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変化の真っ只中のキューバで

4ヶ国目はキューバ。2週間滞在してハバナ、トリニダー、バラデロへ。
キューバは変化の真っ只中という感じで、酒飲んで歌って踊る人たちの多い陽気な国というイメージとはちょっと違って見えた。いや、だいぶ。

旅行前、「キューバはこれから変わっていく。行くなら今!」という話を何人かから聞いていた。またネットでは「医療が充実している!」「教育費は無料!」など社会主義の理想的な面に光が当てられたものをよく見かけた。けれども最近の報道に絞れば、不穏な気配が漂ってくる。私にとっては初めてのキューバだったので過去との比較ができないけれど、状況はどんどん変わってきているんだろう。
ずいぶん老朽化しているコロニアル調の建築の横に、ピカピカの高層ホテルが続く。世界中の都会で見かけるハイブランドのアパレルがこの街にあるのは浮いて見えるけど、いつか馴染む日は来るのだろうか。
ピシッとした制服を着こなすレストランやホテルのスタッフと、道ゆく旅行客に食べ物を恵んでほしいと訴える人が同じ収入で暮らしているはずがないと感じたんだけど、この国の社会主義は終わりを迎える日が来るのだろうか。

直接話をした人も数える程度で、この国のことはわからないことばかり。社会制度も国民性も物価も自分の当たり前と違っていて、ゆらゆらしたり、もやもやしたり、漂う時間を過ごした。

ピカピカのアメ車は観光客向け


経済・金銭面について

2021年から二重通貨制が廃止され、1ドル=25ペソで固定されたところまでは事前情報を得ていたものの、いざ行ってみたら1ドル=130〜190ペソ。混乱。

  • 換金レートの幅がすごい。国営の銀行や換金所は130ペソが基本で、宿やレストランは150〜190ペソ。道を歩いていると高い頻度でキューバ人が「Chage money?」と換金を持ちかけてくる。私が見た報道では国営以外を「闇市場」と表現していたけど、もはや闇でも裏でもない。

  • 国も市民も外国通貨を手に入れたい!という切実さが至るところで滲み出ている。タクシーは基本ドルorユーロ払い。レストランの支払いをドルで出すとお釣りはペソで返ってくる(ドルでは返せないと言われる)。キャッシングもペソのみ。

  • レストランでの食事は円換算すると日本とさほど変わらない。逆に乗合タクシーは4時間走って1人35ドルだったりで、物価の感覚がよくわからない。

  • 宿(Casa)はAirbnbはじめ予約サイトに登録しているところが多いので事前予約に困らない。FacebookやInstagramをしている個人や宿もよく見かけた。ただしキューバの旅行サイトではアメリカのクレジットカード(VISA、Mastercard)で決済できず。(困ったのでサイトに問い合わせたところ、「クレジットカード会社に問い合わせてください。ただし、キューバでの利用ということは決して伝えずに」と返信がきた。わーお。)


食について

キューバには農業面でも関心があった。アメリカとの国交断絶により農薬を買い付けることができなかった故に野菜はオーガニック、といった話をよく耳にする。視察でもなんでもないけど(ハネムーンです)、農業の在り方を感じられるといいなという淡い期待があった。

サラダを注文すると、キャベツ・茹でニンジン・キュウリ・ほうれん草あたりがレギュラー陣。店によってはトマトorアボカドorインゲンが乗っていたりする。特にニンジンは甘みがあっておいしい。レタスは最後まで見かけなかった。暑すぎて生産できないのかな。

塩とオリーブオイルとビネガーをかけて食べる

サラダ以外でもサイドメニューやメインで目にした野菜は、上記以外はジャガイモ、サツマイモ、ユカ(イモの一種)、カボチャ、ピーマン、タマネギくらい。限られた時期・日数の滞在での印象だけれど、圧倒的に種類が少ない。農薬が入ってこないことの裏返しで、種や農業資材も十分に入ってこないということなんだろうか。
野菜に限らず、食材不足な印象も受けた。メニューに載ってるけど今日は出せないと言われることもしばしばで、卵がないところもあった。

水道水は飲めない。レストランに行っても自動的に注がれることはない。ボトル1本(500ml)が1.5ドル。モヒートは大体300ペソ(≒2ドル)。大して値段が変わらないならと、ついついモヒートに手が伸びる。日本にいると感覚が薄れるけど、水は貴重品だ。


観光立国と言われるキューバがこの2年間で受けた打撃は大きすぎたようで、ハバナで出会った人たちからは政策への不満や物価高騰の苦しさが漏れ出てくる。そうした不満を公には口に出すことができない、ということも。いろいろ見聞きしたんだけど、どこまで書いていいのか悩ましいところ。

キューバの人たち

根が気さくな国民性なのか、道を歩いているとよく話しかけられた。換金や食糧を求めてくる人やタクシーやツアーの勧誘の人がほとんどで、はじめは「だまされるんじゃないか」と警戒するんだけど、あっちがサバサバしてて「そっか、じゃあね〜」と離れていく。道を聞けばとても親切に教えてくれるし、単純におしゃべりしたいらしき人たちも多かった。
パートナーがタバコを吸っているときに意気投合した20代の男性は、ブエナビスタ・ソシアルクラブのショーがあることを教えてくれて予約するところまでサポートしてくれた。
かと言って気を抜いていると別の子連れ夫婦に高られた。難しい…。

そしてそのショーがめちゃ良かった。かの有名な映画は観ていなかったのは不覚。圧倒的な迫力。特に高齢の方たちの佇まいには気圧された。命を燃やして歌い続けてきたんだなということが痛いほど伝わってくる。
途中から観客巻き込み型で盛り上がっていって、最後はステージに我らも上がって一緒に踊る。サルサ踊れないから阿波踊りの2ステップで踊る。良い。

キューバの美空ひばりと名付けたい


ふらりと立ち寄った工芸市場では、「日本人なの!?日本大好きー!」とはしゃぐテンションの高いアーティストに出会った。彼はボロボロになった文庫本を見せてくれて、自分や家族が登場するんだと嬉しそうに話してくれた。その本は、『ガンジス河でバタフライ!』でも有名なたかのてるこさんがキューバを旅したエピソードを書いた『キューバでアミーゴ!』だった。文庫が発刊されたのは2010年。
彼とたかのさんとの出会いが良いものだったおかげで、私たちにも親しみを感じてくれる。ありがたいことだな、と思いながら帰りの飛行機で一気読みした。


古都トリニダーは、ハバナよりも喧騒がなくて好きだった。不便さで言えば、毎日停電があった。というか電気がつく時間が一日のうち午前中2時間と夜4時間とかで、一日の大半は電気が使えない。大きめのレストランは予備電源を入れているところもあったけど、停電中は多くの人が基本ひっそりと過ごしていた。
夜に停電したので諦めて散歩をしようと外へ出ると、月灯りの下で軒先に座り込み、家族や友人と穏やかに過ごす地元の人たちがたくさんいた。その光景はなんとも素敵なもので、電気が復活してパッと街に光が灯った瞬間は拍手が起きた。毎日のことでしょうに。面白いな。

ニューヨークでもらったキャンドルが大活躍


ちなみに今回キューバを選んだのは、パートナーがこよなく愛するオードリー若林さんがキューバを旅していて面白そうだったからというのが一番の理由。旅のエッセイ『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』も読んだ。
聖地巡礼!と意気込んでた割に、カバーニャ要塞には結局行かなかったな。


1914年製のフォード。骨組みが木!
トリニダーは夜の街。23時にオープンする洞窟ディスコ
繊細な刺繍の技術が光る
音楽に合わせておもむろに踊り出す人たち

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