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vol.6 【前編】建築もデザインも地域でつくる! 〜学大ローカルプロダクション〜

こんにちは。「みんなでつくる学大高架下」公式note、記録係のムラヤマです。

学芸大学の住民や事業者のみなさんと高架下の使い方や街づくりのアイデアを考える「みんなでつくる学大高架下」プロジェクト。

実は、高架下の使い方に関わる議論だけでなく、建築やグラフィックデザイン面など、リニューアルを想定した実業務の検討にも、学大を拠点に活動するプロフェッショナルな方々がチームを組んで参加してくれています。

今回の記事では、そんな「学大ローカルプロダクション」の取り組みをご紹介したいと思います!

実制作も学大のプロフェッショナルで!

学大住民の声を拾ってまちを練り歩く「idea CARAVAN」やテーマ別にディスカッションしてきた「学大未来作戦会議」などを通じて、様々な角度からイメージを膨らませてきた学大高架下のリニューアルの姿。

そのイメージを実際にどうカタチにしていくのか。

学大にはたくさんのプロフェッショナルの方が愛着をもって暮らしているので、やっぱり実務も学大のチームで検討しよう!と1年ほど前から始動したのが「学大ローカルプロダクション」です。

地域を巻き込んだ共同設計の実績が豊富な横浜の設計事務所「オンデザイン」さん(note記事「vol.1みんなでつくる高架下って何ですか?」にてご紹介)がファシリテーターとなり、設計者やインテリアデザイナー、工務店、グラフィックデザイナーなど、計6組の学大に縁のあるプロフェッショナルが集まりました。

毎月のように定例の打ち合わせを設け、住民や事業者の声を反映すべく様々なテーマで議論を重ねてきました。

「高架下をどうしたら自分の場所として愛着を持ってくれるのか?」「みんなが気軽に小商いにトライできる場所は?」「店舗の前のにじみだしスペースをどう活用するか?」「1kmにわたる南北の高架下に、どう新しい動線をつくるのか?」etc。

それぞれの専門性や経験、実際に学大の生活者でもある視点をフルに導入しながら、模型やモックアップを通じて仮説を検証してきました。

やはり、みなさんジブンのまちのこととなると一段と力が入るのか、毎回、白熱した議論が繰り広げられたのでした。

というわけで、「学大ローカルプロダクション」に参加してくれているプロフェッショナルのみなさんを、その思いとともに、ご紹介していきたいと思います!

参加してくれているプロフェッショナルのみなさん

01. 山家明さん(建築家、デザイナー)

建築家・デザイナーとして、株式会社マウンテンハウスアーキテクツを運営する山家さん。3年半続けた美容師を辞めたのち、たまたま訪れた四国のイサム・ノグチの庭園美術館に感動し、25歳で建築を志して武蔵野美術大学に入学。トラフ建築設計事務所を経て、独立したのだそう。普段はインテリアや住宅の設計をはじめ、CMの舞台美術や展示会の会場構成など幅広く手がけています。学大での居住歴は約10年。

ーー「学大ローカルプロダクション」に参加することになって、率直にどう思いましたか?

山家さん:素直に嬉しかったですね。出身は三重県ですが、学芸大学で暮らし始めてもう10年ほどになりますし、僕にとってはここが「第2の地元」という感覚なんです。

個人的に、住宅のようにお客さんの表情がダイレクトに見える仕事がすごく好きで、きっと地元での仕事でも同じような喜びを感じられるんじゃないかなと思っていたので、このプロジェクトに参加できるのは楽しみでした。

ーー近しい業種のプロフェッショナル6組が集まるというのは稀だと思いますが、実際に進めてみてどうでしたか?

山家さん:自分の色を出すことはあまりせずに、変容しながら自分ができることを提案していくイメージでしたが、他のメンバーを見ていると自然と自分らしさみたいなものに気が付いたりして。

だんだんとそれぞれの個性が混ざり合っていくような面白さを感じていましたね。僕は豪華にするよりも既にあるものを活かすのが得意ですが、そこに集中しつつさらにアップデートできたのも、他の部分で補ってくれる方たちがいたからだなと感じています。

ーー一年間のプロジェクトを経て、ご自身の中で何か変化や新しい発見はありましたか?

