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10.スマホとおじさんの行方




私が出社のために乗る電車は
いつも通り満員電車だった。
サラリーマンや学生で溢れる電車の中。
私は何本か電車を乗り継ぐのだが
2-3駅を数本乗り継ぐので
だいたいドアの近くに収まる。

人がとうもろこしの粒のようだ。
ラピュタのアイツみたいなセリフが浮かんだ。


そんなとうもろこしもとい満員電車に
各駅ごとにダメ押しで人は乗ってくる。


とうもろこしにおじさんが乗ってきた。
おじさんは降りていく学生と
ぶつかり気味にすれ違った。
降りていく学生と乗り込んでくるおじさん。
おじさんが学生にぶつかった拍子に
学生の持っていたスマホが落ちた。

あっあー

それを見ていたとうもろこしの粒達の
なんとも言えない心の声が聞こえたようだった。

なんて不憫な。
閉まるドア越しにおじさんは右手で
ごめんのポーズをしながら
そのまま電車で去っていく。
走り去るとうもろこしの中から見えた
スマホが落ちてしまった学生は
呆気に取られたような表情で
小さくなっていった。

こんな時おじさんはどうすればいいのだろう?
自分がぶつかったから
学生のスマホが拾われて
無事を確認するために乗った電車から降りて
学生とスマホを確認すべきなのか。

スマホを見ながら降りようとした学生の
不注意もあるだろうから
一応謝ったし
彼のスマホの無事は祈りつつ
そのまま電車で会社に向かうべきなのか。


おじさんはもしかしたら
降りるつもりだったかもしれないけど
ドアがすでに閉まり始めていたのかもしれない。


私はどうすべきだったのだろう。


大丈夫か⁉︎
ラピュタのあの娘を救う彼のように
咄嗟に降りて彼のスマホを救う
手助けができたのではないか?
駅員さんを呼びながら
彼をなぐさめればよかったのかも。


彼のスマホ無事だったかな。


走り去る電車に乗っていた私の頭の中には
ラピュタのあの曲が流れていた。


彼のスマホのストラップが
ラピュタのあの石だったら
あの音楽とともに浮かんでこれたのに。



彼のスマホにストラップが付いていたかは
わからないけれど。







WA


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