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強く翔け上がれ俺たちのガイナーレ!

 2021年のJリーグが開幕してもう半月近く経過する。毎週末はDAZNで試合を見て、その前後には試合ハイライトやらジャッジリプレイ等に代表される各種動画類を見たり、各種ネット記事を見たり、都合がつけば近くのスタジアムに行ったりするという日々がまた戻ってきた。まあ、実際にはこちらとしても平日は仕事が多忙になってしまったので正直時間が取れず、せいぜい週末のDAZN観戦と「Jリーグタイム」や「やべっちスタジアム」の鑑賞程度にとどまっているのだが。

 だが、Jリーグの全てのカテゴリーが開幕しているわけではない。3部制を敷くJリーグの第3のカテゴリー、J3リーグは本日がようやく開幕なのである。
 J1やJ2に比べると若干のんびりしているように思えるが、昨シーズンの降格なし特例の影響でチーム数が増えたJ1やJ2とは異なり、今年のJ3はJ2に2クラブが昇格したが降格してくるクラブはなく、しかもガンバやセレッソのU-23チームが活動を終了したため、テゲバジャーロ宮崎の新規参入があったとはいえ、昨シーズンよりはチーム数が減少したのである。
 15チーム、全28試合という、毎週どこかのクラブがお休みになるという変則日程。しかもサマーブレイクも長く、東京オリンピックどころかパラリンピックも楽しめそうなレベルでの長期ブレイクがあるという、過密日程の昨シーズンに比べるとまあゆとりのある今シーズンなのである。

 そんなJ3リーグに所属する1つのクラブが、我が故郷鳥取県の誇りで、設立当初から私が愛してやまないクラブである、ガイナーレ鳥取なのである。
 2014年のJ3発足と同時に、J2から降格する形でこのリーグに所属し、もう8年目になる我らがガイナーレ。J3の仲間として共に歩みをスタートさせたクラブが次々とJ2に昇格したりしていく中、J3の歩みと共に常に歩んできた、伝統のあるクラブである。

 …要するに、J3に降格してきて以来一度もJ2に復帰できていないということである。カッコよく言い換えたらいくらでも言い様はあるのである。

 言うまでもないが、サッカークラブの価値を考えるにあたって、その所属するカテゴリーというのはそのごくわずかな一面に過ぎない。J2のクラブの方がJ3のクラブより偉いとか価値があるとかいう訳ではない。そのような見方をする人々もこの世の中には一定数いるのは事実であろうが、少なくとも私はそのようには考えていない。JリーグだろうがJFLだろうが地域リーグだろうが、クラブの価値はそんな単純な事で決められるはずはないのである。

 …ただまあ、ガイナーレがずっとJ2に昇格できていないというのも、寂しくないわけではない。世間への露出度とか対戦できる相手とかを考えると、やはり上のカテゴリーというのはより華があると感じてしまうのは事実である。まあ、それは仕方がないことであろう。

 そのような想いを持っているのは当然サポーターだけではない。クラブは当然ながらより真剣に考え、どうやったらJ2に昇格できるのかを常に追い求めているようである。
 その象徴が今年のスローガン「強翔」であろう。ガイナーレが長年掲げてきた概念である「強小」という言葉の読み方をもじり、「強く強かにJ2に翔け上がる」という意味の言葉を創造して掲げてきたのである。
 今年にかけるガイナーレの覚悟というものが見えてくる。ならば、ガイナーレを愛するこちらも真剣に向き合い、どうやったらJ2に翔け上がることができるのか、真剣にサポートしていかねばと思うのである。

 前書きが長くなってしまったが、今年のガイナーレは果たして自ら掲げた「J2昇格」という目標を達成できそうなのか。ガイナーレを率いて3年目となる高木監督が率い、かつてガイナーレで選手として戦っていた増本氏がヘッドコーチとしてサポートする今年のガイナーレの戦力を見ていこう。

 攻撃陣については、まず前線の選手は今年も多様な選手が揃っている。昨シーズン高卒1年目ながら8ゴールを決めるというブレイクを果たした田口が、2年目の今年はまさにエースとして君臨するのか。それとも、昨シーズンハットトリックを決める活躍も見せ、ストライカーらしい性格と身体の強さを持つ大久保がその座を奪い取るのか。そして、昨シーズン途中に故郷鳥取に帰ってきた谷尾が、ようやくガイナーレでのゴールを決めるのか。ピッチを離れたところでのアピール力に定評のある谷尾だが、それだけでは終われないはずだ。また、岐阜からやってきた石川もポジション的には前線となるであろう。どんな活躍を見せてくれるのか。

