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それぞれのW杯〜アトレティコ・マドリーの場合〜

楽しかったワールドカップも終わり!
アトレティコの選手達の活躍をチラッと振り返ります。全部で12選手がメンバー入りし、グルビッチ(クロアチア)を除く11選手がカタールワールドカップのピッチに立ちました。多いのか少ないのかはよくわからんが、決勝に4人が勝ち残り、3人がスタメン出場。これは全クラブで最多となります。意外。そして世界チャンピオンを3人輩出。当然これも、最多の数字になった。すごいね。

それでは一人ずつ振り返ります。当然全試合見ておりますのでね。いきます。


🇦🇷ロドリゴ・デ・パウル

vsサウジアラビア フル出場
vsメキシコ フル出場
vsポーランド フル出場
vsオーストラリア フル出場
vsオランダ 67分まで
vsクロアチア 74分まで
vsフランス 103分まで

初戦のサウジアラビア戦で全くビルドアップができずとんでもない姿を披露したアルゼンチンのCHをつとめ、なんか彼が悪いんじゃないかという雰囲気にもなってしまった。そのサウジアラビア戦で衝撃の逆転負けを喫すると、メキシコ戦で相棒がパレデスからギド・ロドリゲスに替わるなどしたが、彼のスタメン起用は変わらなかった。決勝フランス戦まで全7試合にスタメン出場した。
当初は2CBからなかなかボールを引き出せず、右の大外にポジションしても前方でパスを待っている選手が少なすぎて前を向く事もままならない、苦しい役割だった。左足は相変わらず使えない。
エンソ・フェルナンデスが組み込まれた3戦目のポーランド戦のシステムであれば中盤でまあまあボールに関与できると同時に、デ・パウルの特徴である前方へプッシュするプレスの強度も発揮されていった。
メッシの背後を守りますという武士的なポジションも彼向きだった。メッシオタクのメンタリティ的にも彼向き。
決勝トーナメントオーストラリア戦ではデ・パウルのGKまでの3度追いがチームに追加点をもたらした。
オランダ戦では得意の喧嘩ファイト。クロアチア戦辺りからは異常にボールタッチが安定し別次元の存在に。決勝でも無敵のプレス回避でラビオを翻弄した。

プレースタイルやタスクを超越し、メッシの鉄砲玉としての役割が彼の生き甲斐でもあるようで、死ぬまで走る覚悟を全試合で見せた。本当にほっといたら死ぬまで走りそうだった。どこまでも熱く戦い、限界なんて知らない、見向きもしない。そんな姿が最高にアトレティコであり、そしてデ・パウルだった。優勝おめでとう。君はメッシの隣に相応しい選手だよ。お疲れ様。


🇦🇷ナウエル・モリーナ

vsサウジアラビア フル出場
vsメキシコ 63分から出場
vsポーランド フル出場
vsオーストラリア 80分まで
vsオランダ 後半終了まで 1ゴール
vsクロアチア 86分まで
vsフランス 後半終了まで

デ・パウルと共に先発した初戦サウジアラビア戦では終始存在感がなく、最初前半を見ておらず後半だけ見ていた自分は出てる事にさえ気づかなかった。チームは敗れ、メキシコ戦ではベンチスタート。代わりのスタメンがモンティエルというのがなんとも切ない。途中から出てきてどフリーのミドルを吹かしていた。

その後はスタメンに戻り、右大外のピンの役割で上下動を繰り返した。単独突破は別に求められていないのでそれなりにモリーナ向きの仕事である。
右寄りのFWがメッシである編成上、ビルドアップで右SBがボールを受けたところで前向きにパスを付けるような仕事はほぼなく、とりあえずビルドアップの逃げ道、あとはいけるタイミング(主にロングカウンター)の急先鋒になる事が攻撃の仕事だった。
その仕事が身を結んだのが準々決勝オランダ戦。相手HVの内側までダイナミックに斜めに突っ込んでくるとメッシが神しか知らないタイミングでスルーパス。ピタリと納めて先制ゴールを決めてみせた。どこでそんな技を。
こういうシーンを見ると、やっぱり"スルーパスが出てくる"という事実が選手を走らせるんだなと。良いランニングだった。続く準決勝クロアチア戦でも、フリアン・アルバレスの独走カウンターを追い抜いて突っ走り、ランニングコースを開ける作業に一役買った。
非保持対人のクオリティも文句なし。決勝では対面するエンバペに終始苦戦しながらも世界で一番難しい任務を90分間貫いた。世界一に相応しい活躍だった。


🇦🇷アンヘル・コレア

vsサウジアラビア 出場なし
vsメキシコ 出場なし
vsポーランド 出場なし
vsオーストラリア 出場なし
vsオランダ 出場なし
vsクロアチア 86分から
vsフランス 出場なし

