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二枚貝とルアーのリップ その”裏”渦の検証


タナゴを守りたいならイシガイを守れ

いきなりだが、イシガイ類の話から始めたい。
日本のみならず世界的に絶滅の危機に晒されているのが、淡水の二枚貝「イシガイ」の仲間。タナゴの産卵基盤になってもいるので、イシガイ類の消失はタナゴ類の消失にもつながる。

タナゴ釣りが好き

そんなこんなで、なのだが。
タナゴ好きの生徒が「イシガイの保全こそ必要だ」と始めた探究が高校生国際シンポジウムで評価をして頂いた。
 発表の中で触れたのは、流れの中で殻の後方にできる渦("裏”渦)のこと。これは「カルマン渦」「双子渦」と呼ばれるものだ。 

貝殻”裏”の渦は採餌効率も繁殖効率も上げているようだ。

 そこで、イシガイ類はこの渦を利用して餌を取りやすくしたり、繁殖しやすくしているのではないかと考えて色々と検証した。その結果、おそらくその仮説は正しかろうという裏付けができた。さらに、殻の形状によって後方にできる渦が異なることにも、新たに気づけた。

  イシガイ類を保全したい生徒が貝殻後方の”渦”の視点からどのように「保全」に切り込んでいくのかは、今後の楽しみである。

ルアーはリップ裏の渦で動く

 ところで、ルアーを動かす要因も「カルマン渦」である
 ちなみに、リップの形とか厚み、取り付ける角度でルアーの動きは変化する。なぜなら、それによりリップの”裏”にできる渦の形状が変わるからだ。つまり、「リップ裏にどんな渦を作るのか」が泳ぎデザインなのである。
 なお、流水の粘度にも渦のでき方は影響されるので、淡水のルアーを海で使うと動きが大きくなることもポイントだ。逆に、海専用のルアーは淡水では動きにくくなる。
 ところで、「カルマン渦」になりきれない?「双子渦」ができると、ルアーは泳がない。百聞は一見にしかずなので、わかりやすい解説動画を紹介します。ライゼンバイト社さんのYouTubeチャンネルです。(ウォブリングというのは渦が生むルアーの動きのこと。)

この動画、『流速が遅くなるにつれて、カルマン渦から双子渦へと変わっていく』のが良くわかる。つまり、ルアーによっては、ゆっくり動かそうとすると泳がなくなる。これはカルマン渦が双子渦に変わるからである。

渓流ミノーのリップを比較

 優秀なルアーはどんな速度でもしっかり泳ぐことで有名だ。そして、そんなルアーはどんな場所でも優秀な釣れっぷりを発揮するのである。
 さて、下の写真は手前からハンプバックミノー(ラッキークラフト)・D-コンタクト(スミス)・スピアヘッドリュウキS51(DUO)・ラパラF3(ラパラ)と並べてみた。

「動かさないための極小リップ」という逆の発想

 逆の発想がI字系ルアーだ。ブルブルと泳がず、「スーっ」と前に進むだけのルアーを最近ではI字系という。
 この場合、カルマン渦ではなく双子渦が発生して「左右にブレない」安定性を生み出している。「じゃあ、リップはいらないのでは?」ともなるが、実は極小リップが良いはたらきをする。泳ぎは産まないものの、巻き抵抗を産むため、ルアー操作をしやすくなるというメリットがあるのだ。

わざと削ってI字系に改造してみたことも…

まとめ

そんなわけで、二枚貝からルアーのアクションまで話がそれたが、裏”渦”の使い方も視点を変えるとさまざまなのが面白い

・貝が餌や精子・卵の滞留効果を上げる為には裏”渦”(カルマン渦・双子渦)を大きくするか複雑化する必要がある。あと、ひょっとしたら渦の形状を生態に関係があるかもしれない。

・ルアーを作る為には使いたい場所と使い方をはっきりさせて、狙ったカルマン渦を生む為の設計が必要がある。逆に双子渦で動かさない設計もあり。

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