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Coffee Talkプレイ感想

注意:ガッツリとネタバレを含みます。
コーヒートークをこれからプレイしたいという方は楽しみを損なう恐れがあります。
このゲームを勧めてくれた友人・トラ助氏に感謝を。本当はtwitchの配信でやる予定だったけどいろいろあってやらなくなり、すっかり塩漬けにした状態になり、結局一人でやっちゃった。ごめんね。

忘備録のための概要とプレイング

概要

時は2020年、エルフやオークなどのファンタジックな人種が多数存在する世界のシアトル。夜しか開店しない一風変わった喫茶店「coffee talk」が舞台。主人公はこの喫茶店のマスター。様々な客にコーヒーを提供したり、会話をしたりして悩みや夢に触れていく。

プレイング

会話劇ですべてが進んでいくタイプのアドベンチャー。会話の途中でコーヒーの注文が入り、「ベース」「メイン」「サブ」の具材を組み合わせて飲み物を作り提供する。
特定のポイントで何を提供するかによってストーリーの分岐があり、メインとなるキャラクターのグッドエンド・バッドエンドがあるようだ。

一言感想

僕はこのゲームを「とても贅沢な時間が過ごせるゲームだ」と感じた。
キャンプで焚火を囲んであったかい物を食べたり、他愛もないことを話したりするような、ゆっくりと、かつ充実した時間を過ごせるゲームだと感じたのだった。

贅沢な時間を過ごす とは何だろう?

キャンプをしたことがある人ならわかると思うが、焚火を囲んですることと言ってもそこまで多くない。飯を食い、酒を飲み、会話をするくらいである。同じことをやっているが、その辺の居酒屋ではそのような贅沢な時間を過ごしている感じはあまりない。この違いは何だろう?
僕は空気感かなと思っている。それもとびきり静かな。
他の外部の人に気取ったり気遣ったりせず、ありのままにその人との会話、空気感、雰囲気を味わい、そこに集中すらできることを「贅沢な時間を過ごす」という雰囲気にさせるんじゃないだろうか。
このCoffee talkというゲームも、基本的にはカフェで流れるような、具体的に言えば思考や会話を邪魔しないBGMがほぼメインとなり、他の客や周りのことで気になるようなことがほとんどないようになっている。
夜にしか開かず、会話も来た人のみで構成される。外は雨が降っていて余計に人払いができている。気にすることは会話以外にほとんどないのだ。
この他のゲームからするとやや単調で退屈気味とも思わせる小さな空間こそが、贅沢な時間たらしめているんじゃないだろうか。

「創作者あるある」

このゲーム自体が、主人公(マスター)、フレイヤ(常連)のもとに様々なキャラクターが来て会話をしていくという流れだが、
このフレイヤという常連客がフリーランスで新聞掲載の短編小説を書いており、とあるチャンスをもって、大型小説に挑戦する という話が全部の話に横たわっている。ネタを探している小説家見習いが来る人達の話を引き出したり新鮮なリアクションを取ったりして会話の火をつける というような流れなのだが、この小説書きの雰囲気がとってもよくある話で、つい「あるある」と言いたくなってしまう。
読者がわからなければ自分を登場させちまえ!という感じだったり、書きかけだから見られたくない、本当に見せないとダメ?とたじろぐところ、「貴重な意見」なんだけど「たくさんの手直し」をもらってへこんでいるところ、〆切に向けての完成のためだったら自分の健康は二の次にしてしまう所……など。小説や漫画などの創作をしたことがある人なら首がもげるくらいうなづいていた人も多いんじゃないだろうか。
実際、個人デベロッパーとガチのゲームクリエイターが意気投合していたりと、この作者自身が「スクリプト制作をメインにしていた人がゲーム制作に携わる」体験をこのゲームに落とし込んでいるようにしか見えない。もちろんそれが透けて見えるのも創作やゲームでは美徳だろう。あんまり酷い考えでなければ。

