関東学生探検連盟設立のきっかけ ~1976年全国学生探検会議(4)~

 第三分科会の議題は「探検と金とスポンサー」と「我々の活動を広く、一般に理解させるにはどうすべきか」の二つであった。

 探検活動には金がかかる。活動地への移動費、現地での移動費、食糧費、滞在費、装備費、人件費、保険費など、活動地へ行くことが困難であればあるほど、活動日数が増えれば増えるほど、資金が多く必要になる。学業を本分とする学生にとっては、働く時間が限られており、アルバイト等で活動費を稼ぐのは大きな負担である。

 では、探検会議当時の学生の資金事情はどのようなものだったのか。海外遠征などの大きな規模の活動に関しては、スポンサーを募っている部がいくつかあったようだが、スポンサーはあまり付けられず、個人のアルバイトにより活動費を工面しているという。また、探検や学術調査であれば比較的企業からの支援は得やすいが、逆に学術的価値のない個人的嗜好に基づく活動に関しては、スポンサーの協力は得られにくい。さらに、学術調査の目的がはっきりした活動であるならば、大学からの援助を受けることが出来ている団体もあったようだ。一方、探検活動にスポンサーをつけること自体への問題意識を抱く者もいた。スポンサーを付けることで、活動中のしがらみが一つ増え、本来やりたい事と行う活動にずれが生じる可能性がある、というのがその言い分である。

 今後の活動資金に関しては、個人のアルバイトによる資金調達が増えていき、スポンサーを必要とするような大きい遠征を組みづらくなるだろうとしている。

 探検活動の一般へのアピール方法として、書籍や雑誌、テレビなどのマスコミを使ったアピールが考えられていたようだが、日本はアドベンチャーを嫌い、学術を好む国民性があるとの意見が出ており、あまりメディアを使ったアピールができていないことへの不満も出ていた。そもそも一般にアピール必要はあるのだろうか。学術的価値があるなら、その分野の学会に発表する必要はあるが、学術的価値がないなら活動を行うに当たって力を貸してくれた人達への報告で十分ではなかろうか。

 以上が第三分科会での討議の内容である。現在の探検部における一般へのアピール方法としては、SNSを用いている団体が多い。SNS上では、日々行っている活動の紹介や、新入生への部の宣伝に使われている。探検会議が行われた1970年代に比べ、現在はインターネットが普及したことで、ネットを使って発信や資金調達が以前よりも容易に行えるようになったのではなかろうか。これらは多いに用いていくべきだろう。

会議でも話されていた通り、現在の探検部は個人のアルバイトでの活動資金調達が大きな割合を占めており、スポンサーを付けて活動した例は少ない。直近のスポンサーを付けた活動の例としては、早稲田大学探検部による2017年ロシアカムチャツカ半島における未踏峰登頂計画がある。この計画はテレビやラジオでも取り上げられ、メディアを使ったアピールにも成功している。またこの活動に代表されるように、最近ではクラウドファンディングが新たな資金調達の手段として確立されている。しかし、クラウドファンディングやスポンサーを利用した活動は現状として少ない。それは、企業や一般人から資金を提供してもらうほどに、規模の大きな活動が学生探検部全体で少ないことにあるだろう。そのため、まずは探検活動を企画する事だ。資金問題については、その活動の計画を練っていく中で考えれば良いのではないだろうか。


文責:辻 拓朗(法政大学探検部) 

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