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vol.1 7/30開催「学大未来作戦会議#6」レポート

お元気ですか?
「みんなでつくる学大高架下」公式note、記録係のイノウエです。

今回は7月30日にC/NEで行われた「学大未来作戦会議#6」のレポートをお届けします。テーマは「まちとつながる豊かな働き方 ~高円寺小杉湯と考える、学大ローカルエコノミー~」。

ゲストには、高円寺の銭湯を中心に住民やクリエイターと一緒にローカルエコノミーの輪を広げている小杉湯のメンバーと、学芸大学のC/NEの館長をお迎えして、まちと住民をつなぐ場づくりや地域で循環するローカルエコノミーについてみんなで話し合いました。

高円寺小杉湯のメンバー
学大住民を中心におよそ25名が参加

参加者の中には高円寺住民と学大住民が入り混じり、それぞれのまちについて話したり、小杉湯の取り組みから学大に活かせるヒントをもらったり。まち談義が盛り上がりましたよ。ではレポートを始めます!

【今回のゲスト】
・平松佑介さん 「小杉湯」三代目オーナー
・山崎紗緒さん 「小杉湯となり」店長、「株式会社銭湯ぐらし」所属
・菅原理之さん 「小杉湯」CSO(Chief story teller)、「SUNDAY FUNDAY」代表
・上田太一さん 「C/NE」館長

ゲスト4人の自己紹介からスタート

omusubi不動産・殿塚さんの司会進行で今日の未来作戦会議が始まりました。最初に東急・長屋さんが「みんなでつくる学大高架下」プロジェクトの紹介をしたあと、各ゲストの自己紹介へ。参加者の皆さんはときおりメモを取ったりと熱心に耳を傾けていました。

ゲスト1人目:平松佑介さん 
「小杉湯」三代目オーナー

「小杉湯」 三代目オーナー  平松佑介さん
国の登録有形文化財にも登録された小杉湯

平松さんは高円寺で1933年に創業した銭湯「小杉湯」の三代目。小杉湯は富士山の壁画が描かれたクラシックな銭湯ながら、イベントやギャラリー、本やグッズなどの物販、企業コラボなど新しい取り組みに挑戦。高円寺のまちで暮らすさまざまな人が交わる場所として愛されています。小杉湯に関わっている人をまとめた図がスクリーンに映し出された瞬間、その多種多様さに会場からは「おおー」と声があがりました。

「銭湯フェス」や「踊る銭湯」などのイベントを定期的に開催

平松さん「自分なりに再定義した銭湯の価値は、“心地よい中距離のコミュニティ”。お風呂に入って気持ち良くなるついでに、顔見知りの近所の誰かとたわいもない会話をして、地域との繋がりを感じる。自分も他者もそのままでいられるちょうどいい距離感で、自分のことを受け入れてくれる場所。それが銭湯なんじゃないかと。また『ケの日のハレ』という言葉を大切にしていて、日常の中の小さなことに幸せを感じられる場所でありたいと思っています。」

ゲスト2人目:山崎紗緒さん 
「小杉湯となり」店長
「株式会社銭湯ぐらし」所属

左:「小杉湯となり」店長の山崎紗緒さん  右:「小杉湯」CSOの菅原理之さん

山崎さんは2020年、文字通り小杉湯のとなりにオープンした「小杉湯となり」の店長です。現在60名ほどの会員がいる小杉湯となりは”銭湯付きセカンドハウス”として、1階はキッチン、2階は大きな本棚がある書斎、個室も完備。2021年には新たなるサテライトスペース「小杉湯となり-はなれ」もオープンしました。

運営は山崎さんも所属する株式会社銭湯暮らし。メンバーは小杉湯ファンのクリエイターたちで、2017年に取り壊し予定だった築40年の建物を、1年間限定の”銭湯付きアパート”として貸し出すというプロジェクトを行ったときの入居者でした。住みながら小杉湯を盛り上げるというミッションを通して銭湯の魅力に気づいた彼らが、「小杉湯となり」「小杉湯となり-はなれ」をつくったのです。

文字通り、小杉湯の隣にオープンした「小杉湯となり」
会員がワークスペースとして活用する書斎

山崎さん:銭湯の良さは日常の中に余白が生まれること。しっかり仕事をした一日の終わりに銭湯へ行って心と身体を癒し、お風呂という場を共有しながら近所とのつながりを感じる。そんな銭湯のある暮らしをいろんな人に体験してほしいという想いで運営しています。会員さんや運営メンバーの企画で、地域を巻き込んださまざまなイベントも生まれています。

