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進路選択を間違えた男【最終回】 やっとマジメに考えた編

大学進学後、自分のテキトーな進路選択が原因で「後ろ向き学生ライフ」を送ることになってしまったアドバイザー鈴木。最終回となる今回は、苦悩の大学生活にピリオドを打つべく(ようやく)立ち上がった私の死闘をお伝えします。

文/鈴木久訓学生図鑑 進路アドバイザー) 写真/北川晶子

▼ プロフィール

▼ 前回のコラム


「UFO」への憧れだけでテキトーに進路を決め、「何のために大学進学をしたのか? そもそも何がやりたいのか?」という問題から逃げてばかりいた私でしたが、いよいよその逃げ場もなくなってきました(ついでにいえば、リスペクトしていた 矢追純一氏 の特番もほとんど放送されなくなり、それに比例してUFO熱も冷めていくばかり)。

叔父までを巻き込んだ事件(詳しくは、第2回に)で、土俵際に追い込まれた私は、ようやく今後のことを具体的に考え始めました。しかし、「大学に通い続けるか、辞めて新たな道を選ぶか」という大問題に、すぐに結論など出るわけもなく、いつの間にか時は過ぎ……。

では今回も、カレンダー形式(再現した表情&過去の自分へのツッコミ付き!)で振り返ってみることにしましょう。



■ 2000年12月○日 「蟹座8位」の朝

テレビから聞こえてきた今日の運勢は8位。「蟹座のあなた。悩んでいるときは誰かに相談すると吉」と、至極まっとうな占いを受け、さっそく友人に連絡。近所のカフェで何気ない会話をしつつ状況を説明しました。

すると、「今の大学で頑張ったほうがいいでしょ。まあでも大学辞めて本当に興味のある勉強をするのもアリだよね」と、万能な(=当たり障りのない)アドバイスをくれる友人。親身に相談には乗ってもらえたが、最後は自分で決めるしかないという結論に至ります。

國學院大学のキャラクター「こくぴょん」(右)と
法政大学 環境関連キャラクターの「えこぴょん」(左)。

【ツッコミ!】人から答えにくい相談をされたらコレ!

自分なりに考えてはみたものの、優柔不断ゆえなかなか結論は出せません。仮に別の大学に入れたとしても、「そもそも大学で何がしたいのか?」という問いに自信を持って答えられそうにはなかったのです。

心理学か哲学を学んでみたいという思いはありましたが、入ったあとのことまで考えておかねば同じ過ちを繰り返してしまう……そんな不安がさらに決断を鈍らせていました。

さらに情報収集をするうち、心理学に気持ちは傾きましたが、職業とは直結しにくい分野であることもわかってきました。学びたいことを学べば将来が不安、しかし、やり直すなら本当に学びたいことを学ぶべきでは……。一人問答しているうちに新年を迎えます。

■ 2001年1月1日 恒例の、初日の出登山

友人との恒例行事「初日の出登山」のため、深夜から高尾山に。ちなみにこれ、受験の年も合格祈願を兼ねて登り、帰り道に私一人が「スベって転ぶ」という致命的なミスを犯した結果、親しい友人がみな浪人してしまったという魔の行事です。

毎年のことながら、ご来光が昇った瞬間の清々しさは形容しがたい。もやもやした頭の中もすっかりリフレッシュ! 太陽から「youやっちゃいなよ!」というエールがかすかに聞こえたような気がしました。

【ツッコミ!】このときから歯車が狂っていたに違いない。

ご来光に後押しされ「本当に勉強してみたいことを学ぶべき!」と決意を固めた私は、両親にカミングアウトする日取りを、間近に迫った「成人式」に定めました。

■ 2001年1月8日 迎えた運命の日

成人式に出席し旧友とも再会。同級生たちの表情からは、充実したハタチを迎えていることが想像できました。「自分もあっち側に行きたい!」という思いを再確認しつつ、“本番”に向け気持ちを集中させていくのでした。

そして、帰宅後の夕食の席。緊張感はマックス(トイレには2回行った)。いよいよ、そのときを迎えます。

私:「ま、前にも話した、大学のことについて話があります」
父:「うむ……」
私:「やっぱり今の大学を辞めて、心理学の勉強をしたいんだ」
父:「…………」
私:「真剣に考えた末の結論なんだよ。これから人生を前向きに生きていくために、どうかもう一度チャンスをください!」
父:「理系に進んで得られなかったものが、心理学で得られると思うのか?」
私:「少なくとも、今はヒトについてもっと知りたい。本当にやりたいことを真剣に学ぶことが、自分を前に進ませる方法だと思ってる」
父:「……わかった。そこまで言うなら、死ぬ気で勉強することだな。もう反対はしない。ただ、ひとつだけ条件がある」
私:「な、なんでしょうか……?」
父:「どんなことがあっても、その選択を絶対に『人のせい』にするんじゃない。これから先、自分の生きる道に責任を持て。以上!」

【ツッコミ!】いまだに肝に銘じております。

人生前半における最大の山場は、こうして無事に乗り越えることができました。

その後、退学の手続きを進めていったわけですが、これが思った以上にしんどい作業でした。まずは友人に話をし(一応引き止められる)、そして大学事務へ相談し(一応引き止められる)、学部長と面談し(一応引き止められる)……などを経てようやく書類を提出。ある場所を「去る」というのは、精神的な負担も大きいということを知りました。

■ 2001年4月〜2002年2月 2度目の受験勉強

正式に退学が決まったところで、ここからは勉強のやり直し。2年も経つと前の受験で得た知識は、ほぼ記憶から消えています。

一からやり直す不安と、失敗できないプレッシャーとの戦い。あるときは「失敗したら鈴木家の未来も危うい!」と気持ちを奮い立たせ、またあるときは「合格できなければ出家するしかない!」と自らを戒めながら取り組み、目標だった早稲田大学第一文学部になんとか合格。念願の心理学の道に進むことができました。

【ツッコミ!】マジメに出家の方法を調べました。

進学後は、自分の関心に一番近いと感じた、認知や社会に関わる心理学を専攻することに。そして現在、心理を専門に扱う仕事ではありませんが、本当の意味で自分の経験が活かせる進路アドバイザーとして、「ヒト」に関わる仕事をしています。

進路選択の失敗が糧になっていることは断言できますが、高校時代の安直な選択にはやはり後悔をしています。なぜ「何のために進学するのか?」真剣に考えなかったのか。そして、なぜUFOを追いかけていたのか。当然ですが、失った時間も学費も戻ってきませんし、もしかしたら本当に出家することになっていたかも……。

3回にわたるコラムとなりましたが、いかがでしたでしょうか? 将来を大きく左右する自分の進路を「テキトー」に選択するとどうなってしまうのか。その一例として、私の経験を綴らせていただきました。

なるべく重苦しい文章にはならないようにしたつもりですが、書いてる途中も、追い詰められた当時の状況を思い出し、動機・息切れ・めまいが襲ってきました。少しでも、みなさんの進路選択のお役に立てば幸いです。

■ 進路選択するときはコレに注意!

【1】とにかく真剣に、自分の進路と向き合うべし!(UFOに惑わされるな)
【2】進路は自分の責任で選ぶべし!(人のせいにするのは卑怯)
【3】合格が目的ではない! 進学してからが本当の勝負!

それではみなさん、ごきげんよう!

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