選手交代で流れを変えよう スーペルコパ準決勝 アトレティコvsアトレティック 2022.1.14

さてスーペルコパ。
先季のラリーガ1位アトレティコと、先季のコパデルレイ準優勝のアトレティック。

今季はすでに5節に、9月18日にアトレティコホームで対戦している。0-0のドロー。


●スタメン
・アトレティコ

ヴルサリコ / ヒメネス / エルモソ
コンドグビア / コケ / ルマル / ジョレンテ / カラスコ
コレア / フェリックス

何とも言えないスタメンになった。4-4-2と5-3-2どちらも対応可能、だから何?みたいなメンバーだが、果たして


・アトレティック
シモン
デ・マルコス / ジェライ / イニゴ・マルティネス / バレンシアガ
ベレンゲル / ダニ・ガルシア / オイエル・サラハ / ムニアイン
イニャキ・ウィリアムズ / サンセ

CHにオイエル・サラハが入った。
トップは19節オサスナ戦でハットトリックのサンセを起用。


スタメン



●前半
ふわっと始まりいきなり9秒にフェリックスがゴールネットを揺らしてスタート。(オフサイド)
スコアは動かない膠着した前半の45分だった。

画像2


アトレティコはゴールキックもショートパスから始めるなど後方からのビルドアップを意識。カウンターが一切打てなそうな構成だったので、これ自体は悪くないチャレンジだった。全然前進できなかったけど。チャレンジした事を褒めていこう。小さな事から一つずつなのだ、今は

ビルド

ビルドは後方3-2で、前は5レーン埋め
アトレティックは後方の4-2のブロックは動かさず、前4枚が結構頑張って限定する。この辺はアトレティコの4-4-2守備とは違うところ。SHの可動域が生命線になる。
CH2枚の意識は前を捕まえるよりも背後を使われない事で、コケとコンドグビアに直接圧力をかける事は少なかった。これで前進できないアトレティコってどうなんだ。
ジョレンテとカラスコは大外である程度のスペースを持てているが、ここにハイボールが出ると相手SBが派手に圧力を掛けてくるので打開できない。バレンシアガは顔も怖いし。カラスコがなかなか得意な形でボールを受けられなかった。CHが前向きになれないとフェリックスとコレアも何も出来ず。たまにエルモソから縦パスを引き出すフェリックスが頼もしかったが、ここは最大限に警戒されていた。

一方のアトレティックの攻撃。アトレティコの非保持は5-3-2というか5-1-2-2というか。ジョレンテは隙あらば4-4-2になれるぞ。という色気を出しつつ、ムニアインが神出鬼没すぎて対応できていないような雰囲気。ビビって最終ラインに止まり続けたジョレンテ。

非保持

まず、アトレティックはCB2枚とCH2枚の4人で第一ラインを越えようとする。この時SBは低い位置で関わる。実質6人でのビルドで、SBのタスクはアトレティコのIH(ルマルとコケ)を引きずり出せればそれで良し、出てこないなら余裕で前進、という感じ。CHが前を向いて配球、などは考えずに割り切った設計。

アトレティコが完全撤退する位置まで押すと、今後はSB(主に右のデ・マルコス)が2トップ脇から内側でボールを受けて前進。ルマルに対応させる。

非保持2

IHが釣り出されて中央がコンドグビア、コケの2枚に
アトレティコの対応はこれが設定された約束事なのか、なし崩し的にこうなったか不明だが、この場面がとんでもなく多かった。

で、カラスコが外へ引っ張られ、デ・マルコス、ベレンゲルの2人からサンセ、ムニアインのライン間へボールを入れると

ライン間

サンセのライン間タスクがチームでかなり共有されていて効果的だった。この選手は今季化ける選手なので要注目だ。フリックしてイニャキに裏抜けさせるパスを出したり、マークを引きつけてムニアインのプレーエリアを作ったりとキーになるプレーが多かった。ワンタッチプレーの質が高く視野、判断も上々。あとイニャキはトップスピードに達する速さがバグっているのでこういうフリックでの抜け出しは最高に彼に合っている。


●前半終了
お互い無得点で前半終了。手応えがあったのはアトレティックだろう。この試合の、というか今季後半戦、このシステムで行けそうだなという手応え。両SBがもう少し大外を駆け上がるようなサポートができるとチャンスを作れそうだ。

アトレティコはカラスコの個人技くらいしか解決の糸口を見出せず。ジョレンテはプレーエリアを確保できず四苦八苦。コケはパスミスを連発した。フェリックスとコレアにタイミングを合わせて縦パスを入れるような形もなく、セットプレーでもなんでもいいから一点取って試合を終わらせてくれという試合に。


●後半
・選手交代で流れを掴んだアトレティコ

ロディinジョレンテout

後半


カラスコを右に。それと、コケとルマルの位置を逆にした。
フェリックスが頂点で右コレア左ルマルが気に入らなかった様子。頂点をコレアに変える。

51分にはコンドグビアoutでデ・パウル。コケが真ん中に変わる。

後半の保持


これでアトレティコは左サイドのエルモソ、ロディ、フェリックスにデ・パウルが絡んで保持をだいぶ回復。60分頃まではペースを握った。

62分、CKからアトレティコが先制。フェリックスのヘディングだったが、少しラッキー。良いとこ飛んだ。本当にセットプレーで取った

64分にアトレティックがFKからイニゴ・マルティネスにドンピシャのヘディング、68分にはアトレティコがロディのミドルでチャンスを。試合が動き始めた。

・アトレティックも選手交代
70分のアトレティックの選手交代で、流れが再び変わる。全て同ポジションの交代で3人替えた
オイエル・サラハ→ベスガ
ベレンゲル→ニコ・ウィリアムズ
サンセ→ラウル・ガルシア
の3箇所を交代。この交代で明確に攻撃の狙いが”右サイドからの放り込み”に変わる。

