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中国人姉妹、殺害遺棄。一審、死刑求刑の差し戻し審。第1回目審理。

横浜地裁 -刑事事件-

(第1回目審理)

2021年7月19日(月曜)10:10~17:00 101号法廷

事件番号:令和2年(わ)第147号

罪名:殺人・死体遺棄・住居侵入

被告:岩嵜竜也(勾留中)


<事件概要>

 被告人は、平成29年に横浜市中区で中国籍の25歳と22歳の姉妹の首を圧迫して殺害し、秦野市内山林に遺棄した。


<差し戻し理由>

 平成31年の1審横浜地裁では、被告の犯行と認めた上で「これまでの裁判員裁判では、単独犯による被害者が複数の殺人事件で、凶器が使われていない場合は死刑や無期懲役になっていない」として懲役23年(求刑:死刑)を言い渡しました。誤った量刑判断だとし、双方共に判決の是正を求めて、控訴した。
 2審の東京高等裁判所は「1審判決であげられたのはすべて親族間の事件の場合で、量刑の判断に大きな問題がある」として審理を地裁に差し戻す判決を下し、3審の最高裁でも2審を支持した。


<9:20~ 傍聴券配布>(3枚余る。)

老若男女並んだが、夏休みもあり若者が多かった。

<9:55~ 傍聴人入廷開始>


<10:07~ 被告人入廷>

黒髪・短髪、スーツ姿で普通のサラリーマンに見えた。特段緊張は窺えず、慣れている様に感じ、弁護人とも話している。


<10:12~ 開廷>

裁判長- 名前は?

被告人- 岩嵜竜也です。(ハッキリと、直立不動で)

裁判長- これからの裁判について、説明します。これから行う裁判は、「やり直しの裁判」である。横浜地裁の判決を、東京高裁は破棄し裁判のやり直しを命じ、上告で確定した。以上の経過がある為、控訴審の判断を踏まえて、これに反しない様に行う。破棄判決には、拘束力がある訳であり、控訴審は有罪の認定には誤りはなく、量刑についてやり直しを命じた。

 それゆえ、有罪を変更する判断はしない。

 新たな証拠について、より分かりやすいものに変更を求めた為、これからの裁判は一部調整を加えたものを取り調べる。


・起訴状読み上げ

 第一、被告人は平成29年7月6日に神奈川県横浜市中区所在のマンション内で、玄関から侵入し、被害者当時25歳を頚部圧迫による、窒息死で死亡させた。

 第二、被告人は前記同日、同所在において、被害者当時22歳を頚部圧迫による、窒息死で死亡させた。


裁判長- 第一、第二についてどうか?

被告人- 黙秘します。(ハッキリと)

弁護人- 証拠に基づき、適切な裁判を求める。



・証拠調べ手続き

<10:25~ 検察側スタート>

検察官‐ 被告人は、知り合いの中国人姉妹の内、姉の殺害を目的に殺害し、不在だった妹も殺そうと考え、帰宅後に実行した。その後、布団圧縮袋に死体を入れ、キャリーバックにそれを詰めて、神奈川県秦野市内の山林に遺棄した。

 今回の裁判を通じて、裁判員が審理するのは、量刑である。

検察官- 被告人と被害者姉妹の関係について。姉は、18歳の時に「就学ビザ」で来日し、専門学校で就学していた。姉妹はホステスで働き、被告人は働いていた店に来店し、知り合う。被告人は姉に好意を抱き、よく来店し、頻繁にメールのやり取りもした。

 平成29年6月中旬に、9月にビザの期限が迫っていた事もあり、姉から「偽装結婚の相手になって欲しい。」とメールを受け、被告人は「利用された。」と考え、殺意が生じた。平成29年7月上旬には、殺害の計画を行い、「死体の埋葬方法」等をネットで検索していた。



