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企業法務弁護士は一体どのような仕事をしているのか?


最近は仕事に追われる日々が続いていましたが、今週は夏期休暇をいただいており、やっとnoteを書く時間をとることができました。

私が弁護士という職業を目指し始める前は、弁護士といえば訴訟や離婚といった紛争を扱うイメージしかなく、お客さんも会社というよりは個人をイメージしていました。世間からの弁護士のイメージも同様で、企業法務弁護士の仕事内容は「弁護士」というワードを聞いて思い浮かぶ仕事ではないように思います。

ロースクールに進学してからは、お客さんが企業中心の事務所が存在することを知り、なんとなくM&A、ファイナンス、コーポレート、、、といった業務があることは知りましたが、やはり具体的にどのような業務をしているのかイメージがわかなかった記憶があります。

そこで、企業法務弁護士として働き始めてまだ8か月程度ですが、実際の実務に触れることによって企業法務弁護士の解像度も大きくあがりましたので、私の仕事内容を少し紹介してみたいと思います。

1 企業法務の概要について

前置きでは「企業法務」として一括りにしてしまいましたが、「企業法務」といっても極めて仕事の幅は広く、私がそのすべてを知っているわけではありません。そのため、以下では、私の取り扱っている「企業法務」について紹介ができればと思います。

企業法務の仕事には、大きく分けると二種類の仕事があります。1つは顧問先の会社の日々の法律相談への対応、もう1つは個別案件への対応です。

法律事務所と依頼者である企業との一般的な契約形態として、顧問契約があります。これは、例えば月額10万円で契約し、企業が事業活動を行う中で生じた法律問題があれば、いつでも相談を可能とする契約を締結するといったものです。

顧問契約に基づく法律相談といっても色々な相談があります。例えば、問題従業員に対して処分をしたいが、このような処分は妥当かどうか。個人情報の漏洩が生じてしまったが、対応はどうすればよいか。契約書を締結したいが、この内容で問題がないか、など本当に様々です。

次に、個別案件への対応です。法律相談の範囲にとどまらない、継続的に対応が必要な案件については、顧問契約とは別途契約を締結して対応を行うことになります。

例えば、紛争対応は個別案件の典型例かと思います。紛争対応では、依頼者からまずは情報収集を行い、それを元に法律的な整理を行ったうえで、相手方と書面等でやりとりを行います。その後、二者間でのやりとりではうまく交渉がまとまらない場合には、裁判等の第三者機関に関与してもらい、解決を図ることになります。

株主総会対応では、招集通知等の株主総会開催のために必要な書面についてリーガルチェックを行います。そして、当日の想定質問への回答案のチェックや、当日の議事次第の作成等も行います。そのうえで、当日に動議等のイレギュラーな事態が発生した場合にはその対応も行いますし、他にも株主総会の開催にあたって問題が生じた場合には、適宜相談に乗ることになります。
株主総会は企業の重要事項を決議する場ですので、取消事由が発生することのないよう、ミスなく株主総会を運営できるように対応する必要があります。

他にも、個別案件には、M&Aにおける対象企業の法的調査・契約書締結、ファイナンス、新規事業立ち上げに伴う継続的な相談等様々なものがありますが、単発の相談に留まらない案件については基本的に個別案件として受任することになります。

2 法律事務所における若手弁護士の役割について

上のような業務の中で、私のような若手弁護士がどういった業務を担当しているのかについても紹介したいと思います。

これは私の所属している事務所に限られないと思いますが、基本的に若手弁護士が案件の主任となって、案件の進行をリードしていく存在になることが求められます。

具体的には、依頼者とのやりとりの窓口になることや、案件を進めていくうえで必要となるタスクの洗い出し、各タスクのスケジュール管理、必要な法的論点のリサーチ、各種書面のファーストドラフト等を担当することになります。

そして、これらの各種業務について、適宜上の弁護士に相談・報告し、アドバイスやフィードバックをもらいながら案件を進めていくことになります。

例えば、紛争対応の案件で書面を裁判所に提出する必要があるとします。その場合、書面を依頼者と上の弁護士に見てもらう必要があるため、上の弁護士には10日までに提出して、依頼者には25日までに提出する、といったように大きなスケジュールを立てる必要があります。

