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【武尊山】雲海の絶景

 多くの人にとって「ほたか」という音の響きで連想する漢字は「穂高」だろう。だが群馬の山好きにとっては「武尊」となるらしい。群馬県みなかみ町や川場村にまたがる武尊山。「上州武尊」という異名があるあたり、北アルプスの穂高連峰に比べて知名度で劣ることを認めているような気もするが、れっきとした日本百名山の1つである。

 2024年1月20日。早朝に東京を離れて群馬へ向かう。JR高崎駅で在来線に乗り換えるまでは順調だったが、下車する予定の渋川駅を乗り過ごしてしまい、次の敷島駅で下車する。ここで群馬在住の登山仲間と合流し、仲間が運転する車で川場村に向かう。武尊山は片品村側やみなかみ町側など複数の登山口があるが、今回は川場村側から入山する。

 午前9時すぎ、川場村のスキー場に到着。多くのスキー客やスノーボーダーを横目に受付で登山届の提出を済ませ、リフト券を購入する。このほか携帯が義務づけられている遭難用の発信機「ココヘリ」をレンタルする。受付の女性からは「少しでも危険だと思ったら引き返すように」と注意喚起があった。

スキー場は大勢の人でにぎわっていた

 この日の天気は曇り。雪山にしては気温も風も穏やかだ。リフトを2回乗り継ぎ、終点でアイゼンを着用する。すでに登山客が2組登山を開始するところだった。午前10時半に登山スタート。いきなり雪の斜面を登っていく。真っ白い霧に包まれ、進行方向にめざす山容をとらえることはできない。

 景色を半ばあきらめていたところ、剣ヶ峰山を前に濃霧が晴れた。下界は雲の下に潜っているが、雲海から頭を出した武尊の山塊がくっきりと目の前にあらわれ、水墨画のような幻想的な景色が広がる。こういう瞬間が一瞬でもあるのとないのとでは山行の充実度は大きく変わる。

剣ヶ峰山

 午前11時に剣ケ峰山に登頂したころもまだ視界は良好だったが、次第にもとの霧が戻ってくる。午後0時半に最高地点の沖武尊(標高2158メートル)に到着する。山頂は身を隠せるものがほとんどなく、雪混じりの暴風を浴びる。なんとか見つけた木陰で昼食の即席麺を食べ、早々に引き返すことにした。もう少し進んだ先の前武尊の頂上には山名の由来となったヤマトタケルノミコト(日本武尊)の像があるらしいが、次回の楽しみに取っておくとしよう。

沖武尊の山頂

 帰路は雪がしっかりと降り始める。先を進む登山者は少なくなかったが、すぐにトレースは雪に埋もれていく。感覚を研ぎ澄ませ道迷いに注意しながら登ってきた道を引き返す。午後2時15分に剣ヶ峰山を通過。ほどよい筋肉痛を感じはじめたころ、登山終了。午後2時45分ごろになっていた。リフトを2回乗り継いで川場スキー場の受付に戻ってくる。発信機「ココヘリ」を返却し、下山報告を行った。

 麓の川場村の集落まで下ると時刻は午後4時を過ぎていた。いくつか温泉施設があるが、なかでも料金が440円と比較的リーズナブルな「川場温泉センターいこいの湯」を訪れる。露天風呂はなく、熱めの内湯のみ。地元の人たちと肩を寄せ合いながらお湯に浸かった。夕食は「あおぞら沼田店」。群馬県内で複数店舗を構える有名なローカル焼き肉店だ。熟成上州牛の上ロースとカルビがついた上州定食ディナーは満腹間違いなしのボリュームだった。

締めはブルーハワイのアイスクリームを食べた

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