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天敵に引導を渡す時 〜マンチェスター・ユナイテッドのスカウティングレポート〜

ごきげんよう。
恐れ多くもマンチェスター・ユナイテッド様のレポートです。やっていきましょう。

アトレティコのCLラウンド16の対戦相手はバイエルン・ミュンヘン、もといマンチェスター・ユナイテッドに決定しました。ちょうどユナイテッドも12月に監督が変わり、僕自身今季のスールシャール時代の試合は惨殺されたマンチェスターダービーしか見ていなかったという事で。レビュワー歴も何年かになってきたのにユナイテッドを書いた事がない!というのをいつもコンプレックスに感じて心を痛めてましたのでちょうど良かったです。嘘です


さてマンチェスター・ユナイテッド。ベッカムにスコールズ、ファーディナンド、ギグス、テベス、ルーニー、ファンニステルローイ以下略といったスーパースターの共演を見て育った僕としては、ファーガソン勇退以降の低迷っぷりはなかなか残念な気持ちでいます。CLに至っては3季振りの決勝トーナメントとのこと。なんと今季は12月からレッドブル系列の重鎮ラングニックを監督に迎えた。
まあ名前だけ見れば豪華なメンバーが揃ったスカッドだが、どんなサッカーをしているのか見ていこうと思う。

・見た試合
1.3 ウォルバーハンプトン戦(H)
1.10 FAカップアストンヴィラ戦(H)
1.15 アストンヴィラ戦(A)
1.19 ブレントフォード(A)
1.22 ウェストハム戦(H)
2.5 FAカップミドルスブラ戦(H)
2.8 バーンリー戦(A)
2.12 サウサンプトン戦(H)
2.15 ブライトン戦(H)


●ここまで
27年間くらい監督を務めたサー・アレックス・ファーガソンが去り、後任のデイビッド・モイーズがクロスを上げ続け、ファン・ハール御大、モウリーニョを経てスールシャールにたどり着いたユナイテッド。気づけば丸3年スールシャールがやっていたがついに解任。そして12月5日のクリスタルパレス戦から、レッドブルグループの大ボス、ラルフ・ラングニックを迎えた。

現在の成績は

プレミアリーグ 5位
FAカップ 4回戦敗退
カラバオカップ 3回戦敗退

という感じ。CLはビジャレアル、ヤングボーイズ、アタランタという地味に難解なグループで、初戦のヤングボーイズ戦を落としながら首位通過した。ちなみにロナウドは5戦連発6ゴールという意味のわからん成績(首位通過が決まっていた最終6節は欠場)


選手はマドリーから優勝請負人ラファエル・ヴァランが加入。そしてドルトムントから何やら使い道が難しそうなジェイドン・サンチョが来た。何より前線にはスーパースターCR7ことクリスティアーノ・ロナウドが電撃復帰した。お久しぶりです。あなたと試合ができる事を心待ちにしておりました。
スールシャール時代のサッカーをあんまり知らないので新鮮な気持ちで。参りましょう。



■システム分解
各ポジションの配員を見ていく。主に4-2-3-1だったり4-1-4-1だったりするが、最終ライン4枚、CH2枚、アタッカー4枚の構成。

システム1


【GK】
プレミアでもトップクラスのシュートストッパーのデヘアが務める。元アトレティコ。
足下の技術だのエリア外への飛び出しだのはほぼ期待できない。最近のプレミアでは珍しい選手だと思う。巨人だが胸板がペラペラでハイボールにも弱い印象だが、とにかくシュートを止める。現時点でチームのMVP級の活躍と言って良い。FAカップミドルスブラ戦に出てきたディーン・ヘンダーソンも勇気のある良い選手だった。

【CB】
我々のよく知るヴァラン。マドリー時代と特に印象は変わらない。無難で安定的、という感じ。スピードもあるしビルドアップも上手だが、特別な長所があるわけではなく、誰と組んでも上手い事やる選手。ただ、追いかけっこは得意だが縦・横の機動力がなく。CHに誰がいるかによって目の前が晒され、上手く守れない場面が散見された。
ヴァランが左右どちらをやるかは相棒次第で、マグワイアを組む際は右、リンデレフ、フィル・ジョーンズと組む際は左をやっている。ちなみに全員機動力がない。

