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Old School Brawl ~カイロから来たアリ~

「OS Brawl流行らそうと思ってるんですけどガイさんも一枚かみます?」
 暑い夏の夜に添削さんからDMが届く。あまりもの突拍子の無さに暑さで頭をやられたのか心配してしまった。OSEDHという魔境の住民として、こういったマイナーフォーマットの人集めの難しさは理解しているからだ。
 ただ、彼の話を聞いていると通常のOld School や OSEDH より敷居が低いことがわかった。

 まず、Old Schoolで多色デッキを組む場合、デュアルランドは各種4枚必要になる。例えば《Tundra》はOSで4枚使われることが多いが、一般的なプレイヤー(レガシー以下)は持って2枚程度だろう。
 しかし、OS Brawlはハイランダー構築となるため1枚で良い。この点は多色化の難しさとも捉えることができるが、資産があれば初期投資が少なくて済む点は魅力的だ。

 また、同じハイランダー構築のOSEDHでは狂人を4人も集める必要があり、対戦の機会を作ることが難しい問題がある。一方でOS Brawlは2人対戦であり、気軽に対戦を募集できる。

 上述の通り、OSやOSEDHと比べると参入しやすいと思えるが、そもそもOS Brawl にフォーマットとしての魅力が無ければ人は集まらない。
 そこで、その取っ掛かりとしてどんなデッキが組めるのか知ってもらうため、デッキ紹介の記事を書くことにした。なお、細かいルールについてはこちらの記事を参照されたし。

デッキ紹介

1 コンセプト

[統率者]
1:《Ali from Cairo》

[クリーチャー]
1:《Goblin Chirurgeon》
1:《Ydwen Efreet》
1:《オーク弩弓隊/Orcish Artillery》
1:《石の壁/Wall of Stone》
1:《Roc of Kher Ridges》
1:《チビ・ドラゴン/Dragon Whelp》
1:《ルフ鳥の卵/Rukh Egg》
1:《山イエティ/Mountain Yeti》
1:《踊る円月刀/Dancing Scimitar》
1:《シヴ山のドラゴン/Shivan Dragon》
1:《テトラバス/Tetravus》
1:《トリスケリオン/Triskelion》

[インスタント]
1:《稲妻/Lightning Bolt》
1:《粉砕/Shatter》
1:《地割れ/Fissure》

[ソーサリー]
1:《稲妻の連鎖/Chain Lightning》
1:《分解/Disintegrate》
1:《地震/Earthquake》
1:《火の玉/Fireball》
1:《爆破/Detonate》
1:《Wheel of Fortune》
1:《Falling Star》

[アーティファクト]
1:《太陽の指輪/Sol Ring》
1:《ミシュラのアンク/Ankh of Mishra》
1:《吠えたける鉱山/Howling Mine》
1:《Chaos Orb》
1:《Gauntlet of Might》
1:《ジェイムデー秘本/Jayemdae Tome》
1:《翡翠のモノリス/Jade Monolith》

[エンチャント]
1:《魔力の奔流/Power Surge》
1:《ほとばしる魔力/Mana Flare》
1:《血染めの月/Blood Moon》
1:《魔力のとげ/Manabarbs》

[土地]
23:《山/Mountain》
1:《露天鉱床/Strip Mine》
1:《ミシュラの工廠/Mishra's Factory》
1:《イス卿の迷路/Maze of Ith》

 まずは統率者《Ali from Cairo》について、カイロから来た彼は一体何者なのか…その知られざるプロフィールはこちら

Ali from Cairo (2)(赤)(赤)
クリーチャー — 人間(Human)
あなたのライフの総量を1点未満に減少させるダメージは、代わりにあなたのライフの総量が1点になるまで減少させる。
0/1

 黎明期特有のルール破壊カードの一枚。彼が戦場にいる限りダメージによる敗北は無くなる。P/Tが0/1で貧弱だが、効果だけ見れば実質4マナの《白金の天使》と言えるだろう。