平松さん:小杉湯となりをやっていて思うのは、銭湯を中心に半径500mくらいのまちを”家”と捉えるライフスタイルの良さ。2拠点生活やワーケーションが流行していますが、都会と地方ではなくても半径500mの中で複数の拠点を持って、関係人口を増やしていくことでも暮らしに張りがでる。学芸大学っていう小さな範囲の中でもできることなんじゃないかなって。

ゲスト3人目:菅原理之さん
「小杉湯」CSO(Chief story teller)
「SUNDAY FUNDAY」代表

みんなから”ガースー”と呼ばれる菅原さんは西小山出身、学大在住歴10年。ヒグマドーナツにも5年くらい通っているそうです。大学時に企業、ITベンチャーや広告代理店を経て、小杉湯に就職したという異色の経歴。さらに現在はSUNDAY FUNDAYという会社を立ち上げ、移動式サウナ「サウナトラック」で音楽フェスやイベントに出店。一方で千葉県勝浦市で100年以上続く銭湯の存続プロジェクトに関わるなど、小杉湯でやってきた銭湯を中心としたまちづくりを外でも実践しています。

菅原さん:僕自身は高円寺在住ではないので、外からの目線で小杉湯に関わっています。温浴の可能性はまだまだあると思うので、銭湯に行く人が少なくなっているいまその価値を届けたいですね。

ゲスト4人目:上田太一さん 
C/NE館長

「C/NE」館長 上田太一さん

「みんなでつくる学大高架下」の運営メンバーでもある上田さんが今回はゲストとして登壇。C/NEに初めて来る方は5名ほどいらっしゃったので、駆け足で自己紹介をしました。

3年前にオープンしたC/NEは「路地裏文化会館」をコンセプトにしたカルチャースペース。平日はカレー屋さんの間貸し、2階はコワーキングスペース。週末を中心に映画や食などのイベントを開催していて、運営は建築施工からコンセプトメイキングまで、場づくりのソフトとハードを両方担う合同会社ウェルカムトゥドゥです。上田さんにはC/NEを通じてまちをおもしろくしたいという想いがあります。

C/NEでは毎週末映画の上映会やポップアップイベントが開催

上田さん:未来の友人を見つけることは何歳になっても大切な宿題だと思っていて。C/NEはカルチャーを通じて、自然に人や機会の繋がりができる場所でありたいと思っています。昨日まではお客さんとしてイベントを楽しんでいた人が、次はカウンターに立って主人公になっていることも多々あるのがC/NEの特徴。主客が反転して主人公が増えれば増えるほどまちがおもしろくなるし、僕らの場づくりにも繋がります。今日初めてここに来た人もぜひC/NEに遊びに来てくださいね。

【クロストーク】テーマ①:まちで働くってなんですか?

お次はゲスト4名でトークタイム。司会の殿塚さんが質問を投げかけます。

左、omusubi不動産の殿塚建吾さんの進行でクロストーク

殿塚さん:まちと繋がる方法として『まちで働く』ということがあると思うのですが、皆さんはまちで働くって何だと思いますか?

上田さん:銭湯ぐらしさんのメンバーって本業は他でやりつつ、もう一つの仕事として参加されているんですよね。皆さんどういうモチベーションなんですか?

山崎さん:番頭のアルバイトは1回3時間と決まっていて短いんです。

上田さん:つまりモチベーションはお金を稼ぐことじゃないですよね。それでもまだ小杉湯に関わって働いていたいっていう。

山崎さん:従業員はお風呂に入って帰ることができるので、そこで近所の人に会ったり、仕事の前後で人と話したり。銭湯ぐらしのメンバーはみんな社畜のように働いていた人たちなので(笑)、小杉湯で働いてお風呂に入ることが強制的な息抜きになるんじゃないかなと思います。あとはベンチャーみたいなチームなので、自分の仕事が世に出るのが早い。自分が撮った写真がwebサイトに載っているとか。そういう本業では出しきれない自分の「やりたい」を小杉湯だと出せるんだと思います。

菅原さん:まちで暮らしていると基本的にはお客さんの立場になる。応援している側に入ると自分の人生の可能性も広がるし、そのご褒美は「楽しい」。それがモチベーションなんじゃないかと思います。

