ボードゲームカフェの存在価値

こんにちは!
愛知県名古屋市天白区塩釜口にあるボードゲームカフェ&バー SoLaCeで働いているゲシュと申します!

今回もボードゲームカフェで働く上で考えている事気付いた事などを言語化しアウトプットする目的で文章を書いていこうと思います。毎度になりますが、あくまでボードゲームカフェ店員目線でのボードゲームカフェをどう運営していくかを考えるための記事という前提でお読みいただけると幸いです。


今回はボードゲームカフェの存在価値についてです。「お店の存在価値」それ即ちお客様の来店理由です。存在価値があるからこそお客様に来店してもらえます。

つまりそれこそがお客様へのアピールポイントでもあります。まだ来た事がないお客様にとってもそうですし、来てもらったお客様に対してその存在価値を印象付ける事でリピートに繋げる事ができます。

また、店員自身がボードゲームカフェの存在価値を認識できていなければ、お客様に対してアピールすることもできませんので、今回の記事でしっかりと言語化していきたいと思います。

今時のボードゲームカフェですと、ボードゲーム×〇〇というような形で他の要素と掛け合わせたりしてそのお店の存在価値を作り出している所もいっぱいあると思いますが、今回はあくまでボードゲームカフェ1本に絞って書いていきます。

という事で、
・ボードゲームカフェじゃなくてもできる事(来店する理由にならないもの)
・ボードゲームカフェだからできる事(来店する理由になるもの)
の2つを順に書き出してまとめていきたいと思います。

ボードゲームカフェだからできる事こそがボードゲームカフェの存在価値です!


ボードゲームカフェじゃなくてもできる事

ボードゲームカフェでも一応できるけど、存在価値にはならない物・事を、箇条書きでまとめていきます。

・ボードゲームができる
・楽しい時間を過ごせる
・体を動かして遊べる
・懐かしいゲームなどの大衆ボドゲで遊べる
・ボードゲーム仲間が集まる

という事で一つずつ触れていきます。

ボードゲームができる
ボードゲームカフェはボードゲームができる場所ですが、ボードゲーム自体は別にどこでもできます。家でも公民館でもはたまたオンラインでも。

つまり「ボードゲームができる」自体はボードゲームカフェの存在価値にはなりません。これは接客時に意識しておかないとリピート確率がグッと減ってしまうなと感じています。

例えば、初めてのボードゲームという事で「カタン」を紹介し、大ハマりして6時間ぶっ通しでやるグループがあったとします。このお客様達に対し店員側の持つ感情が「楽しそうに遊んでるな」だと少々まずいと思っています。

なぜなら、それはボードゲームカフェにハマっているのではなく「カタン」にハマっているだけだからです。つまり、大ハマりの結果そのお客様達が「カタン」を購入してしまった場合、リピートしてもらえない可能性が発生します。もう一回「カタン」を遊びに来てくれる可能性と、遊び飽きてもう来ない可能性と、「カタン」を購入してしまい来なくなる可能性のざっくり3択くらいで分かれてしまいます。

この最後の「購入したので行く必要がない」はボードゲームカフェという業務形態上、常に存在する弱点であります。つまり、「ボードゲームができる」という当たり前のような事自体には、ボードゲームカフェをアピールする上での価値はありません。ここをしっかり意識して、後述する「ボードゲームカフェだからできる事」をアピールしていく必要があります。


楽しい時間を過ごせる体験
これはもう当たり前すぎるのですが、楽しい時間を過ごせるのは娯楽施設としては前提条件です。そしてこれは他の娯楽施設でも十分感じる事のできる物であるということは意識しなければいけません。

「楽しい時間を過ごす」だけだったら、カラオケでも良いし居酒屋でも良いし家でゲームするでも良いんです。

ボードゲームカフェでしか味わえない「楽しい」が何なのか、
これをボードゲームカフェ店員として常に考え、お客様に提案する必要があると思います。


体を動かす体験
アクション系やバランス系などの体を動かす系のボードゲームは、こちらも他の娯楽でも味わう事ができる「ボードゲームカフェじゃなくてもできる事」の一つです。正直に言って他の体を動かす娯楽の下位互換だと思っているので、私の中ではあくまで息抜き程度にゲームとゲームの間に挟む役割がちょうど良いと認識しております。

