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チェンソーマンの面白さと真剣に向き合う

今チェンソーマンが面白い。いや、面白すぎる。というか、面白さが常軌を逸している。

と言うと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、実際月曜日の0時に電子版週刊少年ジャンプが配信されるやいなやワンピースやヒロアカ等を差し置いてチェンソーマンがTwitterのトレンドに入るのが毎週恒例になっています。これは単純に読者が多いという話ではなく、人々を熱狂させるものがあるということです。

僕は毎週週間少年ジャンプを買っていて、載っている漫画は基本的に全て読んでいるのでチェンソーマンも1話から読んでいたのですが、1話から間違いなく面白かったです。しかし、作者の前作であるファイアパンチに途中からついていけなくなった経験があったので、面白いと思いつつも「チェンソーマンも途中でわからなくなるんだろうな・・・」と半信半疑の状態で読んでいました。

が、2020年3月23日発売のジャンプに掲載された63話があまりにも面白く、この日に単行本を全巻購入することを決めました。この63話以降は本当に毎話神がかっていて、はっきり言って今まで読んだ漫画の中で1番面白いです。

ここ半年ぐらいは「チェンソーマンの続きが読める」という理由で、月曜日が憂鬱どころか1週間で1番楽しみな日になっています。

そんなチェンソーマンですが、「じゃあ何がそんなに面白いの?」と聞かれると意外と答えるのが難しいです。面白いシーンや展開はいくらでもあるし、魅力的なキャラクター、予測のつかない展開、独特な台詞回し・・・等、挙げようと思えば色々あるのですが、ありきたりというか、今ひとつ魅力を説明しきれていない感じがします。もう少しチェンソーマンならではの面白さを言語化したい。したいけど難しい。

この困難な課題に向き合い続けた結果、この度、自分が面白いと思っているポイントを言語化することに成功したので、記事にすることにしました。ポイントは4つあり、それぞれについて思うところを書いていきます。ちなみにストーリーが面白いというのは大前提なので除いています。

チェンソーマンを読んでいる人に共感してもらえたり、読んだことがない人には興味を持ってもらえると嬉しいです。最初はネタバレ一切なしで書こうと思ったんですが、読んだことある人でも何書いてるかわからない文章になりそうだったので少なくとも単行本になっている部分はある程度ネタバレ有りで書いていきますのでご了承ください。


チェンソーマンの面白さその① おバカさ

チェンソーマンは、作品全体になんとなくおバカな空気が漂っています。これは主に主人公のデンジとその相棒パワーによるもので、デンジは義務教育を受けていないので純粋におバカですし、パワーはナルシストで自己中で虚言癖持ちで差別主義者なので言動の一つ一つが不条理ギャグになっています。特に序盤は大きなストーリーの動きがないので、おバカさが作品を支えていたと思います(ジャンプの打ち切り回避的な意味で)。

細かいシーンを挙げるとキリがないですが、代表的なのは2巻の夢バトル、3巻のノーベル賞、7巻のコベニカー、そして光の力辺りでしょうか。まあ夢バトルは真面目な話なんですが、読んでると笑っちゃいますね。チェンソーマンは結構暗い展開もありますが、おバカシーンのおかげで作品全体としては明るくなっています。


チェンソーマンの面白さその② 人間の普遍的感情の描写

これだけだと何言ってるのかよくわからないと思いますが、的確に表すのが難しいのでこう書いています。先述の通りデンジは義務教育を受けておらず、まともに社会生活を送ったことがありません。なので1話時点では半分動物みたいなもので、本能のままに生きています。そんなデンジが公安でデビルハンターとして働く中で様々な人と関わり、人間の心を学んでいくのですが、その内容、描写が素晴らしい。単に「そうだよね」と共感するものもあれば、ぼんやりと持っていた感覚をドンピシャで言語化されることでハッとさせられるようなものもあります。これは①と違って作品全体というよりは、要所要所で意図的に組み込まれている印象です。

この系統では39話と??話が好きです。というか、チェンソーマン全体で好きな話トップ2かもしれません(面白い話はまた別)。どちらも広く捉えると愛をテーマにした話で、39話はデンジが憧れの人と映画館デートをする話なのですが、その中で「憧れの人と心が通じる瞬間」が描かれています。そしてこの瞬間を経て憧れの人が自分と地続きの同じ人間であることに気付いた、そんな話だと僕は思っています。これはさっきの例で言うと共感型ですが、そこに至るまでの描写が非常に丁寧で、デンジの成長に心が暖かくなりました。??話はネタバレ厳禁なので詳細は伏せますが僕は出社前に会社の駐車場で読んで泣きました。

こうしてデンジは少しずつ経験を積み、徐々に精神的に成長していくのですが、何も知らなかった頃には考えなくてよかったことに向き合わなければならない場面がやってきます。そんなデンジに「何も知らなければ幸せでいられる。考えるな、バカになれ。」と助言するキャラクターも。このテーマは作品の中でも重要な位置付けになっています。バカでいることを選ぶのか、考え続けるのか。最後にデンジがどんな答えを出すのか、楽しみです。(記事公開時点では既に答え出てます)



