見出し画像

他の科の先生に知ってほしいこと●依存症

★依存症について、他科の先生に知ってほしいこと

1.実は、最近の依存症治療はやめなさい、といわないのが主流なのです!
たとえば、宿題しようと思ってたときに「宿題しなさい!」といわれるとやる気がうせますよね
そういう感じです、人は強制されるとむしろやりたくなくなる変な生き物なのです
仮に、はいはいわかりましたよーといやいややっても、絶対にそれは続かないですよね
そして、宿題ならまだしも、依存症は脳の変化が起きているから、さらに続かないのです
「なんとなくスーパーで目についたから飲んでしまった」という言い訳よくあると思うんですが、
実際にお酒だったり覚せい剤の注射器を見ると、脳の判断を行う部分の血流が低下しているという研究があります

2.なぜお酒を飲まなくてはならなくなるか、それは脳の変化だけではなく、その人の「生きづらさ」があるのです
なぜお酒を飲まなくては生きていけないのか、その人の人生と周囲の環境を理解する必要があるのです
本人の病気の構造は深くて、暗いものです。依存症の多くのひとは親からの虐待があったり、もともと親が依存症という人ばかりなんです
そんな中で育ったので、平気で嘘をつく、本音が言えない、すぐあきらめる。そして人を信じられない。
こういうことをされると、医療者は依存症患者は嘘つきだ、とか思って関わる気がうせる。
そうしたら余計に彼らは孤独になって、その病気のなかに閉じこもっていく。
つまり…恐ろしいことですが…その人をさらに依存症たらしめているのは、むしろ医療者の態度かもしれないのです!
データもあります。かつては、強制的に断酒をすすめていく治療がもっぱらでした。ある研究によると、100人の患者のうち、断酒を成功したのは7人。ほかは何度もしっぱいを続け、そして本当に恐ろしいことに、25人/100人は死亡したり所在不明になっているのです。

3.そうなると、精神科医の、あるいは支援者、医療者のとるべき態度とは何なのでしょうか
それは、飲んでも責めないし、断酒したくないといっても強制はしない。ましてや叱らない、馬鹿にしない。心のなかで叱ったり馬鹿にしたりすると、先程申し上げたように虐待を受けたりしていた人たちですから、ものすごーーーーくそういう表情に敏感です。気づきます。
断酒は強制せず、本人が自分から、やめたい、減らしたいというのを待つ。(もちろん、断酒が必要だと”説明”することやそれをカルテ記載することは、絶対に必要です。)
もし飲んでしまったら、それなりに本人にも罪悪感があるので、責めず、再発予防作を建てましょう。
…他科の先生方、看護師さんたちはえーそんなのできないよ、待ってられないよと思われるはずです。当然です!
実際に、内科だったり忙しい病棟業務のなかだと不可能です。
絶対的に必要なのは、なんと…理不尽にも…時間です。内科や救急の先生にはそんな時間は絶対にありません。
1つだけお願いしたいことは、「責めないこと」です。最初は難しいと思いますが、フラットな態度で接していただけると嬉しいです。

★Q&A

Q1.やっぱり依存症患者さんにたいして拒否感があります。
A1.正直、無理はありません。回復して立ち直っていく患者さんにたずさわることが一度でもできたらよいのですが。あるいは成瀬暢也先生の「アルコール依存症治療革命」か「ハームリダクション」を読んでもらえたら感じるものがあるかもしれません。まあ、このnoteはそれらの焼き増しのような内容だとばれてしまうので不都合もあるのですg(ゲフンゲフン

Q2.精神科医の依存症患者さんへのやさしさ、変だと思います
A2.そうでしょうか?みなさんもおそらく”経験のある感覚”で精神科医は仕事をしていると思います。要は、依存症患者さんの持っているチャーミングな部分にスポットを当てる感じです。学生時代、こんな友達いませんでしたか?どうしよーもないやつで、でも、生き様もボロボロなんだけどなんだか見捨てられなくて、仲良くしていたヤツ…そういうヤツに限って、医者になってからバリバリ活躍していたり(もちろん、逆もいますが!笑)しますよね。ああいう感じです。ただし、治療は冷酷な側面もあって、精神科医はサポートしかできないのです。治すのは結局本人ですから、患者さん本人からみたら精神科医がとてもひどい人間のように見えることもあると思います。

Q3.依存症患者への拒否感はどこからくるんでしょうか。
A3.素晴らしい問いだと思います。ここまで考えつかれたのであれば、もう、ほぼ精神科医です(?!)。
人によると思いますが、一番に考えるのは「投影」でしょうか。人がいらつくときは、自分が捨ててきたものを抱えている人をみたときだ...的な格言?もあったはずです。
あなたが若手内科医で、ぜいたくもせず、お酒も飲むがきちんとコントロールするようつとめていて、仕事がつらいときも気合いでがんばっている...そんなあなたの当直の日に、朝から酒を飲んでいるおじさんが運ばれて、イラっとする...これが投影です(心理学の先生からは厳密には違うといわれてしまうかもですが、ほぼ投影のはずです)。自然に起こることです。もはや反射、といっても過言ではないでしょう。
ではQ3.のような問いを抱かれた方には、敢えてこの言葉をなげかけます。「でもその反射のままに行動してたらプロじゃなくないですか?」と。もちろん精神科医としてのプロという意味でなく、医師としてプロじゃないのでは、という意見です。まずは、相手の中ではなく、自分の中になぜ拒否感があるのか、探ってみてはいかがでしょうか。こういう自問自答みたいな行いがお好きなのであれば、そのまま精神科に転k(ry


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?