ただ、だからと言ってこれ自体が悪いという訳ではなく、「こういうのもあるよ」と選択肢を知っておいてもらうのは逆に来店理由になります。グループ内で頭脳戦が得意な人と反射神経系が得意な人とで分かれている場合、こういうゲームの存在が来店してくれる理由を後押ししてくれます。

前回の記事の内容に少し戻りますが、「考えないゲームでお願いします」と言われたとして、アクション系”だけ”を渡してしまうと次の来店の可能性が極めて低くなりますので、あくまでしっかりと各ジャンルをミックスして「考えないゲームから考えるゲームまで幅広く色んなゲームが楽しめるよ」とお客様にアピールしたいです。


懐かしいゲームなどの大衆ボドゲで遊べる体験
これはいわゆる「オセロ」や「ジェンガ」など多くの人たちが遊んだ事のある、もしかしたら家にあるんじゃないかというレベルのゲーム達です。

これも先ほどのアクション系のゲームと同じく「ボードゲームカフェにもう1回やりに行こう」とリピート意欲を刺激できるゲームではありません

これもまた同じようにこれらのゲーム自体が悪い訳ではありません。これらのゲーム”だけ”を遊んだ状態で「このお店はこういうゲームで遊べる店なんだ」の印象で帰られてしまうのが良くないだけです。

このジャンルも同様に息抜き時に提案するゲーム達になります。みんなが既にルールを知っている事が多いですから導入も簡単です。


ボードゲーム仲間が集まる
これは価値がないというよりは、近年この点におけるボードゲームカフェの価値が下がってきているという言い方の方がニュアンスとして近いです。

同じボードゲームを趣味とする人との出会いがあるのがボードゲームカフェの魅力ではありますが、近年は各ボードゲーム会などの発展やボードゲームコミュニティの充実などにより、この点を求める層の方々にとって徐々にボードゲームカフェの存在感が薄まりつつあります。

イベントの開催などでこの価値をアピールすることはできますが、ただなんとなくやるだけだとこのイベントで体験できる内容は他のコミュニティでも体験できる物となってしまいます。一工夫を入れて「ボードゲームカフェでしか体験できない価値は何か」を考えて開催していく必要があります。

また、この層にアピールできるボードゲームカフェのメリットとして挙げられる点は気軽さだと思っています。事前に人を集める必要もなければ、事前に会場を抑える必要もなければ、事前にどのボードゲームを持っていくかを選ぶ必要もありません。「とりあえず今からボドゲしたい」を受け入れられるのは、ボードゲームカフェならではの特性だと思います。





という事で、
共通して言えるのが、そのお客様が帰った後「これだったらボードゲームカフェじゃなくても良い」と思わせてしまった時点で、そのお客様のリピート確率が下がってしまいます。たとえそのお客様がその日満足して帰ったとしても、「もう一度行くか!」と思ってもらえなかったとしたら接客としては”失敗”だと思っています。


という事で次は、そう思わせない為の「ボードゲームカフェだからできる事」についても箇条書きしていきます。


ボードゲームカフェだからできる事

ボードゲームカフェだからこそできる物・事は何かを書き出していきましょう。
これを意識して接客することがリピート数を増やすという目標に直結します。

・ボードゲームの幅広い楽しさの体験
・知らないゲームとの出会い
・オススメのゲームを相談できる
・ルールのサポートを受けれる
・考える楽しさの体験
・知らない人との出会い(相席体験)
・気軽に相席ができる安心感

・ボードゲームの幅広い楽しさの体験
ボードゲームには様々なジャンルの様々な難易度のゲームが存在します。この幅広さを1日で味わえるのは、ボードゲームカフェで体験できる価値であります。難しいゲームの後に簡単なゲームをやったり、バチバチに対戦した後に協力したりと様々な選択肢に溢れています。

特に初心者の方に対しては、ジャンルの幅広さはしっかりとアピールするべきポイントだと思います。目新しさを継続するという意味でも、自分の好きなジャンルを探してもらうという意味でも同ジャンルばかりではなく色々なジャンルのゲームを遊んでもらえるように心がけたいです。

