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4月の花・植物の俳句(季節を味わう#0055)

「季節を味わう」では、毎月第4水曜日にその月の花・植物を詠んだ俳句をご紹介します。あくまでも素人の好みで選んでおります。

【藤】

藤は山野に自生するマメ科の蔓性植物で、晩春に咲きます。「藤色」という色の名前になっているほど、美しい色合の花を咲かせます。小さな蝶々のような形の花が房をなすのが特徴。藤棚に仕立てて、垂れる花の様子を楽しみますが、風に揺れる様も風情があります。
藤は万葉の時代から歌に詠まれており、万葉集には26首収められていますし、『枕草子』第75段には
めでたきもの
    色合いよく 花房長く咲きたる藤の、松にかかりたる
と記されています。
そう、藤は松とよく合うのです。
日本舞踊の演目として大変有名な「藤娘」のセットは、舞台中央に大きな松の木があしらわれ、そこに藤の花が下がっています。
私は日本舞踊を習っていたのですが、初舞台が「藤娘」でした。10歳の時のことです。当時、私は踊りながら長唄「藤娘」の、ある部分に疑問を感じていました。
「いとしと書いて藤の花」
聞いてみてください、1分06秒あたりです。(頭出ししてありますので、そのままクリックして聞いてみてください)

私は当時「愛し」と書いて「藤の花」と読ませるのか、と勝手に思い込んでいました。それほど藤を愛でるという意味だと。
ところが、そうではないことが今頃になってやっとわかりました。
これは言葉遊びで、長く大きく平仮名の「し」を書いて、それを挟むように平仮名の「い」を十回かくと「藤の花」に見える、ということだと。
こういった言葉遊びが生まれるほど、藤の花は人々の日常に根付いていたと言えるかもしれません。

藤咲いて山一条の濃むらさき   星野椿

山藤でしょう、緑の山に藤の花の濃い紫が一筋見える、という景色です。
綺麗ですね。藤より前に山桜が咲く時には、遠くから見るとふんわりと雲のように丸みを帯びた桜色の塊が見えますが、藤の場合は、紫色が縦に伸びているわけです。桜も藤も、美しいです。
(2024年 4月24日)


今回、「いとしと書いて藤の花」さまのnote記事を参照させていただきました。ありがとうございました。



「季節を味わう」は大阪府箕面市のラジオ局 みのおエフエムの毎週水曜日午前11:30と午後8:40から放送しています。
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