加入から継続して左SB、5バック時は左HVで起用を重ねてこの大一番で自信満々のプレーを見せた。ボール奪取を連発し、前向きに相手に向かっていくポジティブな守備はチーム全体に良い影響を与えているように見えたし、同時起用されたロディにも良い刺激になっている事を期待したい。2人でサイドを攻略する攻撃は課題しかないが。
失点シーンはややギャンブルなチャレンジ。背後を取られてしまったがアグレッシブな対応そのものは決して悪いものではなかった。あそこでスライディングした事は失敗だったが、ああいった場面でスライディングできる選手じゃなきゃダメなのだ。ヘイニウドは必要な戦力だ。継続してほしい。


また、文脈とは無関係にこの試合に勝っていればラッキーボーイだったのはロディとコンドグビアの2人。
ロディは強度のある前プレで前半の戦いを先導。先制点もアシストして出色の出来。カラスコではなくヘイニウドでもない、自分自身の良さを磨いてほしい。この日はそれができていた。
コンドグビアはアンカー起用で3CBの前に立つと思いきやIHで前プレの急先鋒に。フレッジを捕まえてのボール奪取。あるいはポグバ、ブルーノ相手に球際で譲らずボールを刈り取っていった。驚きの躍動。足を止めて向かい合うのではなく、あくまでも前向きにプレーした時、彼の良さが出た。終盤は息切れし謎のパスミスも見せたが全体を通じて良好のパフォーマンスを見せた。

彼らはスタメン当確の選手ではないし、カラスコが出られれば、コケが出られればベンチだったはず。だがこの試合においてはこの2人がいて良かった。この2人がスタメンで良かった。そう思わせてくれる選手がいる事はシンプルに嬉しいし、誇らしい。素晴らしい活躍だった。2人に拍手を送りたい。そして継続してほしい。これも継続なのだ。ラッキーボーイで終わってはダメだ。


2/23
ワンダ・メトロポリターノ
アトレティコ 1-1 ユナイテッド
得点者
【アトレティコ】'7 フェリックス
【ユナイテッド】'80 エランガ



●ピックアッププレー
失点シーンを分解しておく。

画像19

スローインをマグワイアが頭で跳ね返してそれをフレッジ、サンチョがダイレクトで繋いでロナウドのレイオフ。
さすが。としか言えないが、サヴィッチに潰されながら前向きのフレッジにしっかりボールを渡した。コンドグビアが寄せたがフレッジはブルーノへボールを通す。積極的にボールに行った結果だが、やっぱりユナイテッドはこういうのは上手い。

画像20

ブルーノは自ら持ち上がって、ラストパスはエランガへのスルーパスを選んだ。ボールは来なかったがサンチョめちゃくちゃ速かった

この瞬間に2つのポイントがあった

・ヒメネスの対応
ボールにヒメネスが出ていった。配置だけ見れば、最後エランガに抜け出された場合にカバーが届くのは物理的にヒメネスしかいなかったので間違った対応、に見える。が、間違いではない。
ここまで触れずに来たが、この日のヒメネスはポストワークを狙うロナウドを離さずについていくタスクを完遂していた。バルサ戦でフェラン・トーレスのレイオフに好き放題やられたアトレティコ。先季からずっと、3CBの真ん中にフェリペを置いた時、3CBの目の前の相手を捕まえられずにズルズル下がる場面が散見されるが、この日のヒメネスは非常に良かった。ラインの高さを保つ役割を黙々とこなし、背後へのランニングはサヴィッチに任せていた場面もあった。
この場面でもヒメネスの矢印が前を向いたのはCBの決まり事の優先順位として約束されていたはず。まあ自分が最後尾である認識を持ってステイできたら素敵だったが。優先順位として別に間違えた選択ではなかった。

・ヘイニウドの対応
先程も書いたがもう一度。ああいった場面でスライディングできる選手じゃなきゃダメなのだ。惜しかった。


●ピックアップ選手
エレーラ
アンカーポジションで球出し。少ない選択肢から正しい選択を続けて試合を作った。守備では後方を抑える時と前方プッシュする時の選択が巧み。彼の位置でボールを取り切り、攻撃に繋げた。

フェリックス
唯一の突破口となるべく躍動し、ロディのクロスに反応して先制点をゲット。広く走り回りポジトラではファールをもらって前進をサポートした。ロディとのコンビネーションも相変わらず良好。

コレア
巨漢CB相手に単独でボールキープして前向き。自陣PA付近までプレスバックしてボール奪取と彼らしさを存分に出した。これがアトレティコの10番だと胸を張れるパフォーマンス。

コンドグビア
アンカーではなく左IHで。前向きのプッシュの質が高く何度もボール奪取。ポグバとの対人も譲らなかった。前半の良い流れを作った一因になれた。終盤は息切れしたがよく耐えた。

ヘイニウド
ハーフスペースに突っ込んでくる相手を警戒し、ハイボールにはCBの強さを。ライン側ではSBのしつこさを。よくやっていた。同点のシーンのチャレンジは惜しかったが、取れそうだったし仕方ない。アグレッシブな対応だった。

ロディ
大外を上下動。ユナイテッドの守備は大外の警戒が薄かった事もあり、普段のリーグ戦よりも余裕を持ってプレー出来た。クロスの質も上々でフェリックスの先制点をアシスト。

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