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法学部に3年間在籍して思ったこと

0.はじめに

どうもこんにちは、Gakkyです。今回が初めてのnoteの投稿となるのですが 、ここでは、日ごろ僕が考えていることを言語化する機会として、色々なジャンルのことを書いていければと思います。

最初に僕のプロフィールを説明しておくと、今は京都大学の法学部に所属していて、4月から京都大学の法科大学院(弁護士・裁判官・検察官になるための学校です)に進学します。法科大学院には3回生からでも進学できる制度があり、僕はそれを利用したため、3年間で僕の学部生活は終了ということになります。そこで、3年間で考えてきたことをここでまとめておければと思いました。

以下では、まずそもそも法学部では何を勉強するのか?を紹介した上で、僕が3年間学んで考えたことをまとめていきます。法学部の人は1はさっと読み流してください。

1.法学部はどんなことを勉強する?

所詮まだ3年間(1回生は勉強してないので実質2年間)しか勉強していないので、正確なことは書けませんが、ざっくり説明したものとして読んでください。法学部生の人はテキトーに読み流してください。

法学部でメジャーな科目に、民法・刑法・憲法、、、といったいわゆる六法という科目があります。僕はよく、「法学部って六法覚えるんやろ~??」みたいなことをきかれますが、そんなことは一切しません。

例えば、こんな事例を考えてみます。「AさんはBさんに家を売りました。しかしCさんの方が高く買ってくれることがわかったので、AさんはCさんにも家を売る契約をしてしまいました。」

これはいわゆる二重売買のケースですね。法学部生にとってはおなじみのケースでしょう。さて、このようなケースがあったときにどうやって解決するか?ここで法律が登場します。一旦条文を載せますが、ちゃんと解説するのでここで挫折しないでくださいね。

民法177条「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」

「不動産」は「建物or土地」と思ってください。「物権」は「自分が持ち主であるという権利のこと」です。つまり、「不動産に関する物権の得喪及び変更」=「家の持ち主が変わったこと」です。次に「登記」とは、とりあえず「誰が所有者であるかを書いておくもの」と思ってください。また、「対抗する」=「主張する」と読み替えましょう。

少し説明が長くなりましたが、結局177条が言っていることは「家の持ち主が変わったことは、登記簿に書いておかないと、第三者に主張することができないよ!」ということです。

ということは、さっきのケースで言うと、BさんかCさん、どちらか先に登記簿に「自分が持ち主になった」と書いた人が勝ち!ということになりますね。まぁこんな感じでまず法学部生は条文の読み方を勉強します。

では、さっきの事例を少しいじってみましょう
「AさんはBさんに家を売りました。しかし、Cさんは、Aさんがお金がなくて困っていることを知り、Aさんをそそのかして自分にも家を売るように言いました。家を売却してもらったCさんは、登記を備え(さっきでてきた、持ち主であることを記録するやつです)、Bさんに高額で家を買わせようとしました。

ちょっと事例が長くなりましたが、とりあえずCさんは卑怯なやつと思っておけばオッケーです。しかしさっきの話だと、登記簿に先に書いた人が勝つ、つまりCさんがBさんに勝ってしまいます。これは僕たちの常識から考えておかしい事態です。ではどうやって民法は解決するのでしょうか?

さっき「家の持ち主が変わったことは、登記簿に書いておかないと、第三者に主張することができないよ!」って言いました。このままではBさんは登記簿に書いていないので、Cさんに自分が所有者だと言えません。そこで民法では「第三者」の範囲を制限することにします。結構ややこしいこと言ってるので、わからなければ無視でいいですが、一応説明します。

177条のルールの根底には自由競争のルールがあります。これはつまり、他の人が先に契約してても、それより有利な条件を提示したら、その人が勝った方が社会的にいいよね、っていう考え方です。だから、早く登記簿に書いたもの勝ちルールなのです。しかし、そうはいっても取引をする上で守るべき規範を破った者までこのルールを適用していては、世の中は不信感で溢れてしまいます。そこで177条の言う「第三者」に「取引上の社会的規範を破ってまで取引をした人は含まれない」と民法では考えます。(その結果、CさんはBさんに対して、「登記を持っていないから持ち主と認めない」と主張することができなくなります。)

このように、条文では具体的に書かれていないことを、理由付けをしながらルールを見つけていく、「法解釈」ということを法学部生は勉強します。


☆1のまとめ
①法学部生は条文の読み方を勉強する
②法学部生は、条文に具体的に書かれていないこともルールを導き出していく

2.法学への疑問

だらだら書いてしまいましたが、これを読んでどう思いましたか?「面白い!」と思う人も「くっだらねー!」って思う人もいると思います。僕は「くっだらねー!」って思っています。

このくだらなさはどこから来るのでしょうか。法学ではこのように、法律の読み方・法律の解釈の仕方を勉強するのですが、これらは所詮人間が作ったルールにすぎません。人間が作ったルールの読み方について、あーだこーだと議論して一体なにになるのか? むしろ重要なのは、なぜそのようなルールを制定すべきなのか? よりよい社会にするためにはどんなルールが必要なのか?ということではないでしょうか。(もはや誰に書いているのかわからなくなってきましたね)
さっきの二重売買の話で言うと、二重売買は自由競争のルールで認められるけど、社会的規範を破ったような人はダメという読み方をしました。しかし、ここで重要なのは「自由競争をすべき理由は何か?」「自由競争を、規範を破った者には適用してはいけない理由は何か?」ということではないかと考えるのです。

こういった問題に対して法学は解答を用意していません。法学はあくまで現状の制度がどのようになっているのか、どう解釈すべきかを勉強します。理想の制度がどのようなものであるかは、法学ではなく様々な学問の見識が必要です。(さっきの例でいうと自由競争をすべき理由とかは経済学から答えがでてきそうですね。)

3.今考えていること

くっだらねー!とか言いながら結局法科大学院に進学するのはなぜか。理想の制度について考えるためには、まずは現状がどうなっているのかを理解する必要があります。そして何より、法律を使って仕事をするというのはちょっとかっこいいですね。まぁそんな安直な理由もあって、あと2年間大学院で勉強を頑張ろうと思っています。

そして、同時にいろいろな学問分野を勉強してみようと思います。先ほども言ったように、法解釈をどうすべきか、理想の制度とは何か、ということに対して法学自体は答えを持っていません。他の学問分野の知見を融合させて始めて、どのような解釈が妥当か?どのような制度がよいか?の答えが出てくると思います。

まぁそういうわけで結論は、「法律はくだらないけど、結局法律も他の学問も勉強してみる」というハードモードですね(笑)


ここまで長々と付き合ってくださった方は本当にありがとうございました。今後も、法律に限らず色々なことについて書こうと思うので、是非そのときは読んでみてください。

※法学のこういう捉え方あるよ!っていう意見あればぜひ欲しいです!

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