そのうえで、自分の持ち時間の中で必要なタスクを考えていきます。書面を書く上では依頼者から必要な情報や資料を出してもらう必要があるところ、①書面の大きな構成を考え、必要な資料や情報を洗い出す(適宜構成については上の弁護士と相談する)、②依頼者に質問をする、③法律的な論点があればリサーチを行う、④書面にまとめる、等の作業が発生します。

これらの作業の全体像を踏まえながら、各作業を行うタイミングを整理し、作業を進めるスケジュールを立てていきます。

こういった個別案件を複数抱えつつ、顧問契約に基づく相談も随時回答をしていくことになるため、タスク管理はかなり大変です。特に、顧問契約に基づく相談についてはスケジュールのコントロールができないため、できる限り早め早めで余裕をもって案件を進めていくことが大事だと実感しています(なかなか難しいのですが、、、)。

1つの案件の解決に数年単位の時間を要することもあり、徐々に任される案件数も多くなっていくため、年次があがるほどマルチタスクの側面は強くなっていくのだろうと思います。その分、各案件から学びを吸収し、また日々の自己研鑽を通して、案件処理の速度を上げていかねばと感じているところです。

3 企業法務の仕事の面白さについて

最後に、企業法務の仕事の面白さについて、私の感じるところを紹介したいと思います。

①世の中の仕組みや制度を生きたものとして知ることができる

私が弁護士を志した目的の一つに、世の中の仕組みや制度を広く知りたいというものがありました。

企業法務に携わることにより、企業活動の様々な場面に携わることができ、法制度を生きたものとして理解できている実感があります。

例えば、規制対応の案件に携わることにより、国や行政が作った法令をビジネスの現場で適用する場面でどういった障害が生じるのか、法律が不明瞭であることによってどういった障害が生じるのかを身を持って実感することができました。

また、会社の紛争案件に複数携わる中で、株式という権利が持つ威力についても強く実感をしてきました(会社法上様々な株主権が与えられていますし、株式を50%以上持っていれば取締役を選任して自分の思い通りにすることもできてしまいます。)。

企業法務に限った話ではないと思いますが、大学で学んだ法制度が実際にどのように活用されているのかを身をもって理解できることは、非常に面白いと感じています。

②生の経済活動に触れることができる

企業法務をする中で、依頼者が行っている様々なビジネスに携わることができ、生の経済活動の一部に触れることができます。

例えば、M&Aの際には、法的調査を行う先の企業がどういった事業活動を行っているのか理解する必要がありますし、企業間の契約書を締結する際にも、背景としてどういったビジネスを行いたいのか理解をしたうえで、契約書に落とし込んでいく必要があります。

紛争案件においても、依頼者の取引の実態を知らなければ論点の整理ができないことから、依頼者から取引の内容を教えてもらいながら、案件を進めていくことになります。

弁護士自身が事業の主体となるわけではありませんが、様々な事業活動に触れる中で、世の中の経済の動きに触れることができるのは面白いと思います。また、依頼者と話をする中で、組織内の意思決定過程や、各企業の考え方などに触れることができるのも勉強になります。

③依頼者にとって重要な局面を任される場面がある

弁護士は依頼者に満足してもらうことが仕事であるため、依頼者に対して適切なサービスを提供し、そのサービスに対して感謝をしてもらえる場面は、やはり大きなやりがいになります。

弁護士が依頼を受ける場面の中には、依頼者が自力で解決することができず困難に陥っている状況があり、責任は非常に重いですが、そのような状況の解決を依頼されると熱い気持ちが沸いてきます。

特に、紛争案件は、まさに依頼者が困難に直面しており、かつ弁護士が主体となって解決を行う必要があるため、非常に責任感を感じるとともに、やりがいを感じる仕事だと思います。

4 最後に

私が今回のnoteを書こうと思ったのは、学生の頃に企業法務弁護士の仕事内容や働き方についてイメージが沸かず、もっと弁護士に発信をして欲しいなぁと思った記憶があったからです。

世間からも、企業法務弁護士の仕事内容はあまり理解をされておらず、場合によっては弁護士に依頼をすべき場面であるのに、弁護士に依頼ができていないということもあるかと思います。

これからも私の仕事内容については合間を縫って紹介していきたいと思いますが、本noteを通して、少しでも企業法務弁護士の仕事内容が伝わっていれば嬉しいです。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!


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