貴重な栄養

既にこのゲームを勧めてくれた友人・トラ助氏には報告をしたが、僕は
「不器用でポンコツだけど娘のことを自分なりに考えて何とかしてあげたいと頑張る父親」と、「自分はもう大人だと父親を退け、自分でいろいろやってみるものの、実際のところ何も知らなかったり何もできない娘」からしか得られない貴重な栄養があると思っている。というかこのゲームで大量に摂取した。ヘンドリーとレイチェルだ。
これはきっと、自分がオッサンになったからこそ感じることで、どちらの言い分も痛いほどよくわかるからこその感情なんだと思う。
もし娘ができたなら、それはもういろいろ心配するに違いない。門限は作るだろうし、誰と遊びに行くかも逐一聞くかもしれない。電話の相手やvcでいつもいる場所まで把握したがるかもしれない。だって世の中そんなに良い人だらけではないし、利用しようとする人、騙そうとする人、利己的な人は履いて捨てるほどいる。
ただ、その逆もわかる。自分は親の所有物ではないし、友達だって自分で選ぶ。自分の娯楽や楽しみにいつまでも干渉しないでほしい。自分だって経験が少ないながらもいろいろわかっているつもりだ。
そんな2人をうまく取り持つのが母親だったりするわけだ。今作ではその母親がおらず、父親が「親」だけでなく「業界の大先輩」として娘を説得するものだからとんでもない干渉になっていた。

結局のところ、この2人とも「わかっているつもり」が空回りしている状態がかっちりとうまくかみ合う気持ちよさが見たいだけなのかもしれない。

異種族恋愛

一番初めに出てきてケンカして、と、「この世界における人種差」をわかりやすく説明してくれるサキュバスのルアとエルフのベイリース。やっぱりというか、ほとんどの人が「どこでもあるよねぇこういうの」という感想に行き着くだろうし、自分もそう思った。
他のゲームでもよくある話だが、ファンタジーにしろサイバーパンクにしろSFにしろ、自分と異なる人が出てくれば必ず差別は起きる。これは火を見るより明らかで、逆に一切の差別のない状態の方が違和感すら覚える。
これは差別を助長しているつもりは全くなく、「日本人なら海外の人をガイジンっていうよね」くらいの感じだ。
このゲームで解決法がやべえなと思ったのは、ケンカした後にルアとベイリースが別々に来店し、ルアはハイド、ベイリースはガラにそれぞれ諭されたり論破されたりして考えを改め、最終的に二人で会ったときに、互いが自分自身を客観視して冷静に対話をすることに努め、最終的に仲直りをしたという流れだ。よくあるシナリオなら最後は感情のぶつかりあいになるだろうし、「この二人のケンカはもう冒頭見せたからやらないよ」という作者の声まで聞こえてきそうなほど冷静に会話が進んでいったように感じた。
もしかしたら、この手の異種族、考えの全く合わない人達との理解に重要なのは「どちらかの正しさ」よりも「客観的にお互いを俯瞰すること」なのかもしれない。

一番好きなキャラクター

個人的に一番好きなキャラクターはジョルジ巡査だ。個別ストーリーらしきものはないにせよ、飄々としつつ実は娘3人と毎日ケンカをしつつ、それでも悲観的にならずに「学ばせてもらっている」と言うのはあまりにも強すぎる。人として。
相手を否定したりせず、明るく「そういうもんだよ親子なんて。でもそれがいいんだ」とでも言いそうな雰囲気がたまらん。

もちろん他のキャラクターも魅力的で、マートルとアクアのペアはずっと「もう早く結婚しろ!抱けーっ!」とずっと言っていたし、ハイドとガラの2人ペアはもうなんだか信頼とかそういうものを一切超えた何かを見ている気さえした。

終わりに

これを書いている時点では、実は1週目のクリアが終わったところ。
残念ではあったが、フレイヤのみバッドルートだった。これは創作者として、〆切のために頑張っている人を応援せざるを得なくてだな…
あと、ニールを感動的にさせる飲み物も提供できなかった。こればっかりは初見ノーヒントでは無理だって。
途中からやったらどんな判定になるかわからないので何とも言えないが、近いうちに全部のハッピーエンドは見たい所存だ。

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