前述の「カタン」だけをひたすらやるお客様に対して、店員側が眺めているだけでは接客としては良くないです。「他のゲームにも興味ありませんか?」と声をかけるチャンスをしっかり見計らって仕掛ける必要があります。もちろんこの仕掛けが不自然にならないように事前の関係性作りも重要です。

特にこれは、ボードゲーム会などには参加せず自分ではボードゲームを保有しない層の方々に対して強い価値としてアピールができます。



・知らないゲームとの出会い
未知との遭遇はどんな人でもワクワクする物です。この体験ができるのはボードゲームカフェの価値と言える物だと思います。

初心者の方目線だったらほとんどのゲームが未知です。オセロ、トランプなどの既知のゲームよりも初体験のボードゲームにいっぱい触れれるように促したいです。

経験者目線でも、知らないゲームを手に取って遊んでみるができるのがボードゲームカフェの価値です。そこに店員のルール説明もついてくるなら尚更です。次に買うボードゲームを探しにきたというケースのお客様もたまにいらっしゃいます。


・オススメのゲームを相談できる
「次自分達がどんなゲームで遊ぶのが良いか?」
これを膨大な種類があるボードゲームの中から決めるのは、とても大変な作業です。箱を見て雰囲気を見てレビューを調べたりしてという様に労力がかかり決心にも時間がかかります。

ボードゲームカフェなら店員に聞けば、店内にあるゲームから要望に合うゲームを提案できます。ボドゲに詳しい経験者にとってはあまり必要のない部分かもしれませんが、ボドゲ知識の少ない方にとってはありがたいサービスです。これもボードゲームカフェの価値と言えると思います。


・ルールのサポートを受けれる
初めてやるゲームに対して、ルールを理解するというのはかなり労力が必要となります。全員がやった事のないゲームならなおさらです。

そこでルール説明ができる店員の存在がボードゲームカフェに価値を生み出します。その場の全員が初めてでもスムーズにルールの理解ができゲームを始めることができるというのは、ボードゲームカフェだからこそできる大きな価値です。

なおかつゲーム開始後も声をかけられる範囲に聞いたら教えてくれる店員がいるというのは明確にボードゲームカフェを利用するメリットになります。これは一般のボードゲーム会などでは準備がしにくいサポートの形だと思います。その人の手札を覗かないと何もアドバイスできないゲームでも外から助言をすることができます。

初心者でも安心して「ボードゲームを遊んでみる」ができるという点が重要だと感じています。

また、初心者の友達にボードゲームにハマって欲しい経験者という形のパターンでもボードゲームカフェに価値があります。友達にボードゲームハマって欲しいでも初心者を楽しませる自信がない経験者の方には、店員に場を任せて貰えば初心者の方に適切なサポートをしつつ進行ができるのでぜひボードゲームカフェを有効活用してもらえればと思います。対初心者の経験値はボードゲームカフェ店員の方が多く持っていると思いますので。



・考える楽しさの体験
これは前回の記事でも触れた内容になりますが、考える娯楽を提供し体験してもらえるのがボードゲームカフェの価値です。これは他の娯楽施設と比較しての視点です。考えなくても楽しめるゲームはありますが、考えなくても楽しめる娯楽は他の場所にもいくらでもあります。しっかりとボードゲームカフェの価値をアピールする為に考えて楽しいゲームを触ってもらえる様心掛けて接客したいです。


・知らない人との出会い(相席体験)
ボードゲームカフェは、知らないゲームと出会える場所であるのと同時に、知らない人と出会える場所でもあります。初めて会う人と同じテーブルに座り一緒に楽しむという体験はなかなか他施設でできる物ではありません。

これは明確にボードゲームカフェだからできる事だと言えると思います。

ここで1つ重要なのは、ボードゲームカフェに初めて来店するお客様の思考の中に"相席利用"という概念が存在しない可能性があることです。その概念を知らなければ相席したいと言ってもらえる事は100%無いです。ですので、しっかりと相席という概念が存在し、あなたはそれを選択することができるという事は意識して伝える必要があります。

まあもちろん相席をしたからと言って、必ず満足して楽しんでもらえるかは確定していないので、できる限りのサポートを尽くして最良の結果となる様に導こうと試みる必要があります。


