けみこさんのツイートをもとにマリガンを考える

この記事とは

けみこさんが興味深いツイートをされていたので,それをもとにラフにいろいろと考えてみた記事になります.すべての責は私にあります.

準備

ここでもマリガンを例に議論を進めていこうと思う.
まず最初にここでは縦軸と横軸を変更して,縦軸に「勝ちに直接つながる(速さ)」横軸に「プランの安定に寄与する」を置く.つまりラフには

勝率=「速さ」×「安定性」

を考えて右上がよいというグラフを考える.このとき同じ勝率をもたらす無差別な線が書きうる.

ある一定の勝率以上であればキープするという方針であるときは以下のように描写される.(注1)

たとえばBO1であれば相手のデッキがわからない,BO3であればサイドプランがわからないなどによってそれぞれの相手のプラン(赤,青,黒)に対してこのような線を描くことを考えよう.

どのような相手であってもキープされるもしくはマリガンされる領域がある一方で,Aのように青であればキープしたいが赤であればマリガンしたい領域がある.

戦略を考えよう

ではどのような時に,キープすべきかマリガンすべきだろうか.一つの考えは,相手が赤であるか青であるか黒であるかの確率を考えて期待値をとる.そうすると一つの期待勝率のラインが書かれそれをもとにキープもしくはマリガンをすることになる.より簡単に振舞うなら,相手が赤であるか青であるか黒であるかの確率を考えてその確率に応じてランダムに自分のマリガンするしないを決定することも考えうる.たとえば赤青黒がそれぞれ1/3の確率であるとき,自分がAを引いたときに2/3でキープし1/3でマリガンする.たとえばここで用いる確率はアリーナであればuntapped.ggでみれるデッキの確率であったりするだろう.

ここまで相手の戦略をあいまいに述べてきた.相手も自身と同じ問題に直面しているわけである.つまり互いに相手のデッキの情報と相手のマリガンの基準が自身の勝率に影響しているという構造になっている.ゲームになっている.
ここではゲーム理論のこまごましたところには踏み込まないが,混合戦略がナッシュ均衡として成立することは容易に起こりうる.イメージの一例は以下の通りである.ある種のハンドを相手がマリガンするのであれば,私はこのハンドをキープしたい.しかし私がこのハンドをキープすると相手が確信しているのであれば,相手はある種のハンドをキープする.このような循環が起こるとき,私は確率でマリガンするし,相手も確率でマリガンすることになる.
またここで事前の予想に基づいて選択をするということは確率を低く見積もっているものに対しては優先度を下げていることになる.対戦相手がこのようにふるまうとき,想定しないデッキやサイドプランを握っておくことで優位に立てる可能性がある.たとえば先の図の青を1/100と予想しているときのAの領域ではほぼほぼキープすることになるが,始まってみると相手が青であることに悩まされる可能性が高い.これは相互に起こりうる.このような相手に対して,グラフの期待勝率曲線が左にシフトしていると考えられるのでよりキープしやすくなることが推察される.その程度は一般的な環境のデッキとの乖離度による.(注2)

すこし横道

美人投票と呼ばれるゲームがある.プレイヤーを集めて0--100の好きな数字を申告してもらいその平均の2/3にもっとも近い数字を述べた人が賞金をえる.このときナッシュ均衡は0であることが知られている.一方で実際にこのようなゲームを行うと0と申告されないことが知られている.このような状況を説明するものとしてレベルK理論などが考えられている.

戦略を考える again

閑話休題.必ずしも対戦相手が環境ややこちらの戦略を読み込んで意思決定しているとは限らない.もしくはハンドの安定性そのものを過小評価しているかもしれない.このような時,美人投票で0と答えても勝てないため適当な値を想定して答えるように,違う戦術が正当化されうる.

最初にハンドの安定性そのものを過小評価している場合に注目して議論をすすめる.

ハンドの安定性を過小評価した場合

このようなプレイヤーがキープした時,ハンドを過大評価している確率が一定あり,時に過小評価してマリガンする.このような戦術はどのような影響を対戦相手に与えるだろうか.

まず勝率を下げる戦略ではあるので,左にシフトする.一方で,必ず速い手段がハンドにあるのでそのままの左シフトではない.たとえば,安定性の確保する手段として相手の速い手段を採用しているのであれば,そのシフトは安定性をより評価するようにシフトするだろう.また相手より基本的に速いデッキを握っている場合であれば,十分な数の手段を持つことの相対的価値が高まる.

このように,上記のような最適なプレイをしないプレイヤーが存在するときマリガン基準を緩めることは確かに推奨されそうである.一方でそれがどの程度であるべきかにはさらなる検討が必要である.

最後に

けみこさんのツイートから興の向くままに書いてきた.専門性から大きく踏み外していろいろ書いてしまっているものの大変楽しむことができた.

注1.ここの値に関してはけみこさんの引き続きの指摘を参照する.

注2.そのデッキの等勝率のラインがシフトしてマリガンの必要性は下がるかもしれないが,それはそのデッキの等勝率のもともとのラインからの相対的な変化に過ぎない.


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