【SB】
右SBはワンビサカorダロット。
脳筋上下動お化けのワンビサカと、頭を使う上下動お化けのダロット、という感じ。まあラングニックの好みはダロットでしょう。右SHをどこ行っちゃうかわからないグリーンウッドが務める事が多かったので、グリーンウッドが内側に入った場合の大外駆け上がりと、そうでない場合は後方待機でやり直し要員になる、が主なタスクなので頭を使えるダロットの方が適任。なおグリーンウッド
ダロットの方がビルドアップが上手い、という評価のようだが、ビルドアップ云々というより内側のレーンにも外側のレーンにも立てるところが彼の良さ。あとは追い込まれても上手い事ボールを失わず味方に渡せる。それをビルドアップの良さと言っているのかもしれない

左SBはルーク・ショーorアレックス・テレス。
ショーは個人的にかなり大好きな選手なのだが、ボールに強く可動域の広いテレスの起用も多い。ブルーノがビルドアップタスクで降りてきたりと流動的な左サイドは多彩な仕事があるが、2人とも上手にこなす。たぶんどっちもクロスは上手いんだが、左からのハイクロスが点に繋がらない事が多い。ポグバが起用されると得点に繋がる事も。そこは後述。

【CH】
中盤はマクトミネイが欠かせない選手。中盤守備の強度を担保する。代わりに使うとしたらマティッチ。相棒はフレッジorポグバだが、ポグバは可能ならもう一列攻撃的な位置で使いたい選手。機動力のあるフレッジが一番手か。
マクトミネイorマティッチがアンカーポジションに入る4-1-4-1でプレーした試合もあった。相手の配置によるのか選手の特性を確認しているのかは不明。どっちも機能性はそんなに差がないと思われる。ポグバが使われる時も実質ポグバとブルーノが並列になるような時間帯も多い

【SH】
SHは左から。サンチョが起用される。大外待ちしてSBの背後を突く裏抜けが上手い。もっと1対1で突破できる選手のイメージがあるが、トップフォームじゃないのかあまり機会はない。トップのロナウドが左に流れがちで、相手DFも連れてきてしまうのであまりクリーンな1対1にならないのも原因かもしれない。
後は、まだ19歳のエランガが重用されている。スピード感があって体力もある。現状ラングニックが一番信用しているウイングアタッカーは彼だと思う。失ったら自分で取り返せ、をちゃんとやれる選手

右。
グリーンウッドが恐らく永遠に戻って来られないのでラッシュフォードが一番手。ゴタゴタの中で残留したリンガードが控えるが、サンチョが左でスタメンの場合の右はエランガの方が序列が上。
ラッシュフォードは大外で待つよりもロナウドに近づいて2トップのようになる場面が多いが、SBが大外を取らないので歪な配置になりがち。あとネガトラも不安定。これが狙いなのかどうなのかいまいち見えてこない。この背後を狙ったカウンターなどは避けたいところ。さらにポグバの非保持配置もふわついており、右サイドは危険を孕む


【FW】
トップ下はブルーノ・フェルナンデスが鉄板。彼が真ん中にいないとこのチームは何も起きないと思われる。4-2-2-2の右SHで使っていた試合などは何がしたかったのかよくわからなかった。
ただ、トップで使われるのがロナウドである現状がまた難しくさせている。久しぶりの再会となるアトレティコの天敵もさすがに37歳、隣に相方が欲しいところだ。スピードも連続性も不十分で、ロナウドを前に置いておけば点が入る時代は終わった印象。でも6戦連続ノーゴールで騒がれるってすごいよね。
ロナウドは自由に左右に流れてこその選手だが、彼が真ん中からいなくなるとラッシュフォードが大外から内へ入ってくる以外にトップポジションを取る選手がおらず、効果的な攻撃に繋がっていない。しかし真ん中から動かないストライカーを置くと左右に流れる役割を今でも一番タスクが重いブルーノがやる事になるのは不安がある。さらに中盤に落ちてボールを受ける選手もいなくなる。前線の起用は基本的にどの組み合わせでもジレンマがあるのが現状。別にこれはラングニックが悪いわけではない


■ビルドアップ
後方DFラインの4枚で横パスを交換しながら縦パスを刺すタイミングを探る。

ビルド1

良い点としては、4枚残っているのでロストする事はない。悪い点としてはどうせ取れないから相手を釣り出せない(出てきてくれない)。
CH2枚が顔を出してボールを引き出すところから前進スタート。この動きはブルーノにボールを入れたいという意図がある。