・事件当日について。

 7月5日 被告人は、「布団圧縮袋」等を購入。

 20:00頃 姉が帰宅。

 21:30頃 妹がバイト(ホステス) 出勤の為、外出。

 同時間頃 被告人が、姉に「まだ寝てないの? おやすみ。」とメール。


 7月6日 2:30 灰色のパーカー・黒いマスク(目出し帽の様な)を購入。

 3:03 被害者宅入室。同時に、姉を殺害

 5:00頃 姉の殺害がバレると思い、妹を殺害しよう考える。

 5:15 妹、帰宅。同時に殺害

(その後、外に出て、周りを窺ったり。死体の遺棄方法を検索したり。)

 17:46 近くのホームセンタで、「バケツ」・「ビニール袋」等を購入。


 7月7日 0:39頃 遺体の入った、キャリーバックを搬出。

 2:54 被告人は、2台のキャリーバックを載せ、秦野市内の保安林まで運転し、遺体を投棄

 同日、被害者の友人が連絡が取れない事から、管理会社に連絡し、警察が動く。


 7月17日 被告人の車両のGPS履歴から、停車位置を検索。警察が遺体を発見。


 

検察官- 検察官としては、事実に基づいて、

 1、行為の危険性、悪質性。

 2、結果の重大性。

 3、動機に事情がない。

 4、殺害後の情状が悪質。

 を裁判員に判断して欲しい。



<10:52~ 弁護側スタート>

(弁護人は、証言台の前で裁判員に訴える様に、被告人の情状を語り始めた。)

弁護人- 被告人は、「苦しみ」「悩み」犯行の発覚を恐れて妹を殺害した。被告人と姉は、交際していた。姉は、日本に在住し続ける為に、「偽装結婚」を提案した。被告人は、「利用された」と、「恨み」「悲しみ」そして、悩んだ末に殺害した。素手で殺害した。


 被告人と姉の間には、些細な喧嘩はあったものの、重大な喧嘩はなく関係は良好である。妹も被告人を非常に慕っており、2人で被告人宅に遊びに行く事もあった。

 それゆえ、被告人が「偽装結婚」を申し込まれた時は、「憤り」「悲しみ」「帰国して欲しくない」「関係を修復して結婚したい」「親が悲しむ」と、単純な苦しみではなかった。


 結婚の申し入れから、殺害までの時間に注目して欲しい。如何に、計画が練られていなかったか。

 本件は、量刑が争点である。

 1、姉妹との関係性。

 2、犯意がどの程度緩いものであり、どれだけ悩んでいたか。

 3、犯行がどれだけ計画性が無かったか。

 4、殺害方法。

 これらを、裁判員には注目して欲しい。

(検察官と弁護人双方が同様に、4つの注目点を提示する事は、公判前整理手続きで決めたのか。)


<11:09~ 休廷>

<11:30~ 再開>

(以後、17:00の閉廷まで、検察官による証拠説明。)


1号証「統合捜査報告書」

 本件発覚時の端緒等について。


2号証「統合捜査報告書」

 被害者宅のマンションの防犯カメラ映像の内容。

 姉帰宅 ~ 被告人入室 ~ 妹帰宅 ~ キャリーバック搬出 まで。

(映像は、傍聴席の大型モニターにも投影された。)

(20分程、映像を視聴)


<12:03~ 休廷>

<13:30~ 再開>


3号証「資料作成報告書」

 防犯カメラ映像のDVDについて。


4号証「オーナー母親の供述調書」

 被告人に、出くわした事について。


5号証「統合捜査報告書」

 被告人車両について。


6号証「捜査報告書(抄本)」

 被告人車両が、犯行時に停車していた、「タイムズ 横浜日ノ出町第二」の出入庫記録。


7号証「統合捜査報告書」

 管理会社の通報による、警察官臨場 ~ 遺体発見までの経過。


8号証「統合捜査報告書」

 平成29年7月13日 11:34 第1のキャリーバック発見。

 同日、11:41 第2のキャリーバック発見。

 発見場所詳細について。

(モノクロで、姉妹遺体写真、傍聴席側モニターに投影!!)