グループステージから全く出番がなかったが楽しそうな笑顔がたまにtwitterで回ってきていた。出場する事があるとすれば大量得点差でメッシを休ませる時くらいなのかもと思いつつ、初戦で負けた事もありそういう機会はなかなか来なかった。
決勝トーナメントでも出番はなく、でもディバラでも出番なしなら仕方ないよな、と思ったら準決勝で最後に出場。3点差ついてたし。良かったな、出られて。
決勝もベンチから見つめる事となったが、見事に世界一のチームの一員としての務めを果たした。お疲れ様。


🇫🇷アントワーヌ・グリーズマン

vsオーストラリア フル出場
vsデンマーク 90+2分まで
vsチュニジア 73分まで
vsポーランド フル出場
vsイングランド フル出場
vsモロッコ フル出場
vsアルゼンチン 71分まで

初戦からプラス1を生み出すフリーマンとして真ん中に陣取り、トップ下なのか右のIHなのかというポジション。縦パスを引き出したと思ったら大外でデンベレとレーンを被せて内側へランニングするなど好き放題プレー。2戦目のデンマーク戦ではエンバペの決勝ゴールをアシストするピンポイントクロスを放り込むなど躍動した。
ジルーとの相性は言うまでもなく、フランス代表はタレント集団とはいえグリーズマンの存在は大きかったと思う。シュートは宇宙開発していたが。我が強そうな若手も多いので、なんとなく萎縮するタイプにフリーマンは務まらない気もする。チーム編成上も色んな意味で最適な選手だったような気がする。
準々決勝イングランド戦でも決勝点となるジルーのヘディングをピンポイントクロスでお膳立て。ちなみに先制のチュアメニのミドルシュートもラストパスはグリーズマンから。
準決勝モロッコ戦でも先制点を生み出す飛び出しで勝利に大きく貢献した。
決勝ではマクアリスターの執拗な警戒になかなか効果的にボールに関わる事ができなかったが、逆にグリーズマンがボールに関われないだけで機能性を失うフランス代表の構成を浮き彫りにした。本当にチームの中心だったね。2大会連続の世界一とはいかなかったが、彼自身は今でも世界最高峰のクオリティを持つ事を証明する大会となった。


🇭🇷イヴォ・グルビッチ

vsモロッコ 出場なし
vsカナダ 出場なし
vsベルギー 出場なし
vs日本 出場なし
vsブラジル 出場なし
vsアルゼンチン 出場なし
vsモロッコ 出場なし

第2GKか第3GKとして選出された。たぶん第3。日本戦のPKがグルビッチだったりしたら複雑な気分だったが出番なし。正GKのリバコビッチもでかくてキックが上手かったのでおそらく似たタイプの選手なのかな。
世界3位の一員となった。おめでとう。


🇵🇹ジョアン・フェリックス

vsガーナ 88分まで 1ゴール
vsウルグアイ 82分まで
vs韓国 出場なし
vsスイス 74分まで
vsモロッコ フル出場

まさかスタメンで出てくるとは思っていなかったが、初戦のガーナ戦に左WGでスタメン出場。ロナウドの隣でプレーした。しかもチーム2点目となる勝ち越しゴールをしっかり決めている。このシーンで思ったのは、普段裏抜けしてもパス出てこねえよなという事。決められてよかった。W杯初ゴールおめでとう。
2戦目ウルグアイ戦でもスタメン出場しヒメネスといちゃつく姿を世界中に見せつけ、3戦目韓国戦は温存されるというレギュラー対応。
決勝トーナメントでも勢いは止まらず、スイス戦では狭い位置でボールを受けてロナウドの代わりにスタメン出場したゴンサロ・ラモスの先制点をアシスト。その後も心身ともに充実したプレーを見せてもう一つなんかアシストしてた。アトレティを思いっきり複雑な感情にさせたのであった。

そもそもポルトガル代表ではセリエAのシーズンMVPであるラファエル・レオンと同じポジションで、初戦にスタメンで使われた事がまずびっくりだったが、期待に応える活躍を見せていた。敗れた準々決勝モロッコ戦でもスタメン出場し、速いFKにニアに飛び込んで触るなどらしさ全開。1点を追う82分にも際どい左足ミドルを放つなど躍動した。チームは残念な結果だったが、彼自身は充実した大会となったのではないか。


🇪🇸コケ

vsコスタリカ 64分から出場
vsドイツ 66分から出場
vs日本 出場なし
vsモロッコ 出場なし

初戦のコスタリカ戦、2戦目ドイツ戦はともに後半途中から投入されて中盤に運動量と安定をもたらした。コケのスタイルは大舞台でも監督から信頼されるんだなと再確認。錚々たるメンバーの中でも彼の役割は果たせた。


