マガジンのカバー画像

学校で教えない教育のこと【教育学】

55
疑問こそ学びの原点なのに、学校の決まりや文化に関する「なぜ?」に、学校はほとんど答えてくれません。疑問や悩みに少しでも答えたい、そして疑問を大切にする人が増えてほしいと思い、教育…
運営しているクリエイター

#シャーペン禁止

学校と鉛筆の歴史 ~筆・石盤・鉛筆・ノート~【シャーペンの教育学④】

 前回まで学校でのシャーペンの扱いを見てきました。シャーペンの使用禁止は「学校では鉛筆を使用する」ことを前提としています。学校におけるシャーペン及び筆記具の決まりを考える上では、鉛筆のことも知っておく必要があります。  学校の筆記具=鉛筆という印象は強いですが、鉛筆も古から学校で使われていたわけではありません。学校と鉛筆の歴史を見ていきます。 1.江戸から明治前半 毛筆から石盤へ  日本で用いられる主な筆記具は、江戸時代まで毛筆でした。寺子屋では半紙を重ねた「双紙」に書いて

学校とシャーペンの歴史 ~登場から1980年代の普及~【シャーペンの教育学③】

 小学校でのシャーペンの扱いについて2回ほど記事にしてきました(第1回はこちら)。今回はシャーペンの歴史を、登場から普及、そして多くの小学校で禁止に至るまで見ていきます。 1.高級品から普及へ シャーペンは1870年代に輸入され、日本国内でも製造されるようになります。1915年、後に家電メーカーシャープ創業者となる早川徳次が「早川式繰出鉛筆」として実用新案を取得、改良を続けながら「シャープ・ペンシル」として発売されます(文献①)。  しかし、戦前までのシャーペンは鉛筆のよう

鉛筆の濃さ指定?学校教育における筆記具の位置づけ【シャーペンの教育学②】

 前回、シャーペン禁止の実態と主に挙げられる理由を記しました(こちら)。シャーペンを禁止する法令などはありませんが、9割以上の小学生は学校でのシャーペン利用が禁止されています。  シャーペンに限らず、具体的にどんな筆記具を使いなさいという国レベルの規定はありません。学校では指定されがちな鉛筆の濃さについても、国の規定はないと国立教育政策研究所教育図書館が2016年に回答しています(文献①)。  ただし、学習指導要領では、主に国語の書写において筆記具に関する指導事項が記されてい

小学校シャーペン禁止の実態と理由【シャーペンの教育学①】

 小学校の謎ルールとしてよく挙げられる「シャーペン禁止」。特に法律や学習指導要領などで定められた決まりではありませんが、大多数の小学校で児童がシャープペンシルを用いることを禁止しています。  身近な存在でありながら、なぜ学校での使用が禁止なのか、なぜ鉛筆を用いるかといったことを整理した公的な文書は存在しないようです。  本記事含め4本に分けて「シャーペン禁止」の実態や歴史を整理していきます。学校教育での「決まり」というものを考えるきっかけになればと思います。 1.小学校では