(圧縮袋に入れられ、白い物体がキャリーバックに詰めれている。)

(被告人は、淡々とその写真を見ている。)


第9号証「解剖医師の供述調書(姉)」

 少なくとも5分以上の頚部圧迫により、死亡に至った。


<14:30~ 休廷>

<14:50~ 再開>


第10号証「統合捜査報告書」

 姉の遺体状況。(絵による、説明。モニターに投影。)

 あぐら状態で収容されていた。


第11号証「解剖医師の供述調書(妹)」

 頭部打撲と同時に、頚部圧迫により死亡。


第12号証「統合捜査報告書」

 妹の遺体状況。(絵による、説明。モニターに投影。)

 白色のシャツで、腕時計をしていた。


第13号証「統合捜査報告書」

 被害者宅のマンションの周辺状況・セキュリティー状況。

 被害者宅の室内の様子。


第14号証「統合捜査報告書」

 遺留品について。


第15号証「統合捜査報告書」

 ネット上の検索履歴。(「腐敗臭」「人間の死体ってどんな臭い」「腐敗臭 シュールストレミング」等を検索)


<15:52~ 休廷>

<16:15~ 再開>


第16号証「総合捜査報告書」

 黒マスク、布団圧縮袋、パーカー等の購入商品・購入履歴等。


第17号証「総合捜査報告書」

 被告人の、交通系ICカード「PASMO」の履歴。


第18号証「総合捜査報告書」

 被告人の携帯内に保存されていた、写真の削除データ。

(傍聴席モニターに映し出される。色々ある。恥ずかしそう。)

旅行予約のスクリーンショット、被告人の黒マスク着用時の自撮り等。


第19号証「統合捜査報告書」

 写真の撮影日時、特定。


第20号証「捜査報告書(抄本)」

 被害者両名が詰め込まれた、キャリーバックのダイヤルロックの解除番号。


第21号証「統合捜査報告書」

 被害者両名の人定及び、入国後の経歴等


(姉) 1991年生まれ 中国福建省出身 年齢:25歳 国籍:中国

就学ビザで入国。平成29年9月28日期限。

 姉は、専門学校の専攻を転々とし、最終的に自主退学をした。夜は、ホステスで働き、収入を得ていた。


(妹) 1994年生まれ 中国福建省出身 年齢:22歳 国籍:中国

就学ビザで入国。

 妹は、姉同様の専門学校に入学し、卒業を果たした。夜は、姉の紹介でホステスで働き、収入を得ていた。



第22号証「統合捜査報告書」

 被告人と、姉との通信アプリ「We Chat」の通話履歴。

(検察官が読み上げる。姉を女性検事が、被告人を男性検事が読む。)

(女性検事も、男性検事も読み方が演技みたいであった。集中し過ぎたあまり、発信日時を言わず、裁判長から指摘されていた。演技は、上手い。。)


(通話内容は、「サーカスデートについて」「結婚について」等)

被告人「嘘結婚は、イイの? 親御さん的に。」

姉「日本人と結婚したら、喜んでもらえる。」

「結婚の申請の時は、一緒に暮らそうね。入管にバレるから。」

(結構しっかりと、計画されている。被告人は、姉の両親の心情を心配する一方で、姉は入管を気にしたりと積極的だ。)


「お年玉頂戴。」

被告人「なんで?」

「友人みんな貰ってるよ。1万くらいでイイから。」


(読み上げの途中で、閉廷時間に。)

<16:58 閉廷>



・私見

 被告人は、殺害したという重大な行為がある事は大前提である。しかし、被告人の動機を裏付けるに足りる、被害者の「偽装結婚」に対する、相当な積極性が窺えた。

 特に、被害者の入国目的も十分、不信感を抱きざるを得ない。姉は、就学ビザで入国したにも関わらず、学業は転々し、結果的に自主退学までしている。他方で、高収入を得られる「ホステス」は変える事なく、就労した。

 また、被告人と姉のメール内容には、お金をせびる事が「お年玉」以外にも散見された。

 さらに、出身地も福建省の村であり、貧困層が多く、出稼ぎの可能性も高い。これらを踏まえれば、何十年も他国籍の就学ビザの悪用が課題となっており、本件も同様ではないだろうか。

 殺害し遺棄する犯行態様は、著しく重大ではある事には変わりはない。しかしながら、酌量も余地も垣間見れた。

※あくまで、自身の見解です。

 


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