 このダメージによる敗北が無くなる点に着目し、オーナー自身もダメージを喰らうような重いデメリットを持つ置物を使い、相手を火力で焼ききろうというのがこのデッキのコンセプトだ。

\ 土地起きてる?土地置いた?マナ出した? /

土地を置いたらダメージ!《Ankh of Mishra》
土地からマナ出したらダメージ!《Manabarbs》
土地が起きていればダメージ!《Power Surge》

 何をしても、何もしなくてもダメージを与える…まるで税金のような置物3銃士で互いのライフを無慈悲に削り、自分は《Ali from Cairo》に守ってもらう寸法だ。スリリングなライフレースによる駆け引きは味わい深い。

2 介護要員

 そんなことを言っても、0/1 のクリーチャーが生き残っていれば勝利という戦略は少々無理がある。マジック舐め太郎と言われても仕方ないため、彼を守る手段はちゃんと用意してある。その1つがこちら

Goblin Chirurgeon (赤)
クリーチャー — ゴブリン(Goblin) シャーマン(Shaman)
ゴブリン(Goblin)を1体生け贄に捧げる:クリーチャー1体を対象とし、それを再生する。
0/2

 自身を身代わりに再生を付与するゴブリン。《剣を鍬に》や《恐怖》といった追放除去や埋葬除去には無力だが、大抵の除去はこれで何とかなる。ちなみにこのゴブリンはイラストが4種類あるから好みのゴブリンが選べるぞ!

翡翠のモノリス/Jade Monolith (4)
アーティファクト
(1):クリーチャー1体を対象とする。このターン、あなたが選んだ発生源1つが次にそれに与えるダメージは、代わりにあなたに与えられる。

 こちらはクリーチャーへのダメージをプレイヤーに肩代りさせるアーティファクト。《Ali from Cairo》と組み合わせるとダメージ以外で死ななくなる無敵モードに突入する。

3 コンボ要素

 いくら負けないと言ってもそれだけで勝てる程マジックは簡単なゲームではない。置物で削り切れなかったライフを詰めるため、とっておきの必殺技も用意している。

Step 1 - マナを2倍にする

Step 2 - ありったけのマナを注ぐ

Step 3 - You Win!簡単マジック!

 他にもマナの注ぎ先として《チビ・ドラゴン》や《シヴ山のドラゴン》がいるため、マナを2倍にする《ほとばしる魔力》か《Gauntlet of Might》のどちらかを引けば高打点を期待できる。

 ただ、こんなことを言っていると「これはコンボでは無い」といった全うな意見で怒られるが、《ほとばしる魔力》や《Gauntlet of Might》はそれ単体でも強いカードであり、コンボパーツとして機能させる必要もない。
 自分だけ恩恵を受ける《Gauntlet of Might》は兎も角、《ほとばしる魔力》は相手にも恩恵を与えるため弱いのではないか?という疑問があると思う。だが、この世界にはマナバーンが存在するため、不要なマナを押し付けることができるといった側面もある。

 例えば、フォグおじさんこと《Angus Mackenzie》は、タップと白青緑を1マナずつ支払うことで戦闘ダメージをゼロにする起動型能力を持つが、《ほとばしる魔力》があると、土地が生み出す色マナが2倍となるため、マナを消費する術がなければマナバーンで3点のライフを失うことになる。

\クリーチャーデッキは封殺じゃ!/

 このように奇数マナの呪文・起動型能力によりマナバーンを発生させる面もあるが、影響を受けるのはこちらも同じ。マナバーンは"ライフを失う"であり、ダメージではないため《Ali from Cairo》では軽減できない点は注意しなければならない。

4 オシャレ枠

 せっかく未知のフォーマットで遊ぶのだからマイナーカードで遊んでみよう、というのもマジックの楽しみ方の一つだ。特にOld School には首を傾げるような効果を持つカードが多く、カードプールを眺めているだけでも楽しめる。今回、狭いようで広いカードプールから見つけた魅力的な2枚のカードを紹介しよう。