ビルド2

CHがボールを受けた場合、相手のラインの溝に立ってブルーノがボールを引き出す。相手がCHに食いつけばその先でブルーノが受ける。

どちらにしてもブルーノがボールを受ける事が狙いになる。難しければそのままブルーノが最終ライン付近まで降りてきてボールを引き取る。

ビルド3

ロナウドが近づいてきて左側の前進狙い
フレッジあたりがFW横までアタックする動きと連動する事も。ブルーノを誰がどれだけの強度で警戒するのかは重要なポイント


もう一つ。2/5のFAカップ4回戦ミドルスブラ戦辺りから目に見えて増えたのが、早めのタイミングで背後を狙うランニング。
ミドルスブラ戦では、主に左SBのショーがフリーで前を向いた時にサンチョ、ロナウドが背後を狙う動きを繰り返した。

ビルド4

まず裏抜け狙い。このDFラインを押し下げる動きも、ブルーノのプレーエリア確保に繋がる。”どうせ取れないから相手を釣り出せない”と書いた上記のビルドアップパターンにプラスアルファで、”出てこないなら蹴るぞ”を準備した、という様子。

ビルド5

押し下げてブルーノのプレーエリアを確保。どちらにしてもブルーノにクリーンにボールを入れる形を狙っている。


追加で、相手が5バックの時に見られる形。

ビルド6

SBを高い位置でスタートさせて、2CBと2CHで前進するパターンを使う。前2枚でプレスされている時は主にフレッジが右側に降りて後方3枚に。アトレティコはあまりやらないかな。
WGが内側に入ってきているのでSBがやや浮いており、ここにボールを入れるパターンが多い。ここからボールサイドにブルーノが近づいて侵入する。
フレッジはスタートポジションで高い位置にいてもあまり怖くないが、この形でフィニッシュのタイミングでゴール前に飛び込んでくる動きが非常に上手い


・守備側の対応
守備側の押し引きのポイントにもなるが、中盤はフレッジとマクトミネイにある程度強い圧力を掛けるとボールが取れる。選択肢として、
・失点しないためにブルーノを警戒して守備を敷く
・フレッジとマクトミネイへの圧力を強めてボール奪取→速攻を狙う
の2つが考えられる。このどちらの選択をするのかで試合の流れはある程度見えてくる。


パターン1:ブルーノを警戒

ビルド7

相手最終ライン4枚と2CHの前向きは許容。その先への縦パスを警戒する。ブルーノとロナウドはボールが出て来ないと最終ライン近辺まで落ちていって前進を助ける。この形になったほうが良い。ライン間を使われなければとりあえずは撤退できる。

この対応を5-3-2でやってしまうと、SBに高い位置を取られて上記の通り前進を許す事になる。あまり良くない対応に思える。撤退するなら4-4-2かなと。


パターン2:2CHへプレス

ビルド8

マクトミネイ&フレッジにプレスを掛ける形。前がかりの守備になるが、ロストしてくれる可能性は割とある。ここでボールを取れるなら差し引きプラスになる。ブルーノに背後を取られてロナウド、WGと共に速攻で崩されるリスクもあるので、どう考えるか。そしてこの形を5バックでやるのか4バックでやるのかもポイントだが、5バックで立つとユナイテッドのボールの循環が変わり、そもそもCHを狙い所に設定できない可能性がある。個人的にはこっちもやるなら4バックなのかな、という感じだ。カラスコいないしな(ヘッドロックで検索)。


・どっちもやれば?
中央に人数をかけてブルーノもフレッジ、マクトミネイも全員プレッシャーかければ?と。それはやめた方がいい。ユナイテッドは両サイドに配置される選手が全員クソ足が速いので、エリアを問わず1対1はなるべく避けたい。両SBの運動量もネジが飛んでいるので2人組で大外から仕掛けられると撤退も何もなくなってしまう。そのため、中央で取捨選択したい。


■崩し
上手い速い強い選手は売るほどいるチームだが、クリエイティブな部分はほぼ100%ブルーノ・フェルナンデスに依存する。彼以外のところから相手DFをズラして外すようなプレーはほとんどない。他の選手はみんなタイマンを好んでいる。対戦相手は"引き切って守備をセットすれば警戒する相手はブルーノのみ"と考えてもいい。あとはロナウドと、他の選手はドリブル突破に気をつけましょう。
ブルーノがボールにどう関わるか、どの選手とのコンビネーションを使うか、が攻撃のポイントになる。守る際はブルーノへの警戒レベルは最大限に高め、サイドへ流れる動きなどで数的優位を作って突破する事もあるので形を崩す覚悟でマンツーマンで付いて行くくらいの対応は必要。どの位置なら彼にボールを持たれても問題ないかの設定は綿密に行いたい。この意思共有がないと使われたくないゾーンを突破される可能性が高まる。


