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革命エデュケーションReBoot

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世田谷学園の国語科教員2人による連載対談。 1回完結の読み切り記事です。 教育にまつわる問題系を根っこに置きつつも、様々なトピックを取り上げます。
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記事一覧

「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」から考える問いかけとしての現代アート

アンダーグラウンドから「道」に出る展示構成 細井 こんにちは! 「革エデュ」特別編はWeb限定のコンテンツなのですが、これが早いもので第4弾になりました。昨年の春は佐藤可士和展について掘り下げた話をしたのですが、今年は、二月から五月まで森美術館で開催されていた「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」から話を始めたいと思います。鵜川さんは、実際、行ってみてどうでした? 鵜川 Chim↑Pomの作品は、過去にもいろんな展覧会やアートフェスで見てきましたが、今回のような単独で

「古典」をありがたがるな!~「古典」から「ニュー・スタンダード」へ~

「古典」ブームは今に始まったことではない?細井 あけましておめでとうございます!  2022年も始まりましたね。新型コロナウイルスの感染状況は昨年末には一度落ち着いたものの、ここにきてオミクロン株が爆発的な流行を見せ、本学園でもオンライン授業が始まりました(1月24日現在)。  さて、そのコロナ禍で本の売り上げが伸びていたそうです。いわゆる「巣ごもり」で読書をする機会が増えたということらしいんですね。僕は実店舗で本を買うことが多いんですが、店頭で平積みになっている本はとにかく

音楽と映像の生み出すエモーショナル・シナジー〜「革エデュ」流映画放談(後編)

※ 教員による1回完結型連載対談記事「革命エデュケーション ex03-2」(Web版 特別編)をお届けします。  前回の予告通り、今回は音楽にまつわる映画についての対談です。興味を持った作品があれば、ぜひ見てみてください! 細井 今回は「夏休み特別版」という感じで、映画をテーマにした対談をしているんですが、『アメリカン・ユートピア』をきっかけに話を始めた前編は予想以上にヘヴィーな展開になってしまいました(笑)。  で、ここからはいわゆる「音楽映画」(音楽が重要な役割を果た

スパイク・リーとアメリカ映画が映し出す夢と悪夢〜「革エデュ」流映画放談(前編)

※ 教員による1回完結型連載対談記事「革命エデュケーション ex03-1」(Web版 特別編)をお届けします。  今回は映画をめぐる対談です。興味を持った作品があれば、ぜひ見てみてください! 細井 こんにちは! 毎日暑い日が続いていますね。  「革命エデュケーション」特別編も3回目になります。前回の佐藤可士和展の回は、反響も大きくて嬉しかったですね。  さて、今回は「夏休み特別版」という感じで、映画をテーマにしてゆるめに話をしていこうと思います。意外にも、これまで鵜川さん

佐藤可士和展から考えるデザインとアート(後編)

※ 教員による1回完結型(と言いつつ、今回は前後編構成です!)連載対談記事「革命エデュケーション ex02」(Web版 特別編)をお届けします。 「佐藤可士和展」そのものは、緊急事態宣言の発令の影響で、会期途中で終了となってしまいましたが、対談を通じて少しでもその示唆的な内容が伝われば幸いです。 前編はこちら↓ 展覧会で見られなかった佐藤可士和の「裏」の面 鵜川 そういえば、少し前の話になりますが、「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」はご覧になりましたか? 国立

佐藤可士和展から考えるデザインとアート(前編)

※ 教員による1回完結型 連載対談記事「革命エデュケーション ex02」(Web版 特別編)をお届けします。 ブランドの象徴としてのロゴの持つ力細井 こんにちは! ここ最近の東京は気温も上がってすっかり春(初夏?)の陽気ですね。今回は「革エデュ 春の特別編」と題して、現在、国立新美術館で行われている「佐藤可士和展」について鵜川さんとトークしていきたいと思います。  この人、さまざまな会社や組織のロゴデザインを手がけているので知名度は抜群ですよね。ユニクロ、楽天、Tポイント

〈ふまじめ〉な学習者を目指して

※「学友」227号(2021年3月発行)に掲載された、世田谷学園の教員による一回読み切り型連載対談です。Web向けに、一部修正してあります。 コロナ禍で世の中は変わったのか?細井 2020年は大変な年でしたね。新型コロナウイルスの流行で、世の中の生活様式が一変してしまいました。「学友」本誌も前期の発行が無くなってしまって(ただ、おかげで「学友ANNEX」が生徒や鵜川さんを中心に活発に動いているのは逆に良い方向に作用した点だと思いますが)。  とりあえず世に出ている僕たちの最

アクティブ・ラーナーは教養主義をアップデートできるか

※「学友」226号(2020年2月発行)に掲載された、世田谷学園の教員による一回読み切り型連載対談です。Web向けに、一部修正してあります。 プレゼンと〈意識高い系〉 鵜川 今年も盛り上がりましたね、弁論大会(2019年11月に世田谷学園学内において本選開催)。中でも、僕自身がここ数年気になっているのは、いわゆるプレゼンの文体・口調で発表する生徒が増え続けていることです。弁論ということで一般的に想定されるような演説っぽい文体でも、演技がかった口調でもなく、あるいは――うちの

正解至上主義を超えるアートの力

※「学友」225号(2019年10月発行)に掲載された、世田谷学園の教員による一回読み切り型連載対談です。Web向けに、一部修正してあります。 正解を求めるな 鵜川 僕は現代アートを鑑賞するのが好きなんですけど、僕が最も好きな二人の展覧会が、この夏(2019年)に東京で開催されたんですよね。塩田千春さんとクリスチャン・ボルタンスキーさんです。しかも、それぞれ森美術館と国立新美術館という、徒歩圏内での開催。これは一体、何エンナーレなんだ!(笑)と思いました。 細井 僕は塩田

災禍が拓いた教育の可能性

※ 教員による1回完結型 連載対談記事「革命エデュケーション ex01」(Web版 特別編)をお届けします。 学習動画を届けろ!鵜川 みなさん、こんにちは。「学友ANNEX」も新年度に突入しました!  ……とはいうものの、僕たちの学校も、多くの学校と同じく休校が続いています。本当に大変な状況です。ただその一方で、授業を受けることのできない子どもたちに向けて、多くの人や企業、団体が、学習動画やコンテンツを無料で配信するという動きも広がっています。  こういった、学習機会の無償

AIのもたらす飛躍と権利のゆくえ(第2回)

※「学友」224号(2019年3月発行)に掲載された、教員による連載対談記事です。Web向けに、一部修正してあります。 発想を飛躍させる/検索から跳躍へ鵜川 さて、前回の話ですが、僕は「予測可能な環境から離れること」の大切さについて語り、一方で細井さんは「微細な違いに目を向けること」の重要性を指摘して終わりました。この二つは、「型」に対する全く逆の方針を示唆する結論でした。つまり、僕は「型」を離れることを、細井さんは「型」を注視することを訴えています。対談を終えてからの数ヶ

アプリのデザインとユーザーの意志(第1回)

※「学友」223号(2018年10月発行)に掲載された、教員による連載対談記事です。Web向けに、一部修正してあります。 鵜川 はじめまして! これは一体なんなんだ、と思われた方のために説明しておきますね。  「革命エデュケーション」というのは、世田谷学園の国語科教員である僕と細井さんとが、〈生徒の生きる現実〉と〈授業で学ぶ様々な事柄〉をつなぐお手伝いと称して、なんやかんやと対談を繰り広げる企画です。詳しくは、学園ホームページの国語科のところに上げてある記事をご覧ください。

学友ANNEXへの前説

※世田谷学園では、『学友』という学内誌を発行しています。そのWeb版を開始するに当たり、コンセプトや今後の展望などをまとめたものがこちらの教員2名による対談になります。 変化し続ける時代の学校教育――教員も生徒も変わらなければならない細井 こんにちは。令和という新時代が始まって半年が経過し、先日は即位礼正殿の儀が行われました。昭和から平成のときは昭和天皇の崩御ということもあって厳粛な雰囲気でしたけど、今回はお祝いムード一色な感じです。 鵜川 そうですね。改元時の十連休も、