個人的に、初ボードゲーム初来店のタイミングでは「考えるゲームの体験」をまずお勧めして、そっちがNGそうだったら次に「相席体験」で簡単なゲームを楽しむ形をお勧めをしてみる方向に落ち着いています。

「相席体験」は悪い言い方をすると”運次第”なので、良い日もあれば悪い日もあります。ボードゲームカフェで働き始めた当初は、自分が相席で遊ぶの歓迎なタイプだったのもあり積極的にお勧めしていましたが、別に初回から相席体験をする必要は無いということに気付き考えが変わりました。

まずは考えるゲームの面白さでリピート意欲を刺激する。
それが叶わないお客様には簡単なゲームでの相席体験でリピート意欲を刺激する。

考えるゲームの面白さを感じてもらってリピートしてくれた2〜4回目くらいのお客様に、機会があれば相席もできますよと選択肢を提示してそちらも体験してもらえる様に促す形がスムーズだなと感じています。

ただ「相席体験」がそのお客様にハマった時のリピート率はかなり高いと感じているので、ボードゲームカフェの強い武器の一つである事は間違い無いです。ですので、初回から相席体験を提案していくのも集客の戦略としては全然良いとは思います。

ひとまず、知らない人とテーブルを囲んで楽しい時間を共有するという特異性は、ボードゲームカフェの価値と言えます。


また、相席に限らずとも、出会いという意味では良いお客様同士での出会いはもちろん、良い店員との出会いも含みますので自分自身が良い店員であろうとすることもしっかり心掛けてお店に立ちたいですね。


気軽に相席でボドゲができる安心感
「あの店に行けば誰かとボドゲできるだろう」と思ってもらえる事が経験者の方にリピートしてもらう為に重要だと考えております。ただ、これは「ボードゲームカフェ開店しました!」だけで作れる物ではありません。「行ったら誰かと相席で楽しく遊べた」という、いわゆる信頼と実績からなるものです。

ボドゲ会や友達などとの事前にしっかりと約束を取った予定ではなく、「何も予定ないけどとりあえず誰かいるだろうしあの店行くか」と思って来店してもらえるのは、そのボードゲームカフェを信頼しているからこその行動です。そのようにお客様から思ってもらえる様なお店は繁盛している証です。

つまりはこの状態がボードゲームカフェの理想の状態であると私は思っています。この良い状態は「人がいるから行こう」の良い連鎖を生み出していきます。

「気軽にそのお店に行ったらボードゲームを一緒に遊べる人がいる」
この状態までお店を育てることができたらそれは立派な存在価値となります。



ひとまずこれらがボードゲームカフェが持つ存在価値として挙げられます。リピートしてもらえているお客様達にはこれらの価値が伝わっているからこそボードゲームカフェに繰り返し来店していただけていると思います。

これらのボードゲームカフェの存在価値を意識してそれをお客様に伝えようとすること、それがそのお客様のリピート意識へとつながります。

ここをアピールすることができればボードゲームカフェを身近な娯楽の一つとして認識していただける方が増えていくと思います。数あるボードゲームカフェの中から”自分の店”を選んでもらう為にはという部分はその先です。


まとめ

ボードゲームカフェにおける接客の目標は「ボードゲームにハマってもらう」ではなく「ボードゲームにハマってもらった上でボードゲームカフェにハマってもらう」になります。言い換えると「ボードゲームカフェの存在価値を知ってもらって遊びに行く場所の選択肢に加えてもらう」となります。

つまり店員自身が知ってもらうべき「ボードゲームカフェの存在価値」をしっかり認識しておく必要があります。それを認識した上でどの様にお店をアピールするかという所を考えていくのが重要です。今回挙げたのはあくまでボードゲームカフェの一般的なイメージでしかないので、ここから各お店ごとの特色に合わせアピールすべき「自分の店の存在価値」は何なのかを考える必要があります。

ボードゲームカフェで働いてきて私自身が感じたのは、「初心者にボードゲームにハマってもらう」と「初心者にボードゲームカフェにハマってもらう」は全く別物だということです。ボードゲームカフェ店員としてどの様に接客をすればこのボードゲームカフェの存在価値をアピールできるかは常に考えて作戦を練りたいです。その辺の詳しい部分はまた改めて文章化していきたいと思います。

ということで、今回もお読みいただきありがとうございました!また次回もよろしくお願いします!

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