小林 龍二「救世主オオグソクムシ」
幼少の頃から水中生物が好きで、これまでの人生において身の回りに常に水槽があり、そこに入る生き物がいる生活を送ってきました。将来は仕事で一日中これらを扱い、しかも給料までもらってしまう楽園のような職業=水族館の飼育員になろうと、自宅で水槽を眺めては一人で不気味に笑っておりました。
しかしながら時代は就職氷河期であり、もともとの自分の学力もしれていたこともあり、有名な人気水族館には就職できず偶然欠員募集の出た地元の小さな竹島水族館へ、まぁ一応水族館だし家からも近いしいいかという気持ちで就職しました。
一応夢だった職業に就けて、小さい施設ながら生き物はたくさんいたのでそれなりに満足して働いていたのですが、冷静になり館内を見渡すと「お客さんが少なくあまりにも寂れすぎている」という現実がありました。小さなころから自転車でよく行っていた水族館なので、薄々気づいてはいたものの、実際に働いて直面してみると不安な気持ちに襲われる危機的状況の水族館でした。
―『學鐙』2024年夏号 特集「私の原点、転換点」より―
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