街道をゆく〜祖国のあらまし〜

未来のことを書いている。
畢竟これは敗色が既に色濃い遁走の顛末と言うべきであろうか。 

口紅の跡に苦しんだ男を照らした光は一瞬間のうちにまるでこの国の天気のように気色を変えたようだった。(無論主観であるが、長くこれに苦しんでいるのである)
しかし何の因果か、はたまたそのさまを哀れんだのか、婉曲がまた姿を表した。だがこれも続かない。

いよいよ無神論者が滑稽に神に誓ったそれは悔し紛れに飲み込まれ、見事にその踵を翻した。
懲りずに前を向くが、道は一つではなく幾つもに枝分かれ答えを匂わせない。
しかし、かつての女たちの気の迷いは悪魔の囁きのような様相を呈してこの男をまた勇気づけたのであった。

やはり誰もその結末を持ち合わせていないらしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?