 2列目の選手については、昨シーズン最終戦での劇的なゴールとアシストを置き土産に引退していったフェルさん、正確で強烈な右足を武器に勝負所でのゴールを決めてくれた三沢、天才的なテクニックで序盤に得点を量産した坂井が抜けてしまい、不安な側面は否めないが、新加入選手で期待できる選手も多い。山口からやってきた清永、長野からやってきた妹尾という、それぞれ上位カテゴリーでの経験のある選手もいるし、何よりこのポジションには新井光がいる。昨シーズンは、そのポテンシャルの割には若干不完全燃焼だった気もしているのだが、その走力やキープ力は大変素晴らしい。今年はブレイクを期待したい。石川もこのポジションで活きるかもしれない。同じく岐阜からやってきた永島は、まず怪我からの復帰を目指さねば。

 中盤で両サイドを司る選手としては、まず左サイドにはガイナーレで4シーズン目を迎える魚里が君臨する。その圧倒的なスピードとスプリント力は、試合終盤に見ると感動を覚える。今のガイナーレで、ボールを持ったらまずスタンドの皆の心が湧く選手と言えば魚里だろう。ただ、彼が万が一欠けた際に、このポジションを本職とする選手が他に見当たらない。清永や妹尾、石井でカバーする形になるだろうか。あの走力を考えれば、新井光もこのポジションで輝ける気がする。
 右サイドを司るのは大卒2年目となる安藤だろう。東京農大から加入した昨シーズン、試合を経るごとに大きく成長してきた。左足からのカットインは相手守備陣にとって大いな脅威となる。今シーズンも期待を寄せたい。また、このポジションは妹尾も本職のようであるので、お互いに良い刺激を与えあいながら切磋琢磨してほしい。

 中盤の底、所謂ボランチに君臨するのは、まずキャプテン可児。ガイナーレ4年目となる可児はすっかりチームの顔として定着してきた。昨シーズンはコンディションがどうも万全にならないのか、不完全燃焼感もあったが、それでもそのテクニックはチーム随一。今年もガイナーレのコンダクターとして大いに期待したい。また、大卒2年目の新井泰貴も大いに期待したい。昨シーズンは試合を経るごとに大きく成長し、ボール奪取だけでなく自ら前に運ぶシーンもどんどん見せてくれた。万能型ボランチに成長しつつある彼の姿を見るのが今シーズンも楽しみだ。
 だが、このポジションも安泰ではない。脅かす選手はたくさんいる。まずフロンターレからやってきた原田。あのフロンターレで鍛え上げられたテクニックは、高卒3年目ながら間違いなく大きな戦力として期待できるものである。早く試合で見てみたいのである。ガイナーレに新しい風を吹かせてくれることを期待したい。また、湘南から加入した横川は、アンダー代表経験もあり、高卒1年目ながらこちらも天才的な能力を有していると期待されている。昨シーズンの田口のような高卒ルーキーでのブレイクも十分あり得る。セレッソからやってきた秋山にも経験値の豊かさから期待をしていたがこちらはまず怪我を治すことが先決である。そしてそして、地元出身で今年選手会長を務める世瀬も、ポジションを奪取する意気込みで挑んでほしい。早稲田大学の通信制過程との両立を図る坂本も、このポジションで何か見いだせるかもしれない。

