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Qception設立の想い

こんにちは、ガクです。
noteに登録して最も書きたいと思っていたテーマである「なぜスタートアップを設立したか」について書いていこうと思います。

ニオイセンサの研究

私は、2015年にポスドクとして現所属の国研に来て以来、ずっと膜型表面応力センサ(MSS)を使ったニオイセンサの研究をやってきました。もともと化学のバックグランドがあり、材料科学の切り口でニオイセンサを研究・開発できないかと当時は考えていたわけですが、ニオイセンサというのは実にいろいろな知識が求められる研究分野であり、結果として有限要素解析だったり機械学習だったり、それまで全く馴染みのなかったいろんなことに挑戦してきました。

挑戦した「いろんなこと」には、産業界との取り組みも含まれます。学部・大学院と理学系の研究室に所属していた私にとって、企業との様々な取り組みはとても新鮮でした。「ニオイを測れるセンサ」というのは産業応用可能性が高く、実に多くの企業に興味を持っていただき、様々な分野の様々な規模の会社と共同研究などの取り組みを行いました。こうした取り組みの中で、「これだけ多くの企業に期待されて、自分もこんなに頑張ってるニオイセンサの技術なんだから、絶対に世の中に送り出さなければ」という想いを抱くようになりました。当時私は任期付きのポスドクで、一寸先は闇のキャリアでしたが、仮にもし研究者のポストを獲得できなかったとしても、なんとかしてこのニオイセンサの社会実装の実現に貢献したいと思っていました。(ちょうど婚約・結婚をした時期で、妻に、自分のキャリアの見通しについて説明したのを覚えています)

そんなこんなでニオイセンサの研究を続け、企業とも様々な取り組みを行っていく中で、いろいろ見えてくるものがありました。

「ニオイを測る」のはめちゃくちゃ難しい!

やればやるほど「ニオイセンサなんてできっこないんじゃないか!?」と思うほどに、ニオイを測るというのは難しいと痛感しています。ニオイセンサの技術的な課題についてはまた別の投稿で書くとして、「センサでニオイを測る」を産業レベルで実用化するには、まだまだイノベーションが必要であると感じています。
とはいえ、難しいなりに「これはいけそうだ」というものが見えてきたのも事実ですし、「この課題が克服できればこんなことができるんじゃないか」というワクワクも増していきました。

 研究者としての企業との付き合い方

国の研究機関に所属する研究者が企業となにかしようとすると、いろいろ制約があります。「本当はこうしたいけどできない」「こうした方が効率的なのにできない」といったことが多く、そのために自分たちが生み出した技術の社会実装が遅れてしまっているのではないかと感じる場面もあり、研究者としてできることの限界を感じました。また、研究者というポジションでは、ニオイセンサが実際に誰にどこでどう使ってもらえるのかが見えにくく、いまいち真のニーズに踏み込みにくいもどかしさを感じていました。

会社設立

以上のような背景があり、どうすれば自分たちが育んできた技術を世の中に送り出すことができるだろうと考えるようになり、その過程でスタートアップ設立を考えるようになりました。そして、起業家育成プログラムやピッチイベント、創業セミナーなどに参加したり、ハンズオンの支援を受けたりして、アントレプレナーシップや会社経営についての基礎的な知識を身に着け、2022年5月2日に株式会社Qceptionを設立いたしました。

会社を起こし経営していくベースにある信念は「自分たちが育んできた技術を世の中に送り出したい」という気持ちです。研究して論文を書いて…という研究者としての基本的な営みももちろん大切にしていきたいですが、今は技術の社会実装を自分たちの手で行いたいという想いが最も強く、それを実現するプラットフォームとして国研発スタートアップは最適だと考えています。そして、会社を立ち上げるからには、技術の社会実装を実現したいという研究者個人の想いに加えて、社会に対してなんらかの「価値」を提供したいと思い、それが「『ニオイを測る』文化を作る」というQceptionの掲げるビジョンです。

ビジョン

40年の歴史があるものの未だ世界的なスタンダードが確立されておらず、技術的課題がまだたくさんあるのがニオイセンサ業界ですが、それゆえに、まだ誰も気づいていないような大きな可能性が眠っていると考えています。この業界において、基礎科学に立脚して技術に誠実に向き合い、ニオイセンサの実績を一つずつ積み上げていく。そして将来、「ニオイを測るとはこういうこと」というスタンダードを確立し、「ニオイを測る」という新しい文化を創造できるような、そんな企業を目指しています。


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