保持している時は、狙ってか狙わずかブルーノ、ロナウド共に左サイドへ流れてくる。

崩し1

コンビネーションで突破するのも、失って即時奪回をするのも主に左側になる。左サイドのオーバーロードで突破、と言えば聞こえは良いが、ロナウドがフィニッシャーになれず、右WG(ラッシュフォード)1人しかPA内にいない事も。


右サイドは広いエリアをフレッジとダロットの2人でカバーしている。フレッジがPA付近までアタックしてくる形は魅力がある。彼が不意にドリブルで突破していく事もある。


ラッシュフォードは左サイドでプレーしている時は大外での1対1で内側へ侵入を好んでいた印象があるが、右サイドの場合はすぐに内側へ寄ってくる。

崩し2

ビルドアップの構成上、左SBがすでに上がりきっている場合も多く、右SBのダロットは最終ラインにステイする事が多いため、左で崩しているが右側は誰もいないパターンが多発。ワンサイド完結を狙っているのだとしてもそういう問題か?という構築。

ポグバがいる場合、上手く彼がフィニッシャーの役割をこなす。

ポグバ1

バーンリー戦。この日のユナイテッドは青ユニ。
左サイドの2対2で解決。ショーの良いランニング。

ポグバ2

ポケットを突いたショー。中2枚詰め。カバーニ狙いのグラウンダークロスが流れた先でポグバが空いてフィニッシュ。やはりこういうダイナミックなプレーはポグバの特徴が出る。アトレティコは今季、マイナスの折り返しでゴール正面がガラ空きになる場面が散見されるので要注意の形になる。



■ポジトラ
両翼にスピードのある選手がおり、ロナウドに早めに当ててブルーノが関わりWGを走らせるカウンターは迫力がある。しかし撤退の仕組み上、両翼のスタートポジションが低く、一気に抜け出すような形はそんなにない。後述するが、相手が最終ラインにボールを戻してビルドアップをやり直す形で引っ掛けると一気にスピードアップする。このカウンターは要注意。
ロナウド単独でフィニッシュまで行くスピードはさすがになく、守備側は普通にリスクヘッジしていればカウンターで壊される事はなさそう。むしろ各所へ近づくブルーノへのパスを狙える可能性もある。ポグバが出場している場合は高精度なロングボールが出てくるので蹴らせないように警戒したいところ。
それと、ロナウドは左足でシュートを打つように誘導されるとほぼ力のないシュートに終わる。最近の試合でかなり多い。この辺は衰えかも。サヴィッチの対応に期待



■プレスと撤退
ロナウドとブルーノで前2枚。縦関係の時間帯が多い。後方は4-4でブロックを作る。前線から相手CBの球出しを阻害する事はあまり出来ていない。

守備1

守備ブロックに侵入してくる相手には近い選手が強めに寄せる。マッチアップマンツーのような。

守備2

相手が最終ラインに戻すボールに反応して一気にラインを上げて圧力をかける。この流れの中でボールを奪うとWGが高い位置にいるので一気にゴールへ迫る迫力がある。なんとなくラングニックの匂いのする守備だ。DFラインのラインアップが遅いのは気になるが、ロナウド、ブルーノともう一人いればカウンター完結できるので有効なプレスになる。ちなみにカウンターは全員自分でシュートを打ちたがってじゃんがじゃんがする事も多い。特にサンチョは、あんまりパスもらえないからカウンターくらいは自分で、という選択が非常に多い。


続いて撤退。撤退守備そのものは堅い。CBコンビのマグワイアとヴァランがそもそも強固で、デヘアのシュートストップも際立つ。

撤退がハマらないよくあるパターン。前2枚がかわされ、CHが釣り出された背後を使われる。

守備3

ユナイテッドはSBの絞りが非常に速く、逆側の大外を使うように誘導。クロス対応はGK方向を消すように立つので、ニアポケットにグラウンダーで折り返され、フリーでシュートを打たれる。それをデヘアがナイスセーブ。このパターンがとても多い。ウイングは大外をカバーするほどの守備意識はない。エランガは比較的やっている気がする。

守備4

簡単に使われるが、角度がないゾーンからのシュートならデヘアがほぼ止める。これでジョレンテが大外を取れるなら簡単な試合になりそうな予感もある。

ジョレンテ1

アトレティコに置き換えるとこうなる。アウェーは紺ユニかね?