Ydwen Efreet (赤)(赤)(赤)
クリーチャー — イフリート(Efreet)
Ydwen Efreetがブロックするたび、コインを1枚投げる。あなたがコイン投げに負けた場合、Ydwen Efreetを戦闘から取り除くとともに、このターンそれではブロックできない。この戦闘で、それがブロックしており、Ydwen Efreetによってのみブロックされていたクリーチャーはブロックされていない状態になる。
3/6

 3マナ3/6という驚異的なマナレシオを持つ謎のオッサン。効果欄にブロックに回ると50%で失敗すると書いてあるが、殴る分にはインクの染み。強力なP/Tと独特のイラストが相まって、お気に入り一枚。

 欠点があるとすれば、値段が高いこと。23/07/30 現在のWisdom最安値で11000円、《一つの指輪》が買えてしまう。これに1万出せる人は正気ではないので、Old School の沼に沈んでいない人には同じマナ域の《ボール・ライトニング》を入れよう。

Falling Star (2)(赤)
ソーサリー
Falling Starをプレイしている場所から少なくとも1フィート高い場所からはじく。Falling Starは、それが上に乗ったすべてのクリーチャーに3点のダメージを与える。Falling Starによってダメージを与えられたすべてのクリーチャーをタップする。Falling Starが水平に1回転以上しなかった場合、それは効果を及ぼさない。

 《Chaos Orb》と共にマジックに物理的な要素を持ち込む問題児。カードをフリップという謎の儀式は、様々な迷シーンを生み、ギャラリーと共に場を盛り上げてくれる。正にここでしか使えない一枚。

 フリップに関するルールはコミュニティにも依るが、「解決時に当てやすいようにカードを好きな並べてからフリップする」やり方が一般的だ。そのため、一度に複数のクリーチャーを対象にすることができ、的確に当てることができればアドバンテージを得ることができる。

 使いこなすためには相応の技術力が求められ、継続した練習が必要になるが、ここぞという場面で成功させた時の快感は他では得られない。価格は1万円を超えるが、体験に対する対価としては相応の価格だろう。

OS Brawl について

 実際にOS Brawl を対戦/観戦した感想としては、リミテッドをプレイしている感覚に近い印象を受けた。そう感じる要因を挙げると

 ① カードパワーの低さによるゲーム展開の遅さ
 ② 除去の少なさによるクリーチャーの睨み合い
 ③ 《イス卿の迷路》や《氷の干渉器》による盤面の停滞

 といった点になる。①は牧歌的なゲームと肯定的に捉えることができるが、②と③はハイランダー特有の除去の乏しさによる問題だ。駆け引きの無いゲームの停滞はある種の"つまらなさ"を誘引するため、構築段階でコンセプトを持ってデッキを作ることが重要になる。
 
 例えば、《Stangg》を筆頭に大量のクリーチャーを展開し序盤から圧殺するアグロ戦術や《Rasputin Dreamweaver》からの大量展開や土地破壊といったコンボ、《Xira Arien》のリソース差による勝負や《Angus Mackenzie》でのコントロールといったメインプランを立て、それを補強する形で各カードを採用していくことが肝要だ。そうすることで、毎回違う展開になる牧歌的なゲームとしてOS Brawl を楽しむことができる。

 Old School かつハイランダー構築ではやれることが少ないと思われるかもしれないが、上述の通り多種多様なタイプのデッキを組むことが出来る。通常のOld School ですら使われない独特なカードが活躍するこのフォーマットは、マジックの楽しみ方が無限大であることを教えてくれる

 この記事で少しでもOS Brawl に興味を持ってくれたのなら、是非カードプールを眺めて欲しい。ピンと来るカードがあったら、そこからデッキを考えるだけでも楽しい時間を過ごせるだろう。

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