蒲田健の収録後記:はあちゅうさん


ネット時代の作家を目指す

はあちゅうさんの最新刊「通りすがりのあなた」

SNS、ブログなどで積極的な発信を続けるはあちゅうさん。そんな彼女の

念願だったのは、純文学作品を書くこと。その念願が初めて叶った

今回の短編集。


友人、恋人、仲間、知人・・・。人間関係を表す一般名詞は

様々に存在するものの、リアルな関係の多くは、それらの一語では

片づけられない個別対応のグラデーションの中にある、と

はあちゅうさんは考える。

そういう淡い色合いの関係性と、

そしてそれを誘発・加速せしめる装置としての旅というファクター、

この二つが、7つの短編を貫く軸となる。

各々は舞台も登場人物も異なる物語であるが、いずれにもはあちゅうさん

ご自身及び周りで見聞きした人たちの体験が下敷きになっているという。

様々な成分が絡み合って出来上がっているそれはもちろんフィクションで

あり、全く同一の人物、状況は存在しえないのだが、一方でどこかに

存在していそうというリアリティが、私には温度をもって感じられた。

読者がその温度を感じられるということは

その世界に入り込んでいるということと同義であるわけで、

その意味において、彼女の企ては既に成功しているといえる。

また私的な様々な思い出も引き出され、一般名詞ではくくりきれない

人間関係が自分の周りにも無数に存在することを気づかされる。


様々なグラデーションの一瞬一瞬が積み重なって、他ならぬ唯一無二の

自分の人生は成り立っていることを認識させてくれる一冊である。


「人はみな 通りすがりで あるがゆえ

         今を大事に 一期一会の」


P.S.執筆時は脳と指先が直結している感覚でキーボードを叩く、という話が

とても興味深いものでした。思いついた瞬間にテキスト化されるその思念が

行き着く先、これからも楽しみに読ませていただきたいと思います。




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