山家さん:もともと、学大で暮らす人たちの声を聞くところからスタートしているので、そのおかげでこのまちの解像度が上がったし、普段からまちをよく観察するようになった気がします。

住み始めた頃から、落ち着くし子育てもしやすいし、何かとバランスがいいなと感じていましたが、お店の人同士も仲が良かったり、良いお店を紹介し合ったりできるのを見て改めて、良い意味で人と人との距離感が近いまちなんだなと気づきました。だからこそ、悪いことはできないです(笑)。

ーーそこは表裏一体ですね(笑)。では最後に、これからの学大に対する期待を教えてください。

山家さん:今は学大の中でもコミュニティが分散していて、それ自体は悪いことではないと思うんです。でも今回のプロジェクトによって、高架下がまちの中心的な一本の筋のようになれば、より暮らす人同士の距離も近づいて、よりまちとしての魅力も増すんじゃないかなと。西と東のそれぞれの個性は保ちつつも、混ざり合う拠点のような場所になればいいですね。

02. 西脇佑さん(インテリアデザイナー)

インテリアデザイナーとして、株式会社LINEs AND ANGLEsを運営する西脇さん。設計事務所を経て、2012年に個人での活動をスタート。現在は商業空間の設計・設計監理を行いながら、オフィスや住環境のデザイン、プロダクト開発のディレクションなどを手がけています。独立時に友人のオフィスを間借りさせてもらったことがきっかけで、学大の魅力にハマり、事務所兼自宅を構えて約10年。いろいろな飲食店の常連さんなんだそう。

ーー通常であればほぼ共存することのない、近しい業種のメンバーと一緒にプロジェクトを進めていくのはいかがでしたか?

西脇さん:学園祭みたいで楽しいです(笑)。しかも、すごくバランスが取れたメンバーというか。それぞれが自然と自分の役割を見つけて担っていて、スムーズでした。自分が苦手なところは別の人に任せよう、というのもさらっと言える環境でしたし、一人でやってるときよりも抱え込まなくていいなと思いました。

僕はインテリアデザイナーでどちらかというと中をつくる側ですが、外側をつくる方たちのアイデアを見ていて、新しい発見や勉強になることがたくさんありましたね。

ーー今回の取り組みにおいて、西脇さんの中で大切にしていた自分ならではの視点はありますか?

西脇さん:一つは、あくまでサポートであるという意識を持つことですね。今回で言えば、高架下に訪れる人が主役なので、僕らが普段店舗のデザインでやっているように過度に作り込んだものではなく、風景に溶け込んでさっと見慣れていくようなデザインがいいなと思いながらやっていました。あとは無限に予算があるわけではないので、コストを抑えながらもどうやって理想の形を実現させていくかは、かなり考えていましたね。

ーー普段のお仕事とはまたアプローチが違ったわけなんですね。

西脇さん:通常のクライアントワークでは、エンドユーザーの方たちにバチッとハマる空間をつくるのが基本ですが、今回は対象がかなり不特定多数なので(笑)。まちのみなさんを対象にしたアンケート調査でもあまりに意見がばらばらすぎて、これを網羅して一発解決できるアイデアは存在しないし、そこは一つの難しさでしたね。いろいろな人が暮らしている以上、必要なデザインも違いますし。

そのなかでも、プロジェクトチームのみなさんと議論しながら手探りで見つけていく過程は、すごく新鮮でした。

ーー普段からさまざまなお店に通っていて、まちの“ヘビーユーザー”でもある西脇さん。これからの学大への期待を教えてください。

西脇さん:今の学大は圧倒的に夜のイメージが強くて、昼の顔がまだないなと感じているので、そこも含めてこの高架下プロジェクトには可能性があるなと思っています。飲食だけじゃなくて、いろいろな目的を持って人が訪れる場所にしたいですよね。

