短歌過去作①

日の目を見ぬものをここに置く。
原文が手元にないため思い出せたものから置くことにする。

母孕み 残した香りも 掻き出され
煙草の煙と 共に消えゆく

国会の デモを横目に 燻らせる
葉巻の煙は 我の思想か

逢坂の 混じりし町の 目配せと
遥か冬雲 近くて遠し

花売の 老婆の声に 耳澄まし
香り交じりて 我は揺蕩う

西来れば 引き寄せられし 町並みの
光る桃色 花は美くし

艶めかしい 光に照らされ 艶姿
何も言わずに 微笑む簪

長者町 五丁目くぐり 若葉町
あるはずのない 瑞穂埠頭へ

キューでボールを 撞きし男が いつも言う
ナインボールの 9は亡き嫁

大声の 英語教師の 女が言う
器は直ぐに 割れてなくなる

丁寧に 髪を固めし 青年は
葉巻の煙に 君を夢見る

街の娘に 我の正義を 振りがざす
女権主義者の 薄き哲学

照らされて 黒い目青く 光らせる
身長小さき 風俗嬢

病床の 母を思つて 爪を切る
闇夜に響く 音の行く先

後を引き 老婆の声に 振り返り
料亭の味 舌に残らず

溢れども 久遠の祈祷 偽りなし
誠の心は 晴れ渡りゆく

十六夜の 夢に咲く花 包み込み
吾いざゆかんと 赴かんとす

祀られど 死して今尚 報われず
薄れゆく血は 七生報國


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