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距離

「距離」というのは集合の任意の要素ABCに対して

  • [AとAの距離]は0 (非退化性)

  • [AとBの距離]は[BとAの距離]に等しい (対称性)

  • [AとBの距離]+[BとCの距離] は [AとCの距離] より大きいか等しい (三角不等式)

の3つが成立する必要がある(距離の公理)。逆に言えばこの3つが成り立っていれば距離と呼ぶことができる。極端な例として、[AとBの距離] を A と B が同じなら0で異なれば 1 とした場合でも距離と呼ぶことができる。

そこまで極端じゃない例も挙げておこう。平面上における距離は一般には「X座標の差の自乗とY座標の差の自乗の和の平方根(√(dx^2+dy^2)」だが、もっと単純に「X座標の差とY座標の差の和」で求められる値であっても先ほどの条件を満たした立派な「距離」と言える。これは道路が碁盤の目になっている場所で生活上の実感として使われている距離だ。

ところが、人間関係において比喩として「距離」と呼んでいるものは距離の公理が全く当てはまらない。

  • 「自分と自分の距離」は0であるとは限らない。

  • 「AさんからBさんへの距離」と、「BさんからAさんへの距離」は全然違うことが多い

  • 「全く面識のないAさんとCさんの距離」よりも共通の知り合いであるBさんを介することで「AさんとBさんの距離」+「BさんとCさんの距離」の方が短くなることがある。

このように人間関係においては非退化性・対称性・三角不等式がすべて成り立たないものを距離と呼んでいることになる。実に面白い。

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