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【物語】大学生の恋愛譚【短編】

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現役大学生の送る、毎日どこかしらで起こっているであろう恋の瞬間のお話です。
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【物語】溶けないうちに【短編】〜大学生の恋愛譚

「どうやったら彼氏ってできますかね」 後輩の恵はつり革にぶら下がって上目遣いでこちらを見た。 「作ろうと思って作るのは違うでしょ」 私はハイヒールの踵に重心を動かして恵の目を見た。 「優花さんは、彼氏いるんでしたっけ」 恵はきれいにカールされた茶髪をくるくると手で巻きつけながらそう聞いた。 「私が答えると思う?」 「思いませーん」 キャハハ、と笑うと恵は私の顔をじっとみた。 「優花さんが男だったら、私絶対告白してますよ」 「何言ってるの」 心の中を恵に覗か

【物語】三号車【短編】〜大学生の恋愛譚

ふいに、頭をぽんと叩かれた。 「村田先輩!」 私は読んでいた小説をパタンと閉じて、少し首を傾けて空いている右の座席に向ける。 先輩は黒のリュックを前にして隣に座った。 それとほぼ同時に電車のドアは音を立てて閉まった。 ーーーーつぎは新百合ヶ丘、新百合ヶ丘、、、 「なんか三号車に行けば菜々子が居るって思うと、来ちゃうなあ」 「嬉しいです先輩、でもみんなに言ってるんでしょ、それ。先輩のサークルの後輩、バイトで一緒なんですけど、『あの先輩めっちゃフレンドリーだから勘違いし

【物語】いつものこと【短編】〜大学生の恋愛譚

「瑞香〜〜ちゃんと食ってる?」 烏龍茶のコップから顔を上げると浩太さんがジョッキを持って笑顔でこっちを見ていた。 心臓がドクン、と大きな音を立てる。 この変化を悟られないように、笑顔で大きく頷く。浩太さんは「よし」ともう一度笑って頷いた。 「そこ、座っていい?」 「もちろんです」 私は座敷の隣に置いてあったリュックを壁際に押し付けて場所を作った。 浩太さんはセンキュ、と軽く言うと私の隣で胡座をかいた。いつものこと。飲み会ではいつものこと。 「瑞香〜〜〜今度飯食いに行こう