 DF陣については、今回最も多様な補強が行われただろう。高卒以来ガイナーレ一筋で6年間プレーし、J3屈指のディフェンスリーダーとして大きく成長した井上が岡山に行ってしまったので、その穴を誰が埋めるのかという点が一番のポイントになるが、個人的に期待できるのは沼津からやってきた谷口である。年齢的には28歳とガイナーレの中ではベテランとなるが、J3での経験も豊富で、身長の高さやコーチングのうまさも評価されている。まさに典型的なリーダータイプの選手ではないか。また、身長的には世瀬も最終ラインに君臨するタイプかもしれない。選手会長としてのリーダーシップをピッチ上でも発揮してほしい。また、ザスパからやってきた鈴木も身長があるタイプでDF陣に君臨しうるであろう。覚悟を持って移籍してきたというからには、注目していきたい。
 さらにこのポジションには2人のルーキーがいる。まず、農大卒の小山。農大卒というだけで応援したくなるが、身長の高さやスピードがあり、非常に素質を感じさせてくれる選手のようだ。安藤に続き2年連続での農大卒のブレークなるか。そして、市船卒、高木監督の後輩となる石田。名門校からやってきた高卒CBというのは、まさに退団した井上の後継者になると思わせてくれる経歴である。あと2年もしたら、彼がガイナーレのディフェンスリーダーになっているかもしれない。
 左SBやIVとしては、4年目となる石井が大いに期待されるが、このポジションにはレイソルからやってきた杉井もいる。彼には、ピッチ外での発信力の高さも期待したいところであるが、ピッチ上でもポジションを奪い取る活躍を見せてほしい。藤原もこのポジションだろうが、まずは怪我を完全に治そう。右SBやIVは、ゴツい身体で堅実に守ると共に推進力も兼ね備えた小牧がいる。彼の力強さには昨シーズン何度も頼もしさを感じた。今年も大いに期待したい。

 GKは、昨シーズン全試合でゴールに立ちはだかった田尻が今年も君臨する。田尻は俺が今ガイナーレで一番推している選手と言っても過言ではないと思う。ガンバでは、藤ヶ谷や東口の後塵を拝しトップでは試合に出られず、U-23を主戦場としたりJ2にレンタルされたりという状況であったが、ガイナーレに来て一変。決して大柄なタイプではないが、素早い瞬発力に支えられた的確なセーブと、よく通る声でのコーチングでガイナーレの攻撃サッカーを後ろから支えてくれている。本当に頼もしい存在だ。
 とはいえ、地元出身のベテラン福留、同じく地元出身の若手糸原も負けるわけにはいかない。田尻からポジションを奪う勢いで切磋琢磨してほしい。

 今シーズンは、昨シーズンまで在籍していた外国籍選手がいない戦いとなる。フェルさんは引退したしハモンはレンタルバック、ジョーは先日契約解除が発表されたばかり。
 まあ、このコロナ禍の状況下で、岡野GMが自らブラジルに赴くことなど不可能になっているので、今年はオール日本人体制で挑むことになるのであろう。もしかしたらこの状況は来年も続くのかもしれない。
 だが、ここまで挙げてきたラインナップを見たらわかるだろうが、日本人ばかりだからと言って決して他クラブに劣るようなメンバーではない。それどころか、ガイナーレのポイントに沿った選手たちが多く加入し、非常にバランスが取れたメンバーになっていることが分かるだろう。昨シーズンの健闘を見せた下地が底上げされ、かつ新加入選手が上手くフィットすれば、J2昇格は十分に可能だと思っている。

 私自身東京在住で、かつ、仕事柄今年の夏が終わるまでは相当忙しそうなので、正直ガイナーレの試合をどこまで見に行けるか、ガイナーレにどこまで時間を割けるかは分からない。首都圏の試合も、相模原の昇格で1試合減ってしまい、気軽に行ける試合は減ってしまった。9月以降はどこかで鳥取に帰ったり、少し遠出の遠征ができたらいいなーなんて思っているが、どこまで叶えられるかは分からない。

 だが、心は常にガイナーレと共にありたい。
 わが故郷鳥取県の名を冠したクラブが、愛称に示されるように大きくなり羽ばたくことを心から信じていたい。ガイナーレに集う全ての人々が思いを果たすことができるように、心から応援していたい。
 ガイナーレの存在価値は、ここ数年ますます大きくなっているように思われる。ガイナーレがここまで地域とともに取り組んできたこと、鳥取という傘の下に集まってきた人々にもたらしてきたことが、評価されてきているのだろう。俺からしたらようやくかという気がしている。ガイナーレはものすごくポテンシャルのあるクラブなのだ。それは、鳥取に住んでいた頃、俺にとってガイナーレの存在がどれだけ大きかったかということを考えれば、容易に分かる話だ。

 そんなクラブが、本気でJ2に強く強かに翔け上がるというのなら、それを心からサポートするしかないだろう。

 さあ行け、強く翔け上がれ俺たちのガイナーレ!