🇪🇸マルコス・ジョレンテ

vsコスタリカ 出場なし
vsドイツ 出場なし
vs日本 出場なし
vsモロッコ フル出場

グループステージは秘密兵器として温存され、決勝トーナメントモロッコ戦で満を持して右SBでスタメン出場。
右サイドはフェラン・トーレスが大外の幅を取っており、なんでジョレンテが内側やねんと思っていたがおそらく非保持では4バックの右に入り、攻撃ではチャンネル特攻IHとしての起用だったと思われる。そんな無茶な。モロッコの固い守備を崩すにあたって、特にインパクトを残せずに終わったがもしもの際のカウンター対応などで監督が彼をピッチに残したかった気持ちはわかる。なんとなくPKは上手そう。でも1000本は練習してなさそう。


🇪🇸アルバロ・モラタ

vsコスタリカ 57分から出場 1ゴール
vsドイツ 54分から出場 1ゴール
vs日本 57分まで 1ゴール
vsモロッコ 63分から出場

初戦コスタリカ戦、2戦目ドイツ戦ではコケ同様に後半からの出場。そして2戦連発。ドイツ戦ではスーパーなワンタッチゴールを沈めている。いつもやれ。
そして続く日本戦でも一度は日本を絶望の淵へ突き落とす先制点を決めた。CBの背後へ侵入するの、上手いよね。と同時にアトレティコではああいうアーリークロス出てくる事ないよね、という。
モロッコ戦でも後半途中で投入されるとそれまでチームになかったシンプルに背後を狙うランニングを連発しチャンスメイクした。"ストライカー"というポジション自体がオプションのようなチームだったので最優先では起用されなかったが、結果だけ見たらチームの最優先プレイヤーだったのではないか。


🇧🇪アクセル・ヴィツェル

vsカナダ フル出場
vsモロッコ フル出場
vsクロアチア フル出場

グループステージ全試合フル出場。しかし望んだ結果は得られなかった。チーム全体が重苦しく、配球しろと言われてもなかなかに難しいチームだったように思う。配置もコロコロ変わってたし
トランジションに寄せるとヴィツェルのタスクが厳しくなるというのもあり。黄金世代最後の大舞台、最後までピッチにいられた事は良かったなと思う。お疲れ様。


🇧🇪ヤニック・フェレイラ・カラスコ

vsカナダ 45分まで
vsモロッコ 出場なし
vsクロアチア 72分まで

思っていたより出場時間が短かった。WGポジションでの個のクオリティは贔屓目なしに一部の化け物を除けば世界でもトップクラスであると再確認。というより彼もその一部の化け物なのだ。なかなか切り崩せない場面、それこそクロアチア戦の最後のラッシュはピッチに置いて欲しかったな。残念な結果になってしまったが、ワールドクラスのドリブルを見せてくれた。少なくともEUROくらいまでは代表やるのかな?
なお、すでにチームに合流して12/14のテストマッチにスタメン出場している。


🇺🇾ホセ・マリア・ヒメネス

vsガーナ フル出場
vsポルトガル フル出場
vs韓国 フル出場

背番号2を付けて出場。初戦の韓国戦はゴディンとコンビを組んでぐだぐだノープランゲームでそんなに精度のよくないキックをペリストリめがけて蹴り込み続けた。2戦目のポルトガル戦ではフェリックスといちゃついている隙にブルーノ・フェルナンデスに手痛い一撃を食らって崖っぷちに立つ。3戦目ガーナ戦でようやく勝ったものの、得失点差で韓国に屈するまさかの結果に。
試合後はVAR介入の有無を含むPK判定に文句を言い狂って放送禁止用語連発。"いつも通り君らしく楽しんでくれ"みたいな記事をfootballistaで書いたおれの気持ちにもなれ。
今後、FIFAから重たい処分が下される予定。大岡裁きを期待したい


●おわりに

サッカーが好きなら世界中誰でもメッシが好き、と信じて疑わないおれですので。大会は最高のフィナーレでした。素晴らしいワールドカップだったと断言できる。あんな決勝戦、もう見れないよ。なんかマイケル・ジョーダンのブルズみたいだったな。圧勝じゃないところも含めて。圧勝はできない戦力なところも含めてドラマだった。それが凄くよかった。
前半で2-0なんて勝つと思うじゃん。延長後半に勝ち越しなんて、勝つと思うじゃん。それでも、メッシでも、欲しいタイトルを取るのはこんなに難しいのかと。マドリーに2度阻まれたくらいで悲観していられないね、アトレティコも。
史上最高のフットボーラーが、やっと一番欲しかったタイトルを手にした。その用心棒を、その鉄砲玉を、その影武者?をアトレティコの選手が見事に勤めていた事が凄く嬉しかった。
グリーズマンをはじめ、敗れた選手達もみんな最高にかっこよかったよ。また戦おう。サッカーは続いていく。日常が戻ってくるよ。赤と白のユニフォームを着て、燃えるようにピッチを走り回り、泣いて笑って、勝利を叫ぼう。
32の国のサッカー文化に触れて、あらためて思う。おれはサッカーが大好きだ。そしてシメオネアトレティコが必要だ。

さて、日常へ。立ち止まる時間はないぜ

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