平松さん:小杉湯は社会人のアルバイトが多くて。例えばめちゃくちゃ優秀なライターさんが週に一度シフトに入ってくれるんですが、タオルを畳む仕事がすごい好きなんです。その仕事に癒やされるらしくて。マインドフルネスみたいな(笑)。

菅原さん:直接お客さんとフェイス・トゥ・フェイスで関われるのも小杉湯で働く楽しさ。番台で「ありがとう」とか「今日いいお湯だったね」と言ってもらえるのがうれしい。

平松さん:働くってまちと関わる”言い訳”なんじゃないかな。仕事があるということが、自分が関わりたいまちや繋がりたい人ときっかけをつくる言い訳になると思う。小さい”働く”がまちにあるとすごく関わりやすくなる。

上田さん:僕も実は「まちで働くこと」はひとつの特権だと思っていて。僕たちはC/NEと台湾料理屋CHI-FOを運営しながら、建築やデザインの仕事ではリ・カーリカさんなどまちの人と一緒に仕事をさせてもらっている。こういう営みを続けていると本当に、家からC/NEまで歩いてくる道すがらにたくさんの人が声をかけてくれるんです。すれ違った人と挨拶するなんて、東京のまちでそんなこと期待すらしていなかったけど、そういう機会が増えると「ああ、自分はこのまちの一員なんだ」っていう充足感が得られるんですよね。だからどんな小さなことでもいいから、プロジェクトみたいなことを一緒にやることで人間関係ってぐっと深まると思う。いずれは友人になれる可能性もあるんですよね。

【クロストーク】テーマ②:まちと関わるコツってありますか?

殿塚さん:まちで働くことがまちと関わるきっかけだとした時に、コミュニケーションの取り方のコツとか、ご自身が心がけていることってありますか?

職業も年齢も様々な参加者

菅原さん:いい質問ですね。

一同:

平松さん:僕に関して言うと家業で地元で、これからずっとやっていくという長い時間軸で考えている。上田さんも学芸大学に根を張ってやっていくという想いがあるから、悪いことできないし(笑)。コツというか、まちとの関わり方を考える時に時間軸って大事だと思います。

山崎さん:小杉湯となりも特殊な場所で、最初に言っていたのは”コミュニティにしない”ということ。コミュニティにしようとすると頑張って仲良くならないと居場所がないという風に見えてしまうので、なるべく銭湯の空気感と同じでご近所の方が集まるゆるめの距離感を大切にしています。長くゆるく付き合っていく。

菅原さん:僕の場合は少しだけ自分の腕を開くような感覚。一気にハグするのではなくて、軽い挨拶をするとか。少しだけ自分を開くことで受け入れてくれる人が結構いると思う。

上田さん:ハードルを下げることですかね。C/NEでお客さんだった人がイベントを企画する側に反転するのは、「自分でもできるかも」と思ってもらえるくらいのハードルの高さにしているからだと思います。うちのSNSを見てもらってもわかると思いますが、ビジュアルをしっかり統一して高い美意識を打ち出しているわけでもないですし、第一線で大活躍しているシェフが来ることもあれば、まだ誰も知らないニューカマーがゲストとして来ることもあるカオス。だから心理的ハードルはたぶん低い。イベントのクオリティは僕らの経験則を活かしながら、少しだけお膳立てをしながらちゃんと着地するようにフォローしたり。

殿塚さん:「ちょっとぐらい暴投でもいいから投げてこいよ!」って言ってくれるキャッチャーみたいな感じですか?......あれ、ぜんぜん伝わってない?僕が暴投しちゃったかな。

一同:笑笑笑

【クロストーク】テーマ③:学大とつながって働くには?

殿塚さん:小杉湯さんや小杉湯となりのように、日常的に銭湯を利用者として関わってくれる人から働いてくれる人まで、地域の関係人口を増やしていくには、学大だとどんな方法があると思いますか?

上田さん:学大って、高円寺にとっての小杉湯さんのように何か一つのランドマーク的な対象があるわけじゃなく、まち全体を好きな人が多いんです。その気持ちをどうやって働くみたいなところに繋げられるかなぁって自分もいま考えていて。碑文谷公園や高架下、あとは食やクラフトビールも活気づいてきているので、いろんな資源がありそうだと思っています。そこにもっともっと住民たちが関わっていく機会が増えれば、より豊かなまちになるのかなと。

山崎さん:学大の話とは離れるかもしれないけれど、小杉湯となりの会員で小学生の頃から書道を15年やっていた方がいて。小杉湯となりで「自分らしい文字を書こう」というワークショップをやってもらったんです。そうやって自分の特技をゆるっと活かせる場所があったらいいと思います。