個人的には、このプロジェクトを通して、改めて自分がやっている仕事をもっと学大の人にも知ってもらいたいなと思いましたし、僕自身もより人との関わりを増やしていきたいなと考えています。

03. 大藪善久さん・金子将太さん(パブリックスペースデザイナー)

金子さん(左)、大藪さん(右)

パブリックスペースの計画・デザインを行う株式会社SOCIの代表・大藪さんと金子さん。扱うのは道や公園、駅前の広場、川などの公共空間やランドスケープなどさまざま。2019年にSOCIを設立するとともに、学芸大学に拠点を移動。現在は、ヤマト運輸の鷹番営業所の4階に事務所を構えています。大藪さんは、お子さんと一緒に碑文谷公園に行くのが週末の定番なんだとか。

ーープロジェクトメンバーの中ではまだ学大歴が浅いおふたりですが、このまちにどんな魅力を感じていますか?

大藪さん:良い意味で東急沿線っぽくないですよね。東急東横線のブランドをつくってきた、自由が丘、中目黒、田園調布などの知名度の高い駅と違って、駅前にバスターミナルがなくて、すぐに商店街が広がっているじゃないですか。

車に邪魔されずに歩きまわれるし、東と西でそれぞれのキャラクターがあるから行き来するのも楽しくて、毎日新しい発見もある。そういう意味でもすごく魅力的なまちだなと思います。新参者ではあるんですけど、一発でやられましたね(笑)。

金子さん:僕は足立区出身で、地元と同じような雰囲気を感じつつも、学芸大学に住んでいる方たちはみなさんは品がいいような気がします(笑)。商店街にもいろいろな店が立ち並んでいて、幅広い年代の方がいらっしゃいますが、よくよく見るとどの利用者さんも品を纏っているというか。

ーー少しずつバックグラウンドが違いつつも、近しい業種のメンバーが集まっていますが、「SOCI」として参加する上で、大切にしていた視点や意識していたことがあれば教えてください。

大藪さん:五本木エリアから碑文谷公園エリアまでを、いかに繋げるかはすごく気にして提案してきたつもりです。いろいろな個性があるエリアだけど、同じテーマをベースに学大の骨格として何が作れるかという部分は、僕らSOCIに求められてたことだと思うし、鳥の目を意識しながらより高い視点で、つなぎ方を考えていく必要があるなと。

でもわかりやすく一本線を描くというよりは、小さいものの集合としてリズムをつくりつつ、いかに全体のまとまり感を生み出せるかということを大事にしていました。個人的にはもちろん、子どもがいる父親としての視点もあったと思います。

ーーこの高架下プロジェクトをきっかけに、学大のまちがどうなっていったらいいなと思いますか?

金子さん:無目的でも、まちの中に存在できるようになったらいいなと思います。今は買い物や飲食をするなどの目的を持ってまちを歩く感覚が強いけれど、何も考えずにふらっと立ち寄れる場が高架下にできることで、ここに住む人たちの選択肢がもっと広がるでしょうし、直接的な豊かさに繋がるんじゃないかなと。僕もユーザーの一人として早く使いたいです。

大藪さん:僕としては、高架下が変わるのをきっかけにこのまちに「キャスト」が増えたらいいなと。まちにお客さんとして関わる「ゲスト」と、自分で商売をする「プレイヤー」の中間を僕らは「キャスト」と呼んでいます。

プレイヤーになるのはハードルが高いけれど、たとえば高架下のフリーマーケットに出展するみたいに、日常の延長線上での振る舞いが同じまちの誰かの楽しみに繋がっていく、みたいなことが増えていくと面白いですよね。ゲストのままだとあくまで無名で、なかなか繋がりが広がっていかないけれど、キャストになることで固有名詞としてこのまちにいられるというか。それによってさらにコミュニティ同士が繋がったり、新たに生まれたりしていくでしょうし、僕自身も今からすごく楽しみです。

記事は後半に続きます。お楽しみに!

文:むらやまあき


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