ジョレンテ2

ジョレンテの質を生かしたい。ニアポケットはコレア。中2枚詰めを抜けて大外に飛び込むルマルのゴールシーンが浮かぶ。


もう一つ。サウサンプトンに同点ゴールを許したシーン。ポグバは、おれが見るに”前向きに圧力をかける守備と相性が良すぎる”という気がする。そもそも最終ラインの前に突っ立っていては勿体無い選手であり、扱いが難しい。

守備5

この場面ではまず、GKまで行った前プレがかわされる。まあアトレティコはオブラクがWBに正確に逃げられるとは思えないんだけど

守備6

プレスに行っている前4枚が外されている。
中央に入ってきたボールにポグバが寄せる

守備7

3人関わって簡単に背後を取られる。そこだけは使われたくなかったね
ダロットが前にも後ろにも出られず最終ラインを破壊された。ポグバを釣り出そうと思えばいつでも釣れる。先程のシーンのように逆サイドに逃げるのではなく、あくまでポグバの後ろ、CBの前の位置を取るイメージで突けば得点機は作れる。最終ラインの設定も低すぎて、CBが前方向にプッシュするようなライン間の見張り方はできていない。グリーズマン、フェリックス、コレアが自由に前を向くスペースはある。フレッジの方が守備は良いね


■ネガトラ
ロストはだいたい相手DFラインの手前。ドリブルで突っかけたり細かいワンツーで抜け出そうとして失敗する場面が多い。ここで失うと中盤の誰か(ブルーノ、フレッジ、マクトミネイ)がボールプレスで再奪回を狙うと同時に、撤退の時間を作る。
フレッジではなくポグバがスタメンだったバーンリー戦で少し気になった場面。

バーンリー戦1

再びユナイテッドが青ユニ。
相手PA付近でロストしネガトラ。マクトミネイはボールプレス。ターンとフリックを止められる距離感で強くプッシュする良い対応。が、この時のポグバの振る舞いが少し整理されていなかった。

バーンリー戦2

リターンで背後を使われてカウンター発動。これは失点になった。崩しの局面ではマクトミネイも背後の確認が甘かったように感じられた。グリーズマンに活用してほしいエリアが空いている可能性は高い。

バーンリー戦3

ポグバの立ち位置が悪い。マクトミネイは間に合っていないが、特に後方の確認をしていない様子。縦パスが通り、マクトミネイはサンド出来ない。結局入れ替わられてヴァランがマークしていた選手に抜け出されて失点。

同じバーンリー戦から別のシーン。ガチャガチャしてマクトミネイが入れ替わられた場面で、マグワイアは強くボールには寄せずステイ。強烈なミドルシュートを打たれたが、デヘアのファインセーブ。

バーンリー戦4

失点場面と配置が似ていたので、マグワイアは入れ替わられるのを嫌がって前に出られなかったのか、あるいは“ライン間で前を向かれても、エリア外ならデヘアが止める”という前提で最終ラインの高さ設定がされている可能性がある。

CBコンビは横、縦の機動力があまりなく、ライン間の出し入れでスペースを作れば中央を攻略できる可能性は十分にある。ヴァランてこんな選手でしたっけね。PA内に引きこもれば固く守れるが、中盤の圧力が緩くてCBが前方に引っ張り出されてしまうケースがある。引っ張り出されるくらいならデヘアにお任せした方が良い、という感じの守り方。

サイドで失った場合は自分で奪い返せスタイル。エランガが重用される理由もこの辺の意識にあるのかも。その間に全体が撤退する仕組み。


■その他
その他、目についた特徴をまとめる。

・CK対応
ニアの速いボールを明確に狙われている。ロナウドがストーンに立つ事である程度対応できている感じはあるが、デヘアもダッシュして飛び出すような動きは得意でなく、弱点になる要素がある。ここにサヴィッチを置いてマクトミネイあたりと大喧嘩させたい

・セットプレー、ヘディング
ブルーノ・フェルナンデスのボールが非常に良い。ヘディングの上手い巨人も多い。そもそもアトレティコは最近セットプレーでやられまくっているので最大限に警戒したい。サヴィッチとヒメネスが存在価値を発揮するべきところ

