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6月の花の俳句(季節を味わう#0012)

「季節を味わう」では、毎月第4水曜日にその月の花を詠んだ俳句をご紹介します。あくまでも素人の好みで選んでおります。

【紫陽花】

撮影:ばっどばつまる さま

紫陽花に雫あつめて朝日かな
   加賀千代女


先月は「牡丹」の句で、
今日見ねば雨の牡丹をいつの日に
をご紹介しました。花が美しく見えるのは晴れた日ばかりではありませんが、最も雨が似合うのは紫陽花と言えるかもしれません。

一晩中降り続いていた雨。
加賀千代女は江戸時代の方ですから、雨と言っても今のようなゲリラ豪雨や線状降水帯による大雨ではなかったでしょう。
しとしと降り続いた雨が明け方にはやんで、朝日が登ってくる。紫陽花に残った雫一つ一つに光が宿りキラキラ輝いています。何か良いことがあるかも知れない、そんな予感のする朝ですね。

【昼顔】

撮影:cameramanさま

子供等よ昼顔咲きぬ瓜剥かん
  松尾芭蕉

2014年、斎藤工さんと上戸彩さん主演のドラマ『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』が放送されました。私は一度も見ていないのですが、話題になっていたことは知っています。早い話がダブル不倫のお話です。
夏の間だけ昼に咲く昼顔を、平日お昼間、家族に内緒で忍び逢う恋人たちのたとえに使うとは、なかなか考えられたタイトルではあります。
とは言え、なんだか淫靡なイメージがついてしまったようで昼顔にはお気の毒。ということで、この句をピックアップしました。

時計など持たなかった江戸時代の庶民の生活。時を告げる鐘のほかには、太陽の角度など自然から大まかな時間の流れを感じていたのでしょう。
夏に昼顔が咲いたらおやつどき。
「子どもたちよ、昼顔が咲いたよ、そろそろおやつの時間だね。さぁ、瓜を剥こう」
ケーキやスナック菓子などない時代に、夏の瓜は誰にとっても嬉しいおやつだったことでしょう。芭蕉の呼びかけに「わーい」と答える子どもたちの声が聞こえてきそうな句です。

(2023年6月28日)


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