チェンソーマンの面白さその③ 設定、世界観及びその出し方、隠し方

これは中盤以降特に際立っています。この要素が目立ち出してから漫画としての強度が一段上がった印象があります。例えば、デンジが特別な存在であることは1話の時点で言及されているのですが、どう特別なのかについては物語が進むにつれて徐々に明かされていき、その度に驚きとワクワクを与えてくれます。他にも、デンジと並ぶ作品の重要人物であるマキマは、最初はある意味デンジにとって都合の良いキャラクターとしてしか描かれていませんでしたが、物語が進むにつれて何か裏がありそうだ、ということがわかってきます。基本的に主人公を味方する行動しかとっていないし、核心は何も明らかになっていないのに、周りのキャラクターからの扱いや演出で読者に疑念を膨らませるのが抜群に上手いです。作者の掌の上で踊らされている気分になります。この情報管理の上手さは進撃の巨人を彷彿とさせるものがあります。

もちろん情報管理だけでなく、出てくる情報自体もめちゃくちゃ面白いです。最初に挙げた63話のサンタクロースの正体が明かされるシーンなんかは読んでて本当に叫び声が出ました。他にも単行本未収録の84話では一気に世界が広がり、一瞬漫画と現実が交差するような感覚を覚えました。(この世界にもチェンソーの悪魔がいるかもしれない、と思わせるような、、、)これは1ヶ月後に出る10巻に収録されるので未読の方は楽しみにしていてください。


チェンソーマンの面白さその④ ①〜③をさらに面白くする演出

私見ですが、演出とは「必要なものを引き立てるための不要なもの」だと思っています。戦闘力が高いとスカウターが爆発する、ルフィがギアセカンドを使うと蒸気が出る、刀で切られた人が切られたことに気づかないまま数秒間生きている・・・これらはそれぞれ強さ、変化、速さを強調していますが、物語の進行上必要な物ではありません。味付けですね。そしてチェンソーマンの作者はこの味付けがめちゃくちゃ上手い。巧みな演出によって元々の面白さが何倍にも引き上げられています。チェンソーマンは「漫画表現の最先端を走っている」と別の漫画家が評していたとかいないとか。


これも例を挙げていけばキリがないですが、アキが初めて狐の悪魔を使う時の空間を切り取るような演出や、マキマがネズミの塊から現れる悪役にしか見えない登場シーン、本当にうるさい音が聞こえてくるようなチャイムが鳴り続ける場面などなど・・・

個人的に1番好きなのは闇の悪魔が出てきた時の宇宙飛行士が並べられているシーンです。正直意味は全然わからないですが、得体の知れないモノが現れたということだけはビンビンに伝わってくる。というか、意味がわからないことに意味があって、人智を超えた存在であることを示しているのかもしれません。作者は映画マニアらしいので、こういった演出手法は映画から取り入れているのだと思います。僕は映画全然わかりませんが、1話のゾンビとのバトルシーンはなんとなくB級映画感があるなあと思いました。


余談 チェンソーマンの読み方のススメ

完全におせっかいなんですが、今からチェンソーマンを読む方に伝えておきたいことがあります。それは細かいことを気にせず、今目の前にあるものを受け入れてほしいということです。

別に細かく読むとストーリーが破綻してるとかそういう訳ではないんですが、普通の漫画では説明されることがチェンソーマンでは省略されている、ということが数多くあります。なので、そういう時は「これはそういうものなんだな」の精神で受け入れるのが吉だと思います。


最後に

以上4つのチェンソーマン面白ポイントについて書いてみましたがいかがでしたでしょうか。リアルの知り合いでチェンソーマンを読んでる人があまりいないのでコメント等いただけると大変嬉しいです。


この記事を書き始めたのは9月10日だったのですが、途中で下書きが半分以上消えたりしてやる気が失せ、公開まで3ヶ月もかかってしまいました。当然その間にもチェンソーマンは進み続け、なんと本日(12/7)発売のジャンプで次週の97話が最終回であることが発表されました。

9巻辺りから終わりそうな空気は出ていたので、ジャンプ本誌で追っている人は11巻で終わると予想していたと思うのですが、さすがに95話の引きからあと2週で終わるとは予想できませんでした。

96話は今までで1番イカれた展開でありつつ、ちゃんと結末に向かっている実にチェンソーマンらしい回でした。来週どうなるのかは全く想像がつきませんが、この世界一面白い漫画がどのような結末を迎えるのか今から楽しみで仕方ありません。

もうチェンソーマンが読めなくなるのは悲しいですが、20巻も続けるような作品ではないでしょうし、藤本タツキ先生はまたすぐに面白い漫画を描いてくれると思うので、それを楽しみにします。また、今の人気でアニメ化しないことはあり得ないので来年中くらいにアニメを見れることを期待しています。来週チェンソーマンに関する重大発表があるらしいですが十中八九アニメ化でしょうね。エログロがあるので鬼滅の刃ほどのヒットは無理でしょうが、進撃の巨人ぐらいは売れて欲しいです。


12/21までチェンソーマンが2巻分無料で読めるので、興味のある方は是非。

https://shonenjumpplus.com/episode/10834108156650024834


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