上田さん:それでいうと学大はスモールビジネスとも相性がいいと思っていて。例えば小さなお店を作るにもたくさんの人のヘルプが必要じゃないですか。建築はもちろん、ロゴや名刺、写真を撮る、webサイトを作る、メニューを開発するとか。学大にはクリエイティブな人材が多いので、まちのスモールビジネスの困りごとをまちの人材が担うことができる。ローカルエコノミーというと理想が高すぎるかもしれないけれど、自分のスキルを生かしてまちに貢献していくことができるようになると思う。

平松さん:もしも自分が何か地域でやりたいことがあったら、僕らにアドバイスを求めてほしいですね。

菅原さん:地方の地域おこしプロジェクトなんかで「この地域のために○○したいです!」って言う人は上手くいかないことが多くて。自分のやりたいことが”地域のため”と合わなくなるんですよね。

平松さん:自己実現だと困るんです。アドバイスさせてもらえたらこちらも責任を持って上手くいくようにサポートするし、想いを形にしていく人ってそういう人だと思います。

参加者も一緒にグループトークタイム

4人の熱いトークセッション終了後、テーマ別に3つのチームに分かれてゲストと参加者のグループトークを行いました。参加者は学生、PR、ライター、医療関係、C/NE常連、アパレル、建築、旅行関係、実際に中目黒でまちづくりをしている銭湯の三代目オーナーさんなど多彩な顔ぶれ。学大住民のみならず、高円寺住民の方の姿も見られました。グループトークで印象的だった発言をダイジェストでお届けします。

各自興味のあるテーマに分かれてグループトーク

【チーム1】まちでプロジェクトをつくっていくことに興味あり!
ゲスト:平松さん、殿塚さん

・「空家バンク」みたいな、「商店街の空きバンク」があったとして、そこに情報を送れば、借りたいという人が集まるなど。本当の賃料を払って借りるのではなく、まちの為にやりたいので少し安く借りれる、といった仕組みになっていると良い。

・「場所を使う時」に、期限を明確にすることで物事が進みやすくなる。(平松さん)

・廃校になる小学校をアートにするプロジェクトが面白かった。プロのアーティストや子供や地域の人が参加して、学校を作っていく、アートにしていくような形で行われていて。楽しいし、人とつながれるし、そういうことが地域でできると良いなと思って今日は参加した。

・小さいとこでも良い、という先ほどの言葉に救われた。何か大きいことを、と思いがちだけど、小さいジャブから。

【チーム2】場所やイベントの運営に興味あり!
ゲスト:菅原さん、上田さん

・(高架下は)まちだからこそ、勝手につくってほしくない。でも勝手にきめんなよ、と言いつつ、インフラはつくらねばならない

・完成形をつくらない。チャーミングさがあり、みんなが足していくイメージ。箱ができて有名チェーン店がテナントに入るのでは同じまちが量産される。(上田)

・自分たちでつくれて高齢者まで関われる場所がほしい。

・碑文谷公園が活用できれば託児所が必要になる。まだまだまちに関わりたい高齢者が順繰りで面倒をみるなど。

【チーム3】まちで何か活動してみたい!
ゲスト:山崎さん、omusubi遠藤さん

・学大のイメージは家賃が高い、偏っている、おしゃれ。高円寺は安くないけど条件付きで色々ある、家賃の幅が広いのでいろんな人が住んでいる街のカオス感がある。飲食の話に偏りがちだけど、高円寺は食以外のライブハウスとかカルチャーがある。

・学大は過渡期だなと思っている。個人店が多いように見えて裏で同じコンサルとかが関わっていることも多い。高円寺はそれを感じ取って選んでいる。選ぶのは大衆なのでそこがどうなるか。

・銭湯や本屋さんなど一人で行ける場所が高円寺はたくさんある。学大は少ない。

学大と高円寺の共通点と違いで議論が白熱

次回はあなたもジョインしてください。

いかがだったでしょうか。

「まちで働くことは、まちに関わるいい言い訳」というところが個人的には響きました。ご飯を食べるための仕事も大切ですが、関わりたい人と関わっていくために自分から望んでする仕事って、ヘルシーで幸せですよね。

ではでは最後まで読んでくださりありがとうございます。
みなさんも「みんなでつくる学大高架下」プロジェクトに参加してください。「学大未来作戦会議」の開催情報などは、公式Instagramでチェックできます!

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文:井上麻子

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