放り込み


左SBも替わった。同時に、アトレティコはコレア→スアレスを交代。一番前にストライカーを今更置いた。効果は不明
アトレティックは2トップがクロスのターゲットに。長身CHのベスガもPAまで。セカンドボールはムニアインとダニ・ガルシアが根性で回収する設計。右IHにコケを動かして根性対決させた方が良いのでは
アトレティックがネガトラにリスクを負っているので、アトレティコとすればカウンターを狙いたい時間帯になる。
しかしここで、アトレティコは見事なまでに押し込まれる。この辺りの脆さはどうにかならないものか。


・セットプレーから2発
まず77分に同点。CKからジェライから決めた。
更に81分にもCKから。こぼれ球をニコが左足で合わせてボールがとんでもない神コースに飛んでしまい、決勝点。スタンドのママも涙。

ロスタイムにはパワープレーで足から飛び込んだヒメネスの足がイニゴ・マルティネスの顔面にジャストミートしてしまうダーティプレーで一発退場のおまけ付き。負けた。


●試合結果
アトレティコは後半、良い時間を作ったがクローズできずに逆転負け。オブラクも試合後言っていたが解決にかかる時間は想像以上に長そうだ。
この試合に限らず、アトレティコが今季の凄く良いところは、明確な意図を持った選手交代で試合のペースをひっくり返せる事。この日もロディとデ・パウルが投入されてあっさり保持を取り戻し、相手を押し込めた。アトレティックの選手交代で再度後手に回ったところはいただけない。逆に、そこが明確に課題で、おれはやっぱり気合と根性だなあと思ってしまう。

アトレティックは2年連続の決勝進出。ビルドアップにも崩しのフェーズにも説得力があり、先制されるとわかりやすい攻略点の変更で逆転まで持っていった。そこまで攻撃のポイントになっていたサンセをあっさり下げられる決断力が良かった。試合後の喜び方を見ても、”そういうところでさえ上回られたな”という印象。良いサッカーだった。


1/14
キング・ファハド国際スタジアム
アトレティコ 1-2 アトレティック
得点者
【アトレティコ】’62 フェリックス
【アトレティック】’77 ジェライ ’81 ニコ・ウィリアムズ


●ピックアッププレー
逆転ゴールのCKに繋がったシーン。あまりにも緩い、最悪な守備対応をピックアップ

画像10


右サイドを執拗に狙っていたアトレティック。
逆サイドでムニアインがオープンになっており、サイドチェンジの選択肢もあったがダニ・ガルシアは右を選択。頑なに右サイドから攻略する。
この場面ではデ・パウルが対応に出た。理由はボールを受けたのがニコではなくSBのデ・マルコスだったからだ。
デ・パウルの判断はこうだ。「ロディはニコを警戒しなければならないのでSBのデ・マルコスに対してが自分が」と思って出ていった。悪くはないが、あまりにも対応の順序が機械的すぎる。
デ・パウルはニコがどこにいるのかすら確認していない。背後を使われ、シュートを打たれた後のデ・パウルのリアクションを是非見てほしい

デ・パウルの守備の優先順位は”ニコがいるであろうロディ方向へのパスコースを消す”事が優先されている。が、一度として背後の状況を確認していない。機械的にそう思い込んで守っているだけで何の状況判断もない。お前はPA内の状況が相手5人味方1人でも同じ立ち方をするのか?

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ただ突っ立っていただけのイニャキにどフリーでボールが渡る。コケからすればデ・パウルの身体の向きから考えて”横パスだけは消せている”と思ったはずだ。イニャキへのパスが通った時のコケのズッコケそうなリアクションも、見てほしい。「そこ通されるんかい」と。

で、ロディだ。誰の事もマークしていないのに最後尾になっている、一体何を守っているんだ?

仕上げはエルモソの"終わってる"と表現したくなるほどの軽い対応だ。イニャキにボールが出た事が想定外で一瞬前に対応しようとしている、ロディの立ち位置が意味不明、などギリギリ擁護できる箇所もあるがその前に何故イニャキにパスが出る前に既にニコに入れ替わられているのか。理解できない。オブラクのスーパーセーブ、ヒメネスはブチ切れ。いつからこんなくだらない破られ方をするようになったのか。悲しくなるシーンだった


●ピックアップ選手
フェリックス
前半はボールの循環が悪くチャンスメイク出来なかったが後半は見違えて良くなった。前半開始早々のチャンス2つを決められたら・・・

ロディ
ビルドアップ、背後を狙うランニングも上質。良くなった。ピックアッププレーの場面はダメ

ヴルサリコ
3CBの一角としてはかなり計算が立つようになってきた。ヒメネスとの距離を縮めてトップの侵入を阻む守りのポジショニングはかなり良い。

オブラク
至近距離シュートをいくつもブロックし勝利へ可能性も見せたが2失点はノーチャンス

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