・90分のプラン
バーンリー戦など、前半で圧力を強められた試合も後半に突然サッパリになる事が多い。原因はわからん。体力がないのか。攻められなくなるどころか相手にボールを持たれて簡単に押し込まれる、押し込まれるとカウンターが効かなくなる、という展開が多い。アトレティコは得意のグダグダの前半戦からの後半のスクランブルでどうにかできてしまうのではないか、という気もする。そんなに上手くいかないかね

・アタッカーの選択肢
フアン・マタとリンガード。とにかく序列が低い2人だが。
FAカップのミドルスブラ戦でマタが途中から出ていたが、相手PA付近でアイディアを出せる選手がブルーノ+もう一人出てくるのが結構嫌だなと思った。上記の通り後半になると全くチャンスを作れなくなる試合も少なくないので、ここの選択肢に彼らが入ってくると厄介だ。馬鹿の一つ覚えのようにアスリートばっかり使ってくれた方が助かる



■まとめ
スールシャール時代をそんなに知らないが、少なくともラングニックで上手くいっているイメージはない。
設定しようとしているのはまず機動力と早めの裏取り、前プレ、即時奪回、のどこを取ってもロナウド&ブルーノコンビとの相性は良くない。トランジションゲームで取り切りたいなら最前線はロナウドではないだろう。バックパスでスイッチを入れるプレスとロナウドの起用はそもそも矛盾している。
ブルーノを中心に据えるのならば押し込んで崩す手助けをするMFがもう1,2枚必要だ。マタかリンガードをブルーノと並列で使う、などが考えられるが使われる様子がない。
結果、トランジションで破壊出来ず、相手を押し込むもブルーノがどうにかするしかない現状がある。騙し騙しポグバを高い位置に置くのだろう。
それならカウンターを狙った方が確率が高そうだが、カウンター発動条件としてWGに高い位置を取らせたい、など工夫が必要。特にラッシュフォードはFWの選手だろう。サンチョも。
ボールに触りたい選手も多く、ワンサイド完結の攻撃はそもそも性に合わないと思われる。
マクトミネイとフレッジがいないと真ん中が成り立たない、が、この2人を使う限り限界がありそうに見える。中盤に前目の仕事と後ろ目の仕事ができる選手に二分されすぎだ。ポグバはとんでもなく上手いが、目立つ場所に弱点を曝け出してくれるボスキャラのようなタイプで、いる方が攻略しやすい可能性もある。理不尽ミドルなどはやめておいていただきたい

守備はデヘアの活躍もあり大崩れするイメージはないが、実はクリーンシートも少ない。効果的に前進できない時間帯は簡単に押し込まれ、隙を見せる事も少なくない。そんな簡単にカウンターでやられる?という失点も多い。特に後半に。
スールシャール時代から見てもクリーンシートは少なく、ラングニックに変わってからはトップ6との試合がないため正直強度も不明だ。ラングニック自身、まだわかっていないのではないか。今のところ一人一人のボールへの強さはあるが全体で見ると穴ができるね、という印象。ポグバの背後など明確に弱点があるが、マクトミネイと並列でCB前にしっかり壁を作る役目を期待するのならポグバである必要もなく、どんな設定にするべきか難しい。ロナウドとポグバ、両ウイングと、みんなそれぞれ一つずつ絶対にやりたくない仕事があり、その妥協点を見つけられればチームになれるのにね、というバランスを感じる。でも妥協点を探している様子はない。機能美を感じない集団である。


アトレティコからすれば先制点が取れればかなり優位に試合が進むと思われる。なんならホームの1stレグは0-0でも良いかもしれない。失点さえしなければ180分間で1点取る事はそんなに難しくなく感じる。逆に先制されて追いかける展開になるとユナイテッドはカウンターを狙いやすくなり、アトレティコは難しい試合になる。


■因縁の相手
アトレティコのチャンピオンズリーグといえば、クリスティアーノ・ロナウドだ。彼無しにアトレティコのCLは語れない。13-14は決勝で、14-15はベスト8、15-16はまた決勝、16-17は準決勝、17-18はGL敗退でELを優勝したが、18-19は1stレグで2-0と勝利しながら2ndレグ、ユベントスに移籍したロナウドのハットトリックに沈んだ。何度も何度も、彼に敗れてきたのだ。この舞台でまた戦える事を、心の底から幸せに思う。
幾つになってもロナウドはロナウドだが、彼を乗り越えるチャンスはかつてなく大きいと言える。やはり彼に引導を渡すのはアトレティコの仕事だ。勝利を期待する。

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