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【雲辺寺山】五百羅漢のお出迎え

 雲辺寺山(927メートル)は香川と徳島の県境に伸びる阿讃山脈の西端にそびえる。行政区分で言えば、香川県観音寺市と徳島県三好市にまたがる山だ。山頂一帯に敷地を広げる雲辺寺は四国霊場のなかで最高峰にあり、「四国高野」、そして「遍路ころがし」とも呼ばれている。88カ所の中では66番目の札所にあたる。

ロープウェイ山麓駅。全長約2600メートルは日本最大級らしい

 2024年1月5日朝。雲辺寺ロープウェイの山麓駅駐車場に車を停める。午前8時半に登山開始。ロープウェイ山麓駅横の登山口から登る。天気は良好だが、登山道は日陰も多く、寒さが身にしみる。途中、柴犬を連れて登山する老夫婦とすれ違った。午前9時50分、67番札所の大興寺に向かう分岐に出る。午後10時すぎに山頂の雲辺寺に到着。まず目を引くのは周囲を埋め尽くす五百羅漢の石像たち。1体1体が異なる表情やしぐさをたたえ、見ていて飽きない。

 五百羅漢に関する解説文が看板に書かれていた。元駒沢大総長の奈良康明氏による文章である。味わい深いものがあったので、少々長いが以下引用する。「自由奔放な羅漢さんの表情の中に、しかし、共通なものが一つある。眼だ。さまざまな表情の中に眼だけはしっかりと私たちの心を見ている。喜怒哀楽の表情の中に、私たち人間の性を見ぬき、その愚かさを嘆き、悲しんでいる眼がある。いや、人間の悲しさと愚かさを知り、しっかりと生きていけと言わんがためにこそ、私たちの心を映した表情をして見せている、と言う方が正しいのかも知れない」。

 五百羅漢の出迎えを受けた後に大師堂と本堂を参拝。本堂の近くには巨大なナスの腰掛けがあった。名前を「おたのみなす」という。看板の説明によると、「“親の意見となすびの花は万に一つの徒もない”の諺にもありますように『なす』の花は一つの無駄もなく実となります。また『成す』との語呂が同じで努力が報われて願いがかなえられます」とのことだった。

ご利益がありそう

 続いては巨大な毘沙門天の像へ向かう。土台は展望台になっていおり、内部のらせん状のスロープを上がっていくと、像の足元に出る。眼下に讃岐平野、その先には燧灘が広がる。

 雲辺寺山にはかつて香川県唯一のスキー場「スノーパーク雲辺寺」があった。だが暖冬で雪が降らず、2020年に営業を終えた。いまはリフトがその面影を残すのみだ。跡地は芝生公園となっている。そこにあるのが近年注目を集めている「天空のブランコ」。何の変哲もないブランコが設置されているだけなのだが、角度によっては空を飛んでいるような写真が撮影できる。最近の「インスタ映え」スポットのひとつになっているようだ。

西讃の平野を見下ろす

 下山路は往路とは異なる道を行く。リフト沿いに下り、荒れた道を進んでいく。途中で車道に出て、そこからは舗装された道を歩く。午後0時すぎに山麓駅に戻ってくる。

 車で温泉に向かう途中にうどん屋を見つける。温泉の前に昼食を食べるのも悪くないと、「うどん処 麺紡」という店名が書かれたオレンジ色ののれんをくぐる。讃岐うどんと言えば、「かけ」や「ぶっかけ」などが主流だが、珍しい「つけ麺」があったので注文する。もちもち食感の太麺に、鶏と豚のスープと醬油だれをあわせた濃厚なスープがよく絡んでおいしかった。食後は温泉「おおのはら萩の湯」。露天風呂は薬湯。体の芯から温まった。

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