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【乗鞍岳】筋肉痛はクマのせい

 2023年9月17日午前4時15分ごろ、前夜に新宿を出発した夜行バスが長野県松本市の新島々バスターミナルに到着する。自家用車で来た登山仲間と合流。午前5時ごろ「松本市乗鞍観光センター」の駐車場に車を停める。登山口となる畳平までの往復バスチケットを購入。登山客の列はできていたがバスが数台待機しており、予定通り午前6時10分ごろ出発する。バスのなかでは爆眠。到着とともに目をさますと雲ひとつない快晴のもと乗鞍岳の峰々が目の間にあった。

 畳平は標高2702メートルで「最も標高の高いバス停」と言われている。午前7時半ごろ登山開始。乗鞍岳の主峰・剣ヶ峰(3026メートル)をめざす。鶴ヶ池の脇を通り過ぎ、岐阜県高山市と長野県松本市の県境に立つ。そこから目の前の富士見岳に登る。午前8時ごろ山頂に到着。槍ケ岳など憧れの北アルプスの山々がきれいに見渡せる。

富士見岳から畳平を見下ろす

 午前8時半ごろ山小屋「肩ノ小屋」に到着。小屋の外壁には1枚の新聞記事が貼られている。それによると、1967年7月に当時皇太子だった上皇ご夫妻と当時まだ子どもだった天皇陛下が乗鞍岳を訪れ、小屋の関係者が案内したという。午前9時10分ごろ朝日岳近くまで来る。眼下に見える権現池が太陽の光を反射して青く輝く。この池はくだんの新聞記事にも登場していた。当時の資料などをもとに「山頂直下で次第に傾斜がきつくなり、上皇さまが『ナルちゃん、あれが山頂だよ』と最後の頑張りをうながしたころ、霧がひいて眼下に権現池の景色が広がった」と伝えている。

権現池が見えれば山頂はもう少し

 遠くに雲海を望みながら最後の坂を登り切り、午前9時45分ごろ剣ヶ峰に到着。ここは日本列島の中央分水界の最高地点だ。深田久弥は「日本百名山」で「乗鞍は北アルプスに入れられているが、遠くから眺めると、北アルプスの連嶺とは独立した形で、御嶽と並んで立っている。そして御嶽の重厚に対して、乗鞍には颯爽とした感じがある」と記す。たしかにこれだけ高度のある山の頂に立つと気分もさわやかだ。

剣ヶ峰の山頂

 山頂には立派な鳥居があり、近くには山頂を示す標柱がある。だが記念写真を撮影したい人でごった返している。3連休の中日なので無理もない。時間が経てばすくだろうと山頂の崖下で昼食のスープとおにぎりを食べる。だが写真待ちの行列は途絶えることがない。待つのも面倒になって撮影は断念する。

山頂付近は大行列

 午前10時40分ごろ山頂を離れる。帰りは来た道を途中まで戻る。この一帯には「東京大学宇宙線研究所附属乗鞍観測所」や「コロナ観測所」といった施設がある。標高の高さゆえに観測に適した土地なのだろう。高山地帯といえばここは「高山の霊鳥」と呼ばれるライチョウの生息地としても知られる。だが残念ながら出会うことなく、正午すぎ畳平のバス停に戻ってきた。

 午後3時ごろバスで「松本市乗鞍観光センター」の駐車場に戻る。近くの温泉施設「湯けむり館」でひとっ風呂浴びる。脱衣所に入った瞬間、強烈な硫黄臭が出迎えてくれる。改めて乗鞍岳が活火山であることを実感する。硫黄臭に包まれながら、乳白色の湯に浸かると一気に疲れが吹っ飛んだ。

 いつもなら入浴後は食事を取りたいところだがまだ日は高い。足を伸ばして「奥飛驒クマ牧場」(岐阜県高山市)に立ち寄る。登山者にとっては天敵であるクマだが、柵を隔てれば愛すべき存在だ。エサのクッキーやドライフルーツを目の前にちらつかせると、二足立ちになってエサを求めてくる。その様子がなんともかわいい。夢中でエサをやり続けたら、翌日右腕が筋肉痛に。登山に行って足ではなく腕が筋肉痛になるとはなんとも情けない。

エサを欲しがる「